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【読書記録】2024年6月30日〜7月6日

 みなさんこんにちは、こんばんは、そしておはようございます。
 人生のB面に入ってから読書に目覚めたオヤジ、タルシル📖ヨムノスキーです。

 7月1日、待ちに待った「新潮文庫の100冊2024」のラインナップが公開されました。

 毎年店頭でもらえる購入者特典の「特製しおり」ですが、昨年までは4種類だったのに、なんと今年は6種類!
 その代わりなのか、今年は抽選でもらえる「金のしおり」はない模様。これも出版不況の煽りなのか…。

 ちなみに私が注目しているのは、

📚世界でいちばん透き通った物語/杉井光
📚盲目的な恋と友情/辻村深月
📚夜が明ける/西加奈子
📚ザ・ロイヤルファミリー/早見和真
📚許されようとは思いません/芦沢央
📚宇宙のあいさつ/星新一
📚キッチン/吉本ばなな

以上7冊。
 そうそう、昨年同様一応数えてみました。
 新潮文庫の100冊2024は、
 97タイトル(98冊)!
 今年も「新潮文庫の100冊」ではなくて、「新潮文庫のおよそ100冊」でした。

…ということで、今週出会った本たちをご紹介します。

【2024年6月30日〜7月6日に出会った本たち】

⚪️闘う女

著者 朝比奈あすか

【内容紹介】
 バブル崩壊後の1993年、出版社に就職したひとみの半生は変転の連続だった。不本意な配属、失恋、プロポーズ、予期せぬ妊娠、離婚…。時に家族や友人を裏切ってまで仕事に貪欲であり続けたひとみの20年間を、人と人をつなぐツールの変遷や、移りゆく世相を巧みに織り込んで描き出す。女の狡さと黒い本音全開のこの物語は、あなたの魂を捉えて離さない!

裏表紙より

【感想】
 1980年代後半から2010年代までの流行に触れながら、主人公の石川ひとみの半生を追いかける物語。
 世代的にドストライクだし、懐かしいガジェットもたくさん登場するので、その当時の自分を思い出して思わずニヤリ。なにせのっけから映画「ぼくらの七日間戦争」談義ですから。
 朝比奈さんが描く「できる女性」は、なぜこんなに自意識過剰でわがままな人ばかりなんだろう。本人は最前線でバリバリやってるつもりだからいいけど、特に娘のりんちゃんのことを考えると切なくなります。
 りんちゃんが書いた詩は…。

将来のことを言われると、おどかされてる気がする。
言うなら、将来のことより、いまのことを言ってほしい。
いまのわたしにきょうみはないんだろうか。
未来はスキ 将来はキライ

本文より

親がついつい口にする「将来のため」が子供を苦しめる。

⚪️その扉をたたく音

著者 瀬尾まいこ

【内容紹介】
 29歳、無職。ミュージシャンへの夢を捨てきれないまま、怠惰な日々を送っていた宮路は、ある日、利用者向けの余興に訪れた老人ホームで、神がかったサックスの演奏を耳にする。音色の主は、ホームの介護士・渡部だった。「神様」に出会った興奮に突き動かされた宮路はホームに通い始め、やがて入居者とも親しくなっていく――。人生の行き止まりで立ちすくんでいる青年と、人生の最終コーナーに差し掛かった大人たちが奏でる感動長編。

出版書誌データベースより

【感想】
 〝あと少し、もう少し〟のスピンオフ作品。
 登場するのは吹奏楽部の渡部くん。でも主人公ではなくてキーパーソンのひとり。
 主人公は音楽の夢を諦めきれず燻っている29歳の宮路。
 生きる目的を見つけられなかった宮路が、渡部くんが演奏するサックスの音色に魅了され、彼が働く老人ホームに足繁く通うことになり、そこで入居者たちにこき使われながら、少しずつ成長していく物語。
 成長していくと言っても、働くこと、人と関わることの大切さにほんのちょっと気づいた程度。だけどこのほんのちょっとがとても大きい。
 人はキッカケさえあれば変わることができる。だから人生を諦めたり、投げ出したり、逃げ出したりしないで!

