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短編! 宮部みゆき作品

画:ユカワアツコ(小鳥の絵や小物を制作。画像は箪笥の引き出しの底板に描かれた作品。https://calico29.wixsite.com/yukawa-atsuko/1st-project)



『鰹千両』

<完本> 初ものがたり PHP文芸文庫

これはいい、親子って血の繋がりだけじゃないと思わせてくれる逸作。縄田一男さんのアンソロジー 『傑作時代小説 情けがからむ朱房の十手』(PHP文庫)にも収められている。
「初ものがたり」は「本所深川ふしぎ草子」でも活躍の茂七親分を軸に展開する短編連作。「ニ、三日で埒をあけますから、ちょいと待ってておくんなさい」てな感じの半七を思わせる仕事ぶり、脇をかためる人物も味わい深い。最後まで明かされない謎もあるが、全てを語らずとも読者との糸をプツンと切るような事はしないのも、宮部作品の魅力ではないだろうか。余談だが、藤沢周平の短編には「え、これで終わっちゃうの?」という感を抱くものがしばしば。『驟(はし)り雨』、『雪明かり』、『晩夏の光』は表現したいし、『必死剣鳥刺し』は豊川悦司主演で映画化もされて大好きだけど。

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『灰神楽』&『お文の影』

角川書店「ばんば憑き」に収められた『お文の影』(当初「半七捕物帳」へのオマージュを予想。勿論それもあるのだろうが)を読んで、俄然『灰神楽』(「あやし」角川文庫)の存在が際立ってきた。

『お文の影』は本当に辛い話だが、その辛さ、痛さを取りまく描写が何とも愛おしい。人々の声や表情が三次元になる感が半端じゃない。そういった意味で舞台化への欲求は高まるが、ハードルの高さも半端じゃない。

しかし、宮部みゆきと言う作家は〈残酷〉も、とことんしっかり書く。読んで、黒い気持ちになる位。その逃げない姿勢、半端なさも良い。

因みに「ばんば憑き」は、文庫化の際「お文の影」に改題されている。

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『器量のぞみ』

(「幻色江戸ごよみ」新潮文庫)
自身の初舞台作品だった。あれから、ざっと20年。久々に2021年8月、物語の舞台深川で上演予定。~夏の宵 江戸下町で夕涼み~語りと津軽三味線の夕べ        本作を語る悦びは変わらないが、解釈やアプローチは一線を画す。一本調子も甚だしいと、当時の自分を叱りたい。
文学作品のテーマを【愛】とするのは好きじゃない=へそ曲がりの由縁。しかし、悔しいかな。この作品の真実は「最後に愛は勝つ」だろう。多くの方が「ええ話や」と思うのも、うなずける。


『神無月』

「幻色江戸ごよみ」は縄田一男さんの解説も素晴らしくて、永久保存版的に大切。縄田さんも熱く語っているのが『神無月』。もう、堪らないっ!実は秋に上演予定で、こちらも稽古中。表現しつつ、こんなにゾクゾクする作品も久しぶり!とにかく、かっこいい。「俺がやらずに誰がやる」ー真実の相互扶助を想わせてくれる傑作。

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