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「絵と言葉のライブラリー ミッカ」で、ミッカった!

“小学生以下”の子どものための図書館『絵と言葉のライブラリー ミッカ』(長野真弓/こどもまなびラボ)

↑この記事を読んで「絵と言葉のライブラリーミッカ」へ猛烈に行きたくなり、Facebookで何気なくシェアしたところ某美術館学芸員のFさんとアーティストのMさんが乗ってくださり、Fさんの小学校2年生のSちゃんに同伴してもらい7/12に訪問が叶いました。

施設の概略や魅力は上記の素晴らしい記事にて網羅されています。このnoteでは、私自身が見て、またお忙しいところご案内くださった山本館長さんのお話を聞いて、いいなと思った4つのポイント(ミッカったポイント!とも言えるかも)を元に記事を書きたいと思います。

(1)好奇心のフットワークを軽くできる複合的な空間

下の画像は、施設の本棚にさりげなく貼ってあるミッカの見取り図です。

ミッカは広大なスペースを有しているわけではないのですが、バラエティに富んだレイアウトになっています。また、「大きなソファー」で「本だな」から選んで持ってきた本を読んだり、「アトリエ」で本を見ながら絵を描いたり、「ミッカシアター」でパフォーマンスを見て興味をもったら、すぐに関連する本を探して読むということもできます。もちろん、必ずしも本を読まなくても楽しめる工夫がたくさんあります。パズルがあったり、ゆったりできるスペースがあったり、「ギャラリー」ではディスプレイなど鑑賞を楽しんだり、「小屋」は一度は誰もが潜ってみたくなるような魅力的な空間です。
こうした見取り図だけ見ていると、児童館に似ているかもしれません。児童館にミニライブラリーを併設しているところもありますし。でも、例えば児童館にある工房のようなライブラリー以外のスペースでで本を読みたい場合は、同じ館内でも一度ライブラリーで貸し出しの手続きをしてそのスペースから持ち出すというステップがあるところがほとんどではないでしょうか。ミッカにある本の貸し出しはしていませんが、それにも増してこの好奇心のフットワークを軽くしていられる環境は、自分が関心をもった世界へ本を通じて軽やかに入っていけるのではないでしょうか。また、「●●してはいけません」という張り紙がないのも、絵や言葉や装飾やインテリアなどミッカにある情報がすっと自分の目に飛び込んでくる環境だと思います。


(2)大人も子どもも本気になれる!

ここは「本だな」。本棚の半分より下の部分は特集コーナー。訪れた日は「やっぱりくまがすき」や「まちでさがしもの」などがあり、子どもでなくとも「どんな本があるんだろう?」と興味を惹かれました。ミッカスタッフさんがテーマを考え、選書や棚づくりをしています。本以外にもちょっとした関連する雑貨なども置いてあります。およそ1ヶ月半に1回くらい入れ替えているそうですが、子どもたちの反応があまりなさそうだったら早めに入れ替えをすることも。たまに子どもたちが自分で考えて元々のコーナーになかった本を置いていくこともあるそうで、スタッフさんもそうした出来事から得るものがあるそうです・・・しずかなるかけひき!
ミッカにある本は、業者任せではなくスタッフさんが選書していて、漫画もありますが、必ずしも子ども向けの本だけとは限りません。アーティスト・Mさんが「この本、映像作家は全員読んでますよ」と言うような専門的な本もありました。もしかしたら、ミッカが主な対象としている小学生以下の子ども達はそうした本を興味をもって読んでも完全に内容を理解することができないかもしれません。ですが、その本が存在することで、今は難しくても「もっと深くて面白い世界があるよ」というメッセージになるのではないかと感じました。

ここは「ギャラリー」。この時は花や鳥のディスプレイが上にあり、下の本棚は自然科学系の本や図鑑が置いてありました。

余談ですが、「本だな」のコーナーにも夏らしいスイカが下げてあったり、ミッカ入口にも可愛いディスプレイがあります。

ここの猫の足のようなもの、タッチすると中に入っている鈴が鳴ります。子どもはジャンプすると届くくらいの高さ。しかも各足に微妙に音色の違う鈴が入っていて、つい全部タッチしてしまうという・・・にくい!
ディスプレイの一部は、年間予算をつけて季節ごとなどに変更しているとのこと。いわゆる「絵本」だけではない、たくさんのビジュアルによる刺激もふんだんに盛り込まれています。

カーテンにも素敵な刺繍が!こうした各所にある遊び心に大人も見ているだけで心地よく、ワクワクします。

ミッカのロゴマークも、ちょっとたくらんでいるようなニヤリ顔。ニコニコしているマークを当初デザイナーから提案されたそうですが、あえてそういう巷に溢れる子ども向けのニコニコイメージをやめたそうです。そして、「ミッカ」という文字を「顔」にするというルールがここから生まれ、違う色やちょっと表情の違う「ミッカ」もいます。自分オリジナルの「ミッカ」も作れちゃうかも。
上の写真は、ライティングの都合で目の下に影というかクマができてますが(涙)、本当の「ミッカ」はもっと元気そうなので、公式サイトのaboutあたりをご覧ください!


