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【本の紹介】冤罪がテーマの小説

 みなさんこんにちは、こんばんは、そしておはようございます。
 人生のB面に入ってから読書に目覚めたオヤジ、タルシル📖ヨムノスキーです。

 最近物騒なニュースが世間を騒がせていますが、それでも日本はなんだかんだ言って平和な国です。町中の至る所に自動販売機はあるし、女性が夜間に一人で出歩くことだって平気。それもこれも日本人という民族が元来穏やかな気質であることに加え、世界に誇れる優秀な警察組織が治安を守ってくれているからこそ。
 警視庁発表の「令和3年の犯罪情勢」には、重要犯罪の検挙率は94,3%と記されています。この数字は果たして本当なのか?是対検挙できると確信できたものだけをあげているからこれだけ高いのか、それとも高い数値を維持するためになんらかの力が働いているのか…。
 考えたくはないけれど、もしかしたら。
…ということもあるかもしれません。

 ということで、今回はその「あってはいけないこと」に焦点を当てた小説をピックアップしてみました。

【冤罪がテーマの小説】

●死亡推定時刻

著者 朔立木
【内容紹介】
 山梨県で地元の有力者の一人娘が誘拐される事件が起こった。警察の指示に従った結果、身代金の受け渡しは失敗。少女は死体となって発見された!県警は、遺留品に付いていた指紋から、無実の青年を逮捕。執拗な揺さぶりで自白に追い込んでしまう。有罪は確定してしまうのか?そして真犯人は?現役の法律家が描く、スリリングな冤罪ドラマの傑作。
裏表紙より

【感想】
 我々読み手は加害者が冤罪であることを初めから分かった上で物語を読み進めます。そしてこの物語は真犯人が誰かとか、冤罪をでっち上げた警察を糾弾するまでには至らずに含みを持たせた形で終わります。
 とにかく警察の思惑と権力と暴力で一人の青年が犯人へ仕立て上げられていくのがとても恐ろしい。裁判官も刑事も組織に縛られるただの人ということなのでしょうか。

●13階段

著者 高野和明
【内容紹介】
 犯行時刻の記憶を失った死刑囚。その冤罪を晴らすべく、刑務官・南郷は、前科を背負った青年・三上と共に調査を始める。だが手掛かりは、死刑囚の脳裏に甦った「階段」の記憶のみ。処刑までに残された時間はわずかしかない。二人は、無実の男の命を救うことができるのか。江戸川乱歩賞史上に燦然と輝く傑作長編。
裏表紙より

【感想】
 元警務官の南郷と殺人の罪で服役し仮釈放中の青年・三上が冤罪事件の真相に迫るというちょっと珍しいバディもの。
 ちなみにこの物語では、無理やり自白を強要する刑事は出てきません。
 特徴的なのは、死刑を執行する刑務官の苦悩が詳細に描かれている点でしょうか。
 余談ですが、薬丸岳さんはこの物語を読んで、作家になることを決めたんだとか。

●正体

著者 染井為人
【内容紹介】
 埼玉で二歳の子を含む一家三人を惨殺し、死刑判決を受けている少年死刑囚が脱獄した!東京オリンピック施設の工事現場、スキー場の旅館の住み込みバイト、新興宗教の説教会、人手不足に喘ぐグループホーム…。様々な場所で潜伏生活を送りながら捜査の手を逃れ、必死に逃亡を続ける彼の目的は?その逃避行の日々とは?映像化で話題沸騰の注目作!
裏表紙より

【感想】
 殺人犯として死刑が確定した未成年の少年が拘置所を脱走。偽名を使い変装をし、身を隠しながら、その潜伏先で様々な人たちと関わっていくという物語です。
 彼と関わった人たちは、彼の正体に辿り着いた時、「彼がそんなことをするはずがない」という気持ちと「もし本当に彼が凶悪犯だったら」という気持ちで心が引き裂かれるような思いをします。もちろん読んでいる私たちも。
 最後は、最後はまさか…。
 読み終えても手の震えが止まらない、とても切ない物語でした。

