SOって実際いくら手元に残るの?

はじめに

ストックオプション(以降SO)に関して、勉強したことのまとめです。
ベンチャー界隈にいるとSOはよく耳にしますが、一番気になるところである「自社が上場したら実際にいくら手に入るんか」を正しく理解するためにまとめてみました。

事前知識

SO云々以前に、新株予約権というものを理解する必要があります。
新株予約権とは、定めた期間内に行使することで、事前に定めておいた価格で株式を取得できる権利です。
新株予約権を使う例として代表的なものを2つ示します。

  •  資金調達をするときに、新株予約権を使う

    • 資金調達時に、投資家へ株式ではなく新株予約権を付与することがあります

  • 従業員へのインセンティブとして、新株予約権を使う

    • 巷では、これをSOと呼んでいる

    • 実際には、SOを社外の人間に付与することもあるので、あくまで巷で読ばれているだけの認識

筆者は、SOというのは概念に近く、明確な定義を持っている言葉ではないとい考えています。
つまり、SOにはたくさんの種類・パターンがあるということです。
これが、「SOを持っていても上場したら大金が手に入る訳ではない」と言われる背景です。

SOでいくら手に入るのか

結局、SOを持っている・受け取る予定のある人物にとって一番重要なのがこの観点だと思います。
100%正しく計算することは困難ですが、大凡の値を計算するための変数を明らかにします。

まず、あなたの持っているSOが「税制適格SO」であるかそうでないかによって手元に残る金額は大きく変わります。
ただ、ベンチャー企業で従業員向けに付与されるSOは、ほとんどのケースで税制適格SOです。(であって欲しい)
税適SOとなる要件に定めはありますが、画一的な答えはなく場合によって、裁判を経て税適か否かを決めるような領域です。
そのため、プロではない方が設計することは難しく、専門家のサポートを受けながら設計しているベンチャー企業がほとんどと思います。

税適SOの前提で、受け取れる金額を計算するために必要な要素を下記に示します。

  • 行使費用

    • SOという権利を受け取るために払う金額です

    • 税適SOであれば、これは無償にしなければならないというルールがあるので、基本0円です

    • つまり、SOを得るのにお金はかかりません

  • 行使価額

    • SO(つまり株を受け取れる権利)を行使して、引き換えに株をもらうために払う金額です

    • 冒頭、SOとは、定めた期間内に行使することで、事前に定めておいた価格で株式を取得できる権利と書きましたが、この「事前に定めておいた価格」のことです

  • 株式売却時点の株価

    • SOを行使して得た株を売却して初めて現金を得られますが、そのときの1株あたりの金額です

  • 売却株式数

    • 売却する株式数です

重要なのは、「行使価額」です。
税適SOでは、行使価額をSO契約時の株価以上とする定めがあります。
つまり、上場まで株価が上がり続けると仮定した場合に、SOを貰うタイミング遅ければ遅いほどSOで手に入る金額は下がってしまいます。
つまり、大型の資金調達を終えているシリーズCなどでベンチャー企業へ入社してもSOによる利益はあまり期待できないということになります。
分かりやすいかと思い図に示したので見てみてください。

よくある間違いはこんな形かと思います。
自社は上場したら時価総額500億円くらいになりそうで、自分は0.2%のSOを持っているから、上場さえすれば1億円(500億*0.2)が手に入るという勘違いです。これは、行使価額が0円のSOを持っている場合の計算です。
SO付与タイミングがシリーズC以降であるなど、自分が持っているSOの行使価額が仮に1000円であった場合には、売却時の株価が1250円と仮定すると実際に得られる金額は、1600万円になります。
さらに、税適SOであれどキャピタルゲインに対する20%の税率はかかりますから、手元に残るのはさらに少ない金額となります。

※ 上記情報は最新ではないかもしれません。
近年では、この行使価額の下限となる株価をどのように算定するべきかがホットトピックであります。
行使価額が低いほどインセンティブとしての力は大きいので、それに向けてベンチャー企業に即したルール作りが行われています。

最後に

本記事は、素人が勉強して書いたものなので、誤りが含まれている可能性があります。

最近だと、上記に加えて「信託SO」と呼ばれている新たな概念も登場しています。
これは、国や団体が提唱しているものではなくとある弁護士が提唱した概念です。
この様に、現状のSOというのは誰かが考えた概念の上に乗っかった上で、発行者がアドリブを組み込ませながら自社に最適な形のSOを発行しておりケースバイケースであるが故、新参者には少し取っ付きにくくなっていると理解しています。

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