(3)バリエーションから、自分の好き!を見つける

「大きなソファー」にこんな本棚がありました。

特集コーナーもありますが、ここは表紙の色別に本が並んでいます。こうしたビジュアルかつ非言語的な本の見せ方もミッカの特徴の一つです。自分の好きな色から、新たな本との出会いがあるかも。

トイレのサインもご覧の通り。

色々な形や色の女子トイレのマーク。近年はLGBTQの方も利用しやすいトイレや「誰でもトイレ」についての議論もありますが、もし大きく「女子」とひとまとめに言ったとしても、そもそも一人ひとり違うんだよなあ、なんて当たり前のことをこのマークを見て考えたりしました。ピクトグラムの都合上か、暖色よりでスカートっぽいマークが多いですけども(ちなみに筆者はお行儀が良くないので、スカートは滅多に履きません・・・)。

ここはアトリエのコーナーです。紙や色鉛筆、色見本なども置いてあります。

そこにあって、「やられた〜」と嫉妬したのがこちら。

この紫色以外にも赤、黄色、緑、青など大まかな色分けの中に、様々なメーカーの色鉛筆がまとめて入れられているのです。管理や現場での使いやすさから、同じメーカーで12色なら12色揃ったセットで置いてあることがほとんどだと思います。かくいう私も勤め人の時はそうしていました。そして、これを見た後に大いに後悔と反省をしています・・・なぜこんなシンプルなことが思いつかなかったのか!
写真のように一言で「紫」と言っても、赤味がかっているもの、青味がかっているもの、黄味がかっているもの、濃い、薄いなどなど色の幅も描き心地も違いがあるよね、というこれまた当たり前のことが一目瞭然。絵を描くときに、この中をよく見て自分がその時使いたい紫を探すというさりげない自己決定力も求められますし、ひいては自分の身の回りを見る解像度が上がるきっかけにもなるのではないかと感じました。例えば、絵本を見ながら真似して描こうとするときに、これだけの選択肢があればより本物に近い紫を吟味して探すでしょう。これは今後画材をまとめて買う機会があれば真似したい!


(4)「発散」ではなく、「没頭」できる環境

館長さんのお話をお聞きして印象的だったのが「没頭できる環境」を実現するということ。例えば、子どもは建築空間の中に直線が長く続くと思わず走りだすことが多いのですが、ミッカではこうした子どもたちの過ごし方を日々観察して、家具のレイアウトジグザグに配置して自然と走らなくなるようにするなど、バージョンアップしています。

ここは「大きなソファー」。大人も子どもも自分の落ち着く場所を探してゆったりとしています。できるだけ角をまるくしているインテリアも、落ち着いた雰囲気づくりに一役買っています。余談ですが、私自身子ども向けのスペースに頻用されているパズルマットの接合部分や市松模様、ギザギザしている模様を見ていると落ち着かない性分なのです。カフェで打ち合わせしているときにそこの壁紙がギザギザした模様で、気が散ったこともありました・・・。

Sちゃんも「ミッカシアター」の一角が気に入って、読み終わったら違う本を探して持ってきて、またここで読んでいました。

また、部屋のレイアウト自体も「ミッカシアター」を囲んで、回廊型になっていて「死角」が多い作りです。ミッカでは、公園などのように体を動かして発散するのではなく、また人目を必要以上に気にすることなく、本や自分の世界に落ち着いて没頭してほしいという意図があるからそうしているとのこと。押し入れに隠れて、懐中電灯の明かりで本を読んだり、秘密基地を作ったり、親や大人からの視線を遮って自分の世界を作る。そんな子ども心を思い出しました。
ここで思い出したのがとある中学校の建築のこと。最近はコミュニティスペースのようなスペースを有して開放感があり、木材を多用するなど温かみのある学校建築も増えましたが、割と新しいとある中学校は、中庭を囲んで「ロ」の形になっていて、全く死角がない建築でした。教員はすぐに隅々まで見通せ、管理はしやすいのでしょう。ですが、管理されていることが体感できてしまうので、人目を必要以上に意識してしまい、自分自身の本来の姿もちょっと隠してしまうのではないかなあと感じてしまいました。もちろん小学生以下と中学生では発達段階が違いますが、建築や環境が与える心理的な影響についてはもっと考えていきたいと思います。

以上、長くなりましたが、それでもここに書ききれなかった魅力もたくさん詰まっていて、日々進化しているミッカ。計画の段階では国内だけでなく海外の図書館なども視察したそうで、細部まで考え抜かれていると感じました。もちろんスタッフさんたちも魅力的で、常連と思われる子ども達からも話しかけられていました。
すっかりファンになってしまい、まるで回し者のような記事ですが(笑)、こんな素敵な場所が近くにあったらいいなぁと本当に思いました。


シアターやアトリエでのイベントやワークショップも多く開催されています。まずは、公式サイトをご覧いただき、ぜひ訪れてみてくださいね!

絵と言葉のライブラリー ミッカ
http://micca.me/