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【感想、時々書評】マーケティングファネル拡大を狙わない「DNVB」という戦い方

外出自粛期間を利用してマーケティング関連(特にダイレクトマーケ系)の本を読み漁る企画第三弾。今回手にしたのは「マーケティングのデジタル化5つの本質」。マーケティングの×デジタルは今後何をするにせよ切り離せない領域なので、小手先の技に捉われないようにするためにインプット。

書評とデータ活用の本質

タイトル通りマーケティングのデジタル化の本質的な部分がよく理解できた。これは自分がデジタルツールを導入から運用に乗せるフェーズを見てきたからかも知れず、どこまで万人受けするのかは不明。著者がADKなど広告代理店出身者ということもあり、内容と事例はメディア(テレビとインターネット)の話が多い。

本書ではデジタルを活用したマーケティングを行う際のポイントや注意点がいくつか記載されているが、個人的には「データは効果的に使えてこそ価値がある」というのは改めて意識したい部分。至極当然のように聞こえるが、いざデータ系の業務に取り掛かると作業自体が重めだったりして、ついここを忘れて手段が目的化してしまうので。

これまでダッシュボード作りなどデータを扱う業務はいくつかあったが、振り返ってみると何度かアウトプットすることがゴールのようになっていたことがある。これを防ぐためにはここらへんの作業経験を積んで、負荷を下げることが必要だと思った。

こういった話の他にも、デジタル時代の予算配分や組織論、KPI設定の話などそれぞれ具体的に記載されていて全体的にイメージしやすかった。ここらへんの領域に取り組んでいるor取り組もうとしている経営層からマネージャーくらいまでは、部下の立場からすると全員知ってて欲しい内容。むしろ知らないと「マーケティングのデジタル化」は、ほぼ失敗する気がする。

マーケティング(特に広告)は、限られたリソースでいかに大きなリターンを得るか

この本を読んで、広告とは「いかに大きなユーザーの塊を見つけ、そこにどうやって/どんなメッセージを届けることで心を動かすか」という戦いなんだと再認識。

前提として、ここは森岡毅さんの本にもあったが、企業のリソースは限られているという現実があるため、やることを選択していかなければならない。1のリソースに対して3倍のリターンと5倍のリターンの施策があった場合でも、常に両方は出来ず、基本はどちらかを選ぶことになる。ここで5倍のリターンを選ぶためには「いかに大きなユーザーの塊を見つけるか」が大事になる。

その上で、時代として消費者の生活が多様化したことで「届けるべきメッセージ」も多様化しており、大きな塊も見つけづらくなっている(もしくは存在しなくなっている)。以前書いたが、ここがBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)だとオケージョンという切り口になる。

だからこそ、ユーザーの塊の大きさを把握するためにデータを使うし、届けるべきメッセージについてもPDCAを回していくためにデータを使う。時代背景合わせてこのやり方が合理的な手段になってきているということなんだと思う。

「ターゲットを絞り過ぎて対象ユーザーが全然いなかった」とか「ターゲットを絞らな過ぎてメッセージがぼやけてしまった」とかは往往にして起こりうるし、バランス感覚が難しいところ。

この部分を本で紹介されているように、DMPのデータを使って見極められるのであれば、すごく有用。以前、疑問を呈したペルソナマーケティングの精度も上がる可能性があると思った。DMPは広告のターゲティング配信にしか使ったことがなかったので、どこまで出来るのかは今後学んでいきたい。

マーケティングファネルに捉われないDNVBという戦い方

この本を読んで初めて知ったが、以前より欧米ではDNVB(Digitally Native Vertical Brand)なるものが出てきているらしい。デジタルを起点に直販などを実現しているブランドのことで、オンライン販売のみにすることで利益率を上げていたりするのが特徴で、既存事業をデジタル化する今流行の「D2C」とは区別されているらしい。

DNVBに関する詳しい説明は上のリンク2つから

ファンとの結びつきが強いため、従来のような上戸型の「認知〜購入」のファネルにならず、円筒型で認知した人がそのまま購入するのも特徴だそう。これは、今の時代に規模の拡大が狙えなかったり、大きな塊が存在していない中で、一定のボリュームをとる戦略の一種とも捉えられる。

「マーケティングのデジタル化5つの本質」より引用

そもそもオンラインファーストで設計されている事業モデルなので、既存ビジネスでいきなり導入することは難しいと思われるが、少子高齢化時代の日本にも合致しそうな戦い方なので、自分のマーケティングにも応用できないかは常に考えておきたい。

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