●潔白

著者 青木俊
【内容紹介】
 30年前に小樽で発生した母娘惨殺事件。死刑がすでに執行済みにもかかわらず、被告の娘が再審を請求した。娘の主張が認められれば、国家は無実の人間を死刑台に追いやったことになる。司法の威信を賭けて再審潰しにかかる検察と、ただひとつの真実を証明しようと奔走する娘と弁護団。「権力vs.個人」の攻防を迫真のリアリティで描く骨太ミステリ小説。
裏表紙より

【感想】
 状況証拠と危ういDNA鑑定によって殺人事件の犯人にされ、法廷で裁かれ、死刑を執行された後、15年以上経って冤罪の可能性が浮上。その時検察、裁判官、そして国がとった行動は、権力を傘に着た常識では考えられない妨害というか隠蔽だった…。
 こうやって小説の題材になるくらいですから、現実では当たらずも遠からずのことが起きているのかもしれません。
 警察官も検察官も裁判官も、もちろん大多数の人は正義の味方なんでしょう。しかしこれらの人達が結託すれば、簡単に無実の人を犯罪者に仕立て上げることができるという事実を考えると、なんだかとても恐ろしい気がします。

●テミスの剣

著者 中山七里
【内容紹介】
 豪雨の夜の不動産業者殺し。強引な取調べで自白した青年は死刑判決を受け、自殺を遂げた。だが5年後、刑事・渡瀬は真犯人がいたことを知る。隠蔽を図る警察組織の妨害の中、渡瀬はひとり事件を追うが、最後に待ち受ける真相は予想を超えるものだった!どんでん返しの帝王が司法の闇に挑む渾身の驚愕ミステリ。
裏表紙より

【感想】
 ある事件を担当していた渡瀬刑事はその事件から、5年前の事件の真犯人を知り、真相を明らかにしようと捜査を始めます。しかしそこに立ちはだかるのは警察組織。
 この物語のように正義が服を着て歩いているような警察が腐敗していたとしたら、庶民はいったい何を信じればいいのか。
 本文中にあった「正義のない権力はただの暴力」というセリフ。確かにその通りで、絶対的な権力の下では、警察は庶民の味方ではないのも歴史が証明しています。
 他の中山作品にもしばしば登場する渡瀬刑事がなぜ冤罪を心底憎むのか…。その後の渡瀬刑事の生き方を決定づける最初のエピソードとなる物語です。

●イノセント・デイズ

著者 早見和真
【内容紹介】
 田中幸乃、30歳。元恋人の家に放火して妻と1歳の双子を殺めた罪で、彼女は死刑を宣告された。凶行の背景に何があったのか。産科医、義姉、中学時代の親友、元恋人の友人、刑務官ら彼女の人生に関わった人々の追想から浮かび上がる世論の虚妄、そしてあまりにも哀しい真実。幼なじみの弁護士たちが再審を求めて奔走するが、彼女は…筆舌に尽くせぬ孤独を描き抜いた慟哭の長篇ミステリー。日本推理作家協会賞受賞。
裏表紙より

【感想】
 もちろんですが、生まれながらにしてモンスターな人なんてい魔戦。これまで彼女に関わってきた人たちの身勝手のせいで幸乃は…。
 幸乃が法廷で言った一言「生まれてきて、申し訳ありませんでした」は心を抉ります。
 もしあれが間に合っていればと考えずにはいられません。

【まとまらないまとめ】

 いかがでしたか?
 とにかくどの物語も重いです。辛いです。読んだら多分3日は引きずります。
 正直、気力が満ち満ちていない時に読むのはお勧めしません。
 でも、なんらかのきっかけで私たちも…。
 とにかく、まずは犯罪のない平穏な、そして冤罪のない正しい世の中を願うばかりです。

 最期に、
 読書っていいよね。


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