コロナ体験談【Day5-1】高熱でも働きます、フリーランスですから。
七月二十五日、待ちに待った月曜日。九時前のアラームで私は目覚めた。
「おや?」起きた瞬間、二つの変化を感じた。
一つめは、アラームが鳴るまでぐっすり眠っていたこと。長時間睡眠がとれていたのだ。
これまでは水とトイレで頻繁に起こされたから、睡眠時間は細切れ。起きて「まだ夜が明けてないのかよ」と何度も思った。
二つめは、体調の変化。インフルエンザを発症して、もっともつらいピーク時を過ぎた、あの時の感覚だ。体温計はないが、体感で38度より下がったように思う。
漠然と「あ、生きられるな」と確信した。
とはいっても、病院で診察してもらいたい。もう治すのはどうでもいいから、いつまで自宅療養すべきかの目安を教えてほしいのだ。
九時になるのでベッドから起き、電話の用意をする。しかしここでトラブル発生。
声が出ないのである。
予約は電話のみで、喋らなくていいネット予約はどこも受け付けていない。ますます「病院は諦めよう」と決意が固くなった。
このまま眠っていたいところだが、今日から仕事が始まる。金曜日に送った案件の修正依頼が届くのだ。
メール受信時に音が鳴るようにマナーモードを解除して、私はもう一度ベッドに潜った。
この日から、猛烈な眠気を感じなくなった。つまり長く起きていられる。疲れたら横になりたくなるが、これまでのように寝っぱなしから脱却していた。
午前中に修正が届き、おでこに冷えピタを貼りながら作業する。頭を使う部分はないが、これが執筆や考える内容だったら無理だった。「指示通りに修正する」だからこそ、熱がある状態でも働けたのだ。
いつもなら数分で終わる仕事にも時間がかかり、滝のように汗をかきながらなんとか仕事を終えた。明後日の朝まで対応が必要なので、あとは随時返信待ち。冷たい水をがぶ飲みし、ベッドに倒れ込んだ。
十七時頃にクライアントから再修正が戻ってきた。しかし身体が動かない。なんとかパソコンに向かい、再度修正する。これまで休んでいたにも関わらず、体調は思わしくない。午前に引き続き、滝のような汗が流れた。
軽微な修正にも関わらず、かなりの時間がかかった。幸いにもクライアントの終業間際だったため、明日の始業に合わせてメールの送信予約を設定。終わった途端、ベッドに倒れ込んでしまった。
発症から五〜七日目は、一日の中で夕方が最も具合が悪かった。何もしていないし昼寝から目覚めたばかりにも関わらず、ベッドから起き上がれなかった。
「発熱中は一日二回しか働けないな」と私は学んだ。
その一方で、「発熱時にも働かなきゃいけないのってどうなの」とも思った。こんなに苦しんでまで、働かなきゃいけないのか? 会社員なら休めるが、フリーランスの場合、引き受けた責任がある。そして誰かに代打を頼むということは、誰かにしわ寄せが行くということ。クライアントも混乱するし、結局自分が動いた方が早いのだ。それに八割完了させた仕事で、収入が入らないのも馬鹿みたいだ。
これ以上の修正がないことを願い、ベッドに潜り込んだ。