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私人による現行犯逮捕の限界と危険性について★迷惑配信者特集①

料金設定はしていますが、例によって無料で全文読める投げ銭方式です。

とある動画が物議を醸し出している。

内容は、駅のホームで盗撮犯とされる男性にYouTuberが組み付いて締め上げ、【撮影機器を取り上げ】つつ【私人による現行犯逮捕】として喧伝している物である。

また、そのYouTuberがⅩのプロフィールに【県警の皆様のご協力により~】と言った紹介を掲げている事も異様さを感じさせる。

Xのスーパードミネーター氏のプロフィール

当然、司法関係者や我々警備業者などから不当でやり過ぎな行為であるとの指摘が上がるも、正義感からの行動であると評し絶賛する声も多い。

①私人による無令状差し押さえ


→これが出来てしまうと・・・
・犯罪を疑われた人の持ち物を単なる一般人が取り上げる事が出来てしまう様になる。
【警察を呼んでいる時だけ、後から呼ぶから…と言った理由や条件があったとしても、悪用しようと思えばどうとでもなる上に、そのルールを破る事による被害は計り知れず、個人が負い切れるような損失では済まない】
→不当性により証拠能力が揺らぎ、結果として刑事裁判における被疑者の有利となる。

つまり『私人にも例外的に【(軽犯罪以外の)現行犯逮捕は許されている】が【(警察官等には可能な)現行犯逮捕時の無令状差し押さえは禁止】のままである』となります。


また、現行犯人が振りかざしている場合の『凶器』については、自他の安全確保や犯人の自殺防止の観点から、犯人が持っている盗品については、被害者の所有物であり自棄になっての損壊などを防ぐ観点から一時預かりが認められますが、この二つはあくまで例外規定であって、そもそも裁判の為の証拠集めは警察官等の仕事であり、【現行犯逮捕をする際の証拠になるからなどと言った理由をつけても、盗撮犯と目した人物の持ち物である撮影機器を取り上げる行為は不当】なのです。

もちろん、被害者当人が羞恥心も手伝って反射的に奪い取ったり、はたき落してしまった場合などは情状を加味して不問とされる事も多いでしょう。
ですが、法的には不当な行為であり、自身が被害者として裁判になった時に不利になる要因であると言う事を抑えておくのは大切だと思います。

↑で呟いた通り、この辺りの知識は、一般の方は勿論、弁護士や警察官でも特に専門としていない限り正確な知識がなくてもおかしくない部分ではあります。
私人(と同じ権利しか持ちえず)一番最前線で当事者となりやすい、警備業ならではの特性ですね。

②現行犯逮捕を業として行う事自体の問題点

→転売屋の様に利益だけを掠め取りつつ、時間や手間、費用の掛かる面を警察に負担させる事による不健全な形での負担増。

警備業の歴史で言うなら、機械警備(センサーを活用した通報システムとそれを活用した警備業)の黎明期にも、センサーの性能や先ずは警備会社内で誤報でないかを確認する規則などがなかった時代には、それまでになかった誤報含めた通報の多発により、警察側の業務が正常に機能しなくなるような問題を引き起こしてしまった反省があったりします。
(現在では特別警察側から指示がない限りは、まず警備会社側で異常警報の真実性を確認する義務や、誤報率によっての厳しいペナルティなどが規則化されています。)
それと同じ事で、現行犯人の逮捕という華々しさもあり被害者や社会からの賞賛を得れる一面だけを収益化する事の倫理的、社会的損失はとても大きいと言えましょう。

→被疑者に限らないプライバシーの侵害、過失や誤認、行き過ぎた暴行等による傷害や汚損などによる被害、完全な悪意や出来心による犯罪(被疑者への恐喝や共謀等)

そして警察官や警備員にも残念ながら不手際や汚職などをする方はいます…と言うよりマスメディアも鬼の首を取ったように吊し上げるのでお察しなのですが、だからと言って見ず知らずの方の行動を、倫理観を、どれだけ信用できるのかという話になります。
正義感による行動…それくらいは出来ることなら信じたいですが、①の無令状差し押さえの様な不当行為を始めとして様々なトラブルが予想されます。
と言うよりも、初めから悪意を持ってターゲットのカバンの中を確認したり、スマートホンに触る事(タッチでの決済やすり替え)を目的として、その名目を悪用すれば使えばいろいろな事が出来てしまうでしょう。
いわゆる万引きGメンと呼ばれる私服で万引き犯の逮捕を目的とした警備業態が流行った事がありますが、一定の効果はあれど、やはり人権問題や不手際によって裁判沙汰になり、長期の育成が必要な専門スタッフを育てる割が合わない・・・といった理由から今では大々的にやっている会社はほとんどありません。

→不手際があった際の責任の所在や賠償能力の担保、行政指導やより良い対処法の意思疎通。

また、そうした不手際や不祥事、トラブルがあった時の負担が最終的にどこへ行くのか、警備会社であれば会社自体による賠償や保険がありますし、警察の場合も状況によっては補填制度が使えたり、組織や国などを相手取って訴えることもできるのです。逆に個人や法規制のされていない集団では誰にも管理監督が出来ず収拾がつかないのです。

①のような不手際があった場合、警察ではどうにか被疑者の納得も得つつ、被害者が不利にならないような筋道を模索します。

そしてあくまで【善意の協力者】である私人に対しては、不手際があろうと大抵「ご協力ありがとうございました」と気分を害さない程度の事を言うのです。

それって結局の所アマチュアだからなんですよ。
我々プロだったら叱られている所です、社内では慰めますけどね。
でもそのお陰で、我々は次からもっと上手い対応をしようって改善が出来てそれをもって警察と協力が出来ているんです。

勿論、今回の騒動も結果的に新しい警備業態への道が開けたりする第一歩になるような展開もあるかもしれません、ですが今のところは正直に言って警備業界がずっと前に叱られて辞めた行動の蒸し返しって気がしますね。

うん、はっきり言ってムカついてます。

続編は↑コチラ。

警備関係note纏め↓

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