最近の記事

ジェンダー/フェミニズムの視点から読むホラー映画『ローズマリーの赤ちゃん』(1968)

 『ローズマリーの赤ちゃん』は、そのタイトルが如実に示すように、妊娠・出産を主要モチーフとするホラー映画である。大まかなストーリーは次のようなものだ。主人公ローズマリー・ウッドハウスは、俳優である夫ガイと共にニューヨークのいわくつきのアパートメントに引っ越す。隣人であるミニーとローマンのカスタベット夫妻の養女が謎の転落死を遂げたことをきっかけに、ガイは夫妻との親交を深めてゆくが、ローズマリーは彼らの過剰なお節介にしばしば困惑する。そんな折、ライバルの俳優が突然失明したことをき

    • フラストレーションの累積、そして爆発:『ドゥ・ザ・ライト・シング』(1989)によせて

       本作の監督スパイク・リー自らが演じるムーキーは消極的な主人公である。ほとんど全編を通して、彼は命じられるがままにピザを配達しては道草を食っている。カメラはしばしばムーキーから離れて、昼間から飲んだくれている市長(メイヤー)や、通りすがりの白人男性に喧嘩を売るバギン・アウト、大音量で《Fight The Power》を流し続けるラジオ・ラヒームはじめ、ヘッドフォード=スタイヴェサント地区の他の住人の動向を呈示する。  本作のプロットは散漫で起承転結という明確な型を持たない。ス

      • 『ハロルドとモード/少年は虹を渡る』(1971)における死の表象

         『ハロルドとモード/少年は虹を渡る』(以下『ハロルドとモード』と省略)は、死に魅了された青年ハロルドが何ものにも縛られずに生きる天真爛漫な老女モードと出会い、愛し合い、離別する過程を通じて人生を受け入れる様を描いたフィルムである。だが本作で示されるのは生きることの素晴らしさばかりではない。このようなモードの人生賛美的な台詞はたしかに全篇に渡って語られるが、作品の中で繰り返し描かれるのは死や戦争の影である。モードと向き合うことで主人公ハロルドが直面するのは、生を謳歌する喜びと

      ジェンダー/フェミニズムの視点から読むホラー映画『ローズマリーの赤ちゃん』(1968)

      • フラストレーションの累積、そして爆発:『ドゥ・ザ・ライト・シング』(1989)によせて

      • 『ハロルドとモード/少年は虹を渡る』(1971)における死の表象