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中華料理屋でパロタを食べた話〜Layered Flatbread of the world〜

こんにちは、柳に風です。パロタが好きです。

今日は、インディカ米に次いで"カレーに合う主食ランキング第二位(※柳に風調べ)"の料理、パロタの話です。

世界中に散らばったパロタのレシピをすべて集めると、どんな願いでも叶うそうです。


インドのパロタ

まずパロタって何ですか?という方のために簡単に説明しますと、ナンやチャパティと同じようなインドのフラットブレッドの一種で、パイ生地のように層を形成しているのが特徴です。
練り上げるときにギー(澄ましバター)をたくさん使うので、素朴な味わいのチャパティやロティと比べるとオイリーでリッチな焼き上がりになります。

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インドで食べたパロタ。
手でちぎってカレーに浸して食べる。

あまり詳しくはないのですが北インドと南インドで若干テイストが異なるようで、北では全粒粉の小麦粉で作られ、生地を折り畳むことで層を形成するためにベタッとして腹持ちが良い感じ。
対して南インド(なかでも特にケララ州)ではマイダ粉と呼ばれる精白された小麦粉(日本でいう中力粉?)を用いて作られ、ほそ〜くうす〜く伸ばした生地を渦巻き状にすることで層を形成するため、空気を含んでサクサクとした食感に仕上がります。私は南インドのパロタが好きです。

ちなみに日本語では「パロタ」や「パラタ」はたまた「ポロタ」と呼んだりしますが、英語の綴りにもブレがあるようで「paratha」でGoogle画像検索すると北っぽいものが多く、「parotta」で検索すると南っぽいものが多くヒットする気がします。

以上、パロタの簡単な概要でした。


中華料理屋のパロタ

新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言が解除され、徐々に人気の増えてきた華金18時半の名古屋、「延辺館」という"日本人向けのチューニングをしていない"タイプの中華料理屋さんに行ったらメニューにパロタらしきものがありました。

パロタ、もとい草帽餅。日本語訳は焼き餅。

当然ギーの香りはしませんし、マイダ粉と薄力粉の違いもあるのか生地の風味がパロタと比べて若干薄いですが、ほぼパロタでした。しかも南インドっぽいサクサクしたタイプ。
インド料理屋でパロタを頼んでこれが堂々と出てきたら、誰も草帽餅だとは思わないでしょう。

色々調べてみると中国語で「草帽」は「麦わら帽子」、「餅(ビン)」は日本の餅(もち)とは違い「小麦粉で作られた料理」みたいな意味だそうです。
ビンは特に中国の東北(Dong bei)地方でよく食べられるそうな。

なんで中国東北部とインド南部に同じような料理が…?と思ったのですが、某カレーコミュニティの有識者の方曰く、ビンのルーツは中央アジアやモンゴルにあって、パロタもその可能性があると。
しかし穀粉を練って焼くなんて料理は世界中に存在するため、その全てを紐付けるのは難しいと。

言われてみればたしかに、シンプルな料理ゆえにオリジナルが世界に複数存在する可能性は大いにありますよね。
「小麦粉練って広げて焼くだけじゃ流石に食べ飽きたし、薄く重ねて焼いたらもっと美味しくなるんじゃない?」なんて思いつく人が同時多発的にいても不思議ではありません。

その辺りの繋がりの有無は非常に興味があるのですが、とりあえず今回はパロタと草帽餅以外にも世界中に似たような料理があるのか調べてみることにします。


ちなみに今回伺った延辺館では草帽餅の他にも中国東北部の様々な料理が食べられます。
孤独のグルメでゴローちゃんが食べていた「羊肉串」や、白菜を乳酸発酵させた「酸菜」が有名です。あとは抵抗ある方が多そうですが「犬食」の文化があるそうです。

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羊肉串(左)と鶏心串(右)。
炭火の風味にクミンが効いている。

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牛の動脈の串焼き。
コリコリ食感と甘辛いタレに理性を失う。

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犬肉の料理。興味がある方はぜひ。
下に写っているのは血のソーセージ。ぜひ。



世界のパロタ

今さらなんですが、今回は"層状のフラットブレッド(Layered Flatbread)"という概念を指して簡便に"パロタ"と呼ばせていただきます。
自分、パロタが好きなんで。すんません。

色々調べたのでレシピ動画と共にまとめます。
肉や魚といった具材を挟んだりせず、意図的に層を形成することでテクスチャの向上を図っていると思われるものだけを"パロタ"としました。

スマホでちゃちゃっと検索するだけであれよあれよと世界中のパロタが溢れ出てきてしまって、なんだか、ユビキタス社会ってすごいですね。


パロタその①
「parotta」インド🇮🇳

さあさあ、まず最初のパロタはパロタです(?)。
せっかくなので層状にするシーンの秒数も書いていきますね。見るの楽しいですよ。
3:25〜
薄く伸ばした生地にかなり細かく切り込みを入れてます。手間がすごい。
7:00〜
焼き上がった後にクシャクシャっとクラッシュすることでサクサク感がMAXに。シズル感よ。


