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性遍歴1-1:高校生の頃、大好きだった彼女と……

別れさせられました。


ええ、破局です。
連絡がつかなくなりました。
当時から15年以上経った今も音信不通です。
別れた、じゃないんです。
第三者に"別れさせられた"んです。

「あんたが私の元カレに似とるんが悪い!」


という理由で。




高校2年の時に同じクラスのAさん(便宜上の記号のようなもの。イニシャルではない)と付き合っていました。
内気で物静かな人だったけど、関係は順調でした。


僕は軽音部に入ってました。
文化祭のステージ発表くらいしか殆どやる事が無いので、部室は仲良しサークルみたいなノリで部員外の生徒の出入りもよくありました。
1つ年上の先輩部員の女性がクラスメイトを何人か連れてくる事が増えてきて、部室は賑やかでした。
その中の1人が、僕に『地獄』をつきつけてきた"メンヘラ女"その人でした。


メンヘラ女は、普段はいたって普通の人でした。
先輩や、部室に遊びに来ている他の人達と何度か話していくうちに、仲良くなりました。
部員外の人の出入りは、少しずつ減っていきました。
単純に飽きてきたり、用が無くなっただけだったんだと思います。
でも、メンヘラ女だけは、先輩と一緒にほぼ毎日のように来ていました。
好きなバンドの話とか、恋バナとかをよくしていました。
その時に僕の彼女のAさんの話もしていました。


ある日の部活帰り、僕と先輩とメンヘラ女の3人で部室の鍵を返すために職員室に向かっていました。
その道中、教室に忘れ物をしたことを思い出した先輩が来た道を戻って行きました。
メンヘラ女と2人で職員室前に着くと、同じように部室の鍵を返しに来ていたAさんが職員室から出て来ました。
吹奏楽部に入っている彼女も、部活終わりだったみたいです。
「こんにちは!この子が噂のAさん?可愛いなー」
メンヘラ女はそう言ってAさんに声をかけていました。
Aさんも軽く会釈をしながら反応していました。

次の瞬間、メンヘラ女が僕の腕に両手を絡めてきました。

当然、Aさんにもその光景を見られています。
すぐさま僕は振りほどきましたが、メンヘラ女は改めて僕の腕に両手を絡めて来ました。
さっきより強く振りほどいて、その勢いのまま僕は職員室に入って鍵を返しました。
職員室から出る頃にはAさんの姿はありませんでした。
その代わり、メンヘラ女が僕を睨んでいました。
そのまま何の会話もせず、下駄箱で先輩と合流しました。
メンヘラ女にさっきの行動の真意を確かめる事が出来ないまま、3人で下校しました。
メンヘラ女と先輩は同じ方向の電車、僕は違う方向の電車だったので、1人になってからAさんに電話をしようと発信しましたが、出なかったのでメールを入れておきました。

《さっきはごめん。勘違いさせてしまったかもやけど、俺もよく分からんくて……》

メンヘラ女にもメールを入れました。

《さっきの何やったん?Aさんの目の前でなんであんなことしてきたん?》

《私はただ皆と仲良くしたいだけ。だから距離を縮めたかった》

《だからって誤解されるようなことせんといてよ》

《ごめんなさい……》


Aさんからは《大丈夫》とだけ返信が来ました。


翌日以降もいつもと変わりなく、メンヘラ女は当たり前のように部室に来ていました。
唯一変わったことと言えば、職員室前での件以降から僕に対する露骨なアプローチが始まった事です。
やたらと隣に座ろうとする、ボディータッチを繰り返す…………
先輩や、他の人の目を盗んでそういった行動を繰り返されるようになりました。
何故かAさんが近くにいる時だけは、それが極端になっているように感じました。
むしろ、わざとAさんに見せびらかすようにしていたとさえ思えるくらいでした。

《ごめんなさい……》というあの返信は一体なんだったのかと思えるくらい、行動が矛盾していました。
やめてくれと言っても全くやめてもらえず、不愉快な空気が続くようになりました。


そうこうしているうちに、Aさんから《別れたい》とメールが入ったのを最後に連絡がつかなくなり、学校で会っても目も合わせて貰えない状態になりました。
Aさんとは、それっきり一切関わりがなくなりました。
(これを書いている今も尚、ずっとです。)
部室でその件を話すと、先輩は「女なんて腐るほどおるって!」と励ましてくれました。
メンヘラ女は「ドンマイドンマイ!」とヘラヘラ笑っていました。


メンヘラ女からのアプローチは、それからも続いていました。


数日後、メンヘラ女に告白されました。
僕は即座に断りましたが、それほど簡単に切り抜けられませんでした。
「付き合うのは出来やん。それに、ボディータッチとかそういうのも正直かなり迷惑やからやめて欲しい」と言ってその場を去ろうとした瞬間、メンヘラ女から首を絞められました。


「あんたが私の元カレに似とるんが悪い!私と付き合え。異論は認めやん。年下のくせに生意気ほざくな」


首にかけられた手を力ずくで振り払った時に、僕の腕がメンヘラ女の顔に当たりました。
「殴られた……」とうわ言のように呟いたメンヘラ女は、おもむろに制服のブレザーのポケットからカッターナイフを取り出しました。
それが目に入ったのと同時に、僕はその場を去ろうと走り出しました。
その時に背中に何かが当たって地面に落ちました。
音がした方を見ると、さっきメンヘラ女が手に持っていたカッターナイフが1cmくらい刃が出ている状態で転がっていました。
何をされるか分からないと思い、その場から逃げて帰りました。
家に帰ってから制服を見てみると、ブレザーとポロシャツの背面に小さな穴が開いていました。
跡が残らない程度の軽傷でしたが、背中に切り傷もありました。
メンヘラ女は僕に向かってカッターナイフを投げつけてきていたんです。
その日のうちに、僕はメンヘラ女の連絡先を全て拒否設定にして、自分の携帯のメアドも変更しました。


これでもう関わることも無くなる。
部活もしばらく顔を出さないようにしよう。
でも、これはまだほんの序章に過ぎませんでした。


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