コロナ体験談【Day1】あなたのコロナはどこから?私は喉から。
二〇二二年七月。昨今、世間を騒がせている新型コロナウイルスの流行は、未だ留まることを知らない。むしろ世界的には落ち着いてきたのに、日本では再度大流行。第七波が猛威を振るい、医療機関はパンク寸前。数年ぶりに緊急事態宣言を発令すべきとの世論も高まっていた。
しかし、そんなの関係ねぇ。そう言わんばかりに私は生きていた。Webライターとして働いているので、外に出る必要なし。独身女の一人暮らしなので、他人との接触はほぼない。ネットスーパーを駆使すれば、その気になれば何か月でも籠城できる状態だ。普段の外出は近所のスーパーとコンビニ、あとは図書館くらい。仕事も趣味も、すべて自室でこなせる状態だった。世間は連日猛暑のニュースを垂れ流していたが、起きたら即クーラーのスイッチオン。就寝時まで、涼しく快適な部屋で過ごすことができた。
でもそれがいけなかったのだろう。忘れもしない七月二十一日、木曜日の夜。寝る準備をしていたところ、急に喉がイガイガしてきた。嫌な予感がする。風邪になる直前に感じる不快感だ。ここで上手くリカバリーできれば、風邪にはならない。しかしこのまま放置したり手順を間違えれば、明日の朝には完全に風邪になる。三十年以上生きてきて、自然と学んだパターンだ。
とりあえず水を飲む。しかしまったく変化なし。喉は乾いたままだ。思えば朝からクーラーがつけっぱなしで、まったく換気していない。少しだけ換気しようと、窓を開けた。瞬間、熱気を孕んだ夜風が私を襲う。夜になってようやく「今日は暑かったんだ」と自覚した。なぜそんな初歩的なことを忘れていたんだろう。ああ、そういえば、今日はランチを買いに五分しか外出していない。あとはずっと自室に籠っていた。外気を感じるほど、外にいなかったのだ。そういえば、昨日もそうだった。いや、一昨日もその前の日も……。
クーラーから送られる風は乾燥しているという。冬に暖房で、いつも喉がやられるのを思い出した。今の喉の痛みも、冬に感じるイガイガに似ている。ネットで調べたら「冷房病(クーラー病)」なる病気があるらしい。
なーんだ、ただ冷房で喉がやられただけか。確かに、半袖から露出した上腕に触ったら、ひんやりと冷たい。思った以上に身体が冷えていたのだ。
明日は仕事が少ないし、さっさと片付けて外に出よう。そして目いっぱい汗をかいて、冷房で冷えた体を温めなければ。
虫が入ってくる前に窓を閉め、私は床についた。やっぱり暑くて眠れない。だがそれ以上に、喉のイガイガが眠りを邪魔した。
「今ここにハチミツがあったらいいのに」
喋りすぎて喉が痛い時、ハチミツを喉奥に流し込むと、割とすぐ効く。あの粘度がいい。喉に絡みつき、長時間保湿してくれる。
だが、そんな都合よくハチミツはないので、自分を誤魔化し誤魔化し眠りについた。途中、あまりの暑さに、何度か冷房を付けながら。
こんなところまで読んでくださって、ありがとうございます!