パロタその②
「草帽餅」中国🇨🇳

当然次は中国のパロタ、草帽餅。
1:45〜
中華包丁を使ったり、麺類のように手でビョンビョン伸ばしたりして層を形成しています。
5:10〜
こちらは別のやり方。かなり薄く伸ばして渦巻き状にしてます。生地が空気を含んで所々風船のように膨らんでいます。
で、渦巻きにしたらそれ以上麺棒で伸ばさずに、ある程度の厚みを持ったまま焼いてるんですよね。これ、インドのバンパロタに見た目がそっくりなんです。
いやあ、不思議です。偶然なのかな…。


パロタその③
「手抓餅」台湾🇹🇼

台湾にもパロタがありました。知らなかった。
なんと字幕で日本語訳があります。谢谢。
2:10〜
シンプルな巻き方です。
4:05〜
インドのパロタのように焼き上がりにクラッシュしてます!追いレイヤーです!ウヒョー


パロタその④
「chapati」東アフリカ🇰🇪🇪🇹🇺🇬, etc.

インド亜大陸からアラビア海を越え、アフリカ大陸へ到着しました。
東アフリカではパロタと同じ形状のものをチャパティと呼ぶことがあるそうです。でも普通のチャパティもチャパティと呼ばれているっぽいので、あくまでもチャパティのバリエーションのひとつとして層状にしたチャパティがある、という感じなのかもしれません。チャパティ。
3:00〜
シンプルな巻き方です。なんだか手つきが丁寧。


パロタその⑤
「katmer」トルコ🇹🇷

世界三大料理のひとつ、トルコ料理のパロタ。
機械で生地を捏ねていて文明を感じます、世界三大料理としての矜恃でしょうか。(?)
5:25〜
生地を寝かせるタイミング、そこ??


パロタその⑥
「malawah」イエメン🇾🇪

中東、イエメンのパロタ。
やたらとカロンジシードを混ぜ込んでます。
5:20〜
そんなに端っこ切り取らなくていいのに。
excess doughは排除!


パロタその⑦
「roti canai」マレーシア🇲🇾, etc.

動画からマレーシアとしましたが、シンガポールやインドネシアにも同様のものがあるようです。
2:30〜
生地が薄すぎて机がスケスケです。美味しそう。
折り畳むようにして層を形成していますね、全部がこうなのかは分かりませんが。


パロタその⑧
「msemen」モロッコ🇲🇦

アジアからかなり離れた、モロッコのパロタ。
スイーツですね、蜂蜜と一緒に食べるそうです。
3:00〜
おばあちゃんが捏ねる。それだけで美味しいよ。


パロタその⑨
「sabaayad」ソマリア🇸🇴,ジブチ🇩🇯

ソマリア、ジブチパロタ。Sabayad a.k.a Kimis。
東アフリカで同じ括りでもいい気がしますが、英語版wikiが個別で存在したので分けました。
wikiには、インド亜大陸のパラタと密接に関係していると書かれています。
2:45〜
もうここまでくると目新しい層の作り方は出てこないですが、今日もパラタは美味しそうです。


パロタその⑩
「Jamaican roti」ジャマイカ🇯🇲

なんと、アジアからアラビア海、アフリカ大陸を越え、さらにはるか北大西洋の向こう、カリブの島国ジャマイカにもパロタが。
正直生地のレイヤー感を重視してるのかどうかイマイチ分かりませんでしたが、冒頭の挨拶が元気だったので載せます。
4:10〜
生地をソフトクリームのコーン状にして層を形成してます。焼き上がりにサクサク感は無さそう。



まとめのパロタ

以上、世界10種類のパロタを紹介しました。

こんなにあるとは思わなかったですが、他にもパロタ知ってるよ!という方はぜひご教授下さい。

世界のパロタの共通点として、
・精白歩合の差はあるが小麦粉を使う
・イースト菌は使わない(無発酵)
・でも生地は必ず寝かせる
・卵不使用(例外はあるかも)
という点があったように思います。

・砂糖の有無
・表面に塗る油脂の種類、工夫
・層形成前の生地の薄さ
・ハレの料理か、ケの料理か
この辺りは国によって様々でした。


"層を形成するフラットブレッド"に絞ってもこれだけ種類があったので、すべてのフラットブレッドを数え出したら本当にキリがなさそうです。
小麦でなくトウモロコシの粉で作ったりとか。

せめてパロタだけでも世界中に散らばるバリエーションを実際に食べてみたいですが、外務省の危険度MAX「退避勧告」が出ているような国にパロタ食べに行きたいなんて冗談でも言えません…。

ああ、パロタが食べたい。

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