⚪️ミシンと金魚

著者 永井みみ

【内容紹介】
 「カケイさんは、今までの人生をふり返って、しあわせでしたか?」。ある日、ヘルパーのみっちゃんから尋ねられた“あたし”は、絡まりあう記憶の中から、その来し方を語り始める。母が自分を産んですぐに死んだこと、亭主が子どもを置いて蒸発したこと、赤ん坊を背負いながら毎日毎日ミシンを踏んだこと…。諦念と悔悟を抱えた老女が、最期に手にした幸福とはー。第45回すばる文学賞受賞作。

裏表紙より

【感想】
 200ページに満たない短いお話の中に、カケイさんという高齢女性の波乱万丈な人生がギュッと濃縮され綴られています。
 認知症のカケイさんは記憶も曖昧だし、話が点々と飛ぶので読み手は戸惑うこともあるけれど、それでも「今までの人生、幸せでしたか?」という質問に、自分の過去を振り返るカケイさん。なぜヘルパーをみっちゃんと呼ぶのか、その理由が明かされた時胸が苦しくなりました。
 もし自分がカケイさんと同じ質問をされたらなんと答えるだろう。少なくとも恨み節ばかり口にする年寄りにだけはならないように、毎日を積み重ねていきたいと思います。

⚪️カミサマはそういない

著者 深緑野分

【内容紹介】
 目を覚ますと、無人の遊園地にいた。僕をいじめた奴の死体まで転がっている。そこへ現れたのは、ナイフを持ったピエロー。これは夢、それとも死後の世界なのか?(「潮風吹いて、ゴンドラ揺れる」)僕らは見張り塔から敵を撃つ。戦争が終わるまで。だが、下された命令には恐ろしい真実が潜んでいた(「見張り塔」)。ミステリ、ホラー、SF…さまざまな終末的世界の絶望と微かな光を描く異色の短編集。

裏表紙より

【収録作品】
伊藤が消えた
潮風吹いて、ゴンドラ揺れる
朔日晦日
見張り塔
ストーカーVS盗撮魔
饑奇譚
新しい音楽、海賊ラジオ

【感想】
 時代設定もジャンルも全く違う7つの短編集。
 共通点は読後がなんとなくモヤっとゾワっとすること。
 そう、どの話も直線的なモヤっとゾワっとじゃなくて、「世にも奇妙な物語」的というか、文字では描かれない行間や余白でそんな気持ちにさせられる物語ばかりでした。
 この本の魅力を的確に表現する言葉がなかなか見つからないけれど、あえて言うなら、物語中の「世間にゃ、人間ごときにはわかんねえ物事がごろごろ転がってるのさ」というセリフかな。
 最近わかりやすい物語ばかり手に取っているので、時々はこういう少し難しい読書体験も必要だと思いました。

⚪️一ノ瀬ユウナが浮いている

著者 乙一

【内容紹介】
 高校2年の夏休み、幼馴染の一ノ瀬ユウナが死んだ。喪失感を抱えながら迎えた大晦日、大地はふと家にあった線香花火を灯すと、幽霊となったユウナが現れる。どうやら、生前好きだった線香花火を灯したときだけ姿を現すらしい。その日から何度も火を点けて彼女と会話する大地だったが、肝心な気持ちを言えないまま製造中止の花火は、4、3、2本と減りー。乙一の真骨頂!感涙必至の青春恋愛長編。

裏表紙より

【感想】
 夏、花火、純愛、そして幽霊。とてもピュアな青春ファンタジー小説でした。
 大好きだった幼馴染の女の子・ユウナの突然の死。それを受け入れられずにいる主人公の大地。線香花火に火をつけることで再会を果たした2人だが…。
 ジャンプ漫画を読み、憧れの東京に出かける2人の別れは唐突で、結末は予めわかっていたこととはいえもちろん切なく…。
大地が語る

「俺がおまえを東京に連れてきたんじゃない。おまえが俺を東京に連れてきたんだ。だから、感謝してる」

本文ひょり

は、この物語のすべてだと思います。
 近々文庫化される姉妹作の〝サマーゴースト〟も再読しようと思います。

⚪️コーリング・ユー

著者 永原皓

【内容紹介】
 “世界環境を救うべく、シャチを訓練して海底に沈んだキャニスターを回収せよ”海洋研究所で働くイーサンに、国際バイオ企業から依頼が入る。間もなく、捕獲された仔シャチ・セブンが到着。さっそく訓練を開始すると、セブンは人の意図を理解し、驚異的な能力を発揮していく。だが、事態は一変し…。シャチと人間、種を超えた愛と絆を描く、感動の海洋冒険小説。第34回小説すばる新人賞受賞作。

