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頂(いただ)き

ダンゴムシは、今、崖を登ろうとしている。

それは、自分の背丈の何百倍もあろうか

という崖なのである。

ダンゴムシは、もし、その崖を登り切った

その時、私は私よりも凄い私になる!

漠然(ばくぜん)とそう思っていた。

というのも、ダンゴムシはその地にいる

リーダー格のダンゴムシに目をつけられ

居心地が悪いのを感じていたからである。

居心地の悪い空間にいるダンゴムシは

何をするにも、褒められ、賞賛される

リーダーダンゴムシ、何をするにも

リーダーダンゴムシにダメだしをされる自分

というものに、不満を感じ、とにかく

私は凄いものになりたい!

その思いだけが先行し、崖を登る決意をした。

崖の上の世界をダンゴムシは知らない!

知らないが自分を変えるにはこれしかない!

その思いのもと、ダンゴムシは登り始めた!

ダンゴムシが登る崖は、

人間が作ったコンクリートの崖で

垂直になっていた。

垂直の崖を登るのは、ダンゴムシにとって

大変だったが、ダンゴムシは全ての足を使い

1歩、また、1歩と歩みを進めた。

ダンゴムシが崖を登り始め、しばらくすると

大きな木の枝が、突風に揺られてしなり

ダンゴムシの目の前に倒れ込んできた!

ダンゴムシは、もし、

今の枝が私に直撃していたら、

私はこのまま崖から落ちていただろう。

その時、私は助かっているだろうか?

そう考えると、ダンゴムシは震えを感じた。

そして、1歩歩くのが怖くなってしまった。

しかし、ダンゴムシは考えた。

今、引き返すのは簡単だ!

簡単だ!簡単なんだが、今、それをするのは

何もしていないのと同じなのではないのか?

そう思った。

そして、その時、崖を登る!と宣言した時

自分の事を笑ったダンゴムシ達の事が

頭をよぎった。

そのダンゴムシは笑いながら言っていた、

『どうせ、途中で引き返すんだから

辞めとけよ!初めから何も変わらないだろう!

ただ、かまって欲しいだけで大きな事を

言うなよ!』

ダンゴムシは、その時の記憶がよみがえり

ハッと我に返った。

どのくらいの時間、とどまっていたのか

分からないが、風は落ちつき、

自分の行く手をさえぎる枝はなくなっていた。

ダンゴムシは、もう、振り返らない!

そう決めて、1歩、また、1歩と歩みだした。

その後も上から石が降ってきたり、

水が流れたり、様々な試練があったが

ダンゴムシはあきらめず頂上へと辿りついた。

頂上は今までと全く違う世界を登る前は

想像していたが、ビックリするほど、

崖の下と変わらない景色が広がっていた。

ダンゴムシは、思わずその景色を見て

大きく笑ってしまった。

しかし、登る前とは違い

ダンゴムシはこう感じた。

私はただのダンゴムシではない!

この登りきった世界がどこかは分からないが

私は、私のために、この崖を登りきった。

もしかしたら、崖の下みたいに私にとって

居心地の悪い事が起こるかもしれない!

しかし、それを楽しめるようにするか

楽しめないようにするかを決めるのは

私だ!私は私の意思に従い、私のために

この世界を楽しむ!そう決めた!

ダンゴムシは、その地では悩む事はなくなり

みんなに慕われ、愛されるダンゴムシに

なったとさ。

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