裏表紙より

【感想】
 あるミッションを達成するためにシャチを訓練する人間と、人間の言葉を理解するシャチの物語。
 こんなふうに動物と分かり合えたらなんて素敵だろう。でも今まで人間が動物たちに対して行なってきた所業を当の動物たちが知ったら、有効な関係は築けないかもしれないなんて思ってみたり。
 シャチのセブン視点のパートがあったのがとても新鮮でした。
 海の中の描写がとても細かく綺麗で、想像力を掻き立てられました。
 そういえば昔はラッシーとかフリッパーとか、賢い動物が活躍するテレビドラマがけっこうあったけど、最近はそういうの見かけないなぁ。

⚪️マチズモを削り取れ

【感想】
 なぜ道を歩くだけで、電車に乗るだけで、家を借りるだけで、仕事のキャリアを築こうとするだけで、女性にはこんなに困難がつきまとうのか?日常にはびこる“マチズモ=男性優位主義”の実態を男性ライターが取材&徹底検証!ジェンダーギャップ指数、先進国でぶっちぎり最下位のこの国の「体質」をあぶり出す。個人として考え、社会の問題として捉え、私たちの未来のために問いかけていく全12章。

裏表紙より

【感想】
 2024年夏の文庫フェアお勉強パート。
 最近ほとんどテレビも観ないし、ラジオも聴かないので、すっかり世情には疎くなり「マチズモ」という言葉すら初耳状態。
 これまでこういった問題に触れた小説やノンフィクションを読んだ時に書いてきた「そんなこと言うならレディースデイはどーなんだ?」という論調は、引用の引用になるけれど「トランプで花札のカードを出すようなもの」という言葉に鈍器で頭を殴られたような衝撃でした。確かにそれはそうかも。
 そもそもキリスト教だって「女性は男性の肋骨から作られた」とか言ってるし…。なんて書くとこれも火種になっちゃうかな。
 とにかく生まれも育ちも昭和なオヤジは、うっかり口を滑らせないようにしないと。

⚪️救命センター カンファレンス・ノート

著者 浜辺祐一

【内容紹介】
 東京下町の救命センター。重症重篤な救急患者を24時間態勢で収容する医療機関だ。今は、患者の高齢化と救急要請の増加が問題となっている。飛び降り自殺の女性、災害派遣医療チームが収容した工事作業員、コロナ感染していた脳梗塞男性…。個々の病状や事情を踏まえて、どこまで医療介入すべきか、最善を尽くすため悩み続ける医師たち。生命と向き合う緊迫の医療を現役医師が綴った本音ノート。

裏表紙より

【感想】
 医療小説かと思って読み始めたら医療エッセイで驚きました(汗)。
 東京都内にある棒病院の救命センターの部長さんが、朝の申し送りでの報告を聴きながら、若手の医師たちと生と死、命の重さや価値について語っていきます。
 そこにはドラマのような劇的な場面はないけれど、救命センター特有の緊張感が、どちらかというと控えめな文章の端々からひしひしと感じられます。
 途中に挟まれる人体の構造や病気、医学用語の説明がとてもわかりやすいという親切設計も嬉しい。
 ナツイチにラインナップされてなかったら、多分手に取ることはなかったこの本との出会いに感謝です。
 藤岡陽子さんの解説によればこのシリーズ(集英社文庫)、本書を含めて6冊刊行されているらしく、藤岡さん同様さっそく調べて残り5冊を、ネットで注文しました。

【まとまらないまとめ】

 いかがでしたか。
 夏の文庫フェアというのは本当にありがたい。
 普段はまず手に取らないようなというか、着目しないようなジャンルや作家さんと出会えるから。
 今週でいえば、
…って、瀬尾まいこさんと乙一さん以外は全て初読み作家さんだし、「マチズモ…」や「救命センター」といったエッセイも、フェアがなければ多分出会わなかったし、特に「マチズモ…」なんて…ね。
 まだまだ夏は始まったばかり。
 来週も夏の文庫フェア作品を、じゃんじゃん読んでいきますよ!
 あ〜、それにしても暑い!!

最後に、
 読書っていいよね。


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