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名探偵コナン ハロウィンの花嫁の対比構造について考察してみる


(以前ツイッターに載せたものを加筆修正しています)


今回のハロウィンの花嫁について元ネタは「揺れる警視庁」であるのは間違いがないが、どうにも過去のシーンがちらつくので一度整理して考えてみることにした。

するとこの二つの原作エピソードが大きく絡んでいるのではないかという考えに行き着いた。


「本庁の刑事恋物語 偽りのウエディング」52巻FILE535~

高木と由美が替玉捜査で新郎新婦に成りすますことになるエピソード。
最後にさらに替玉をして由美のドレスを着た佐藤が高木を背負い投げ。
原作では比較しにくいけど、アニメで着ているドレスは完全に今回の佐藤の着ているドレス。
なのでこのエピソードを覚えていた人は高木と佐藤が映画で「本当に結婚式をあげるのか」はピンと来ていた人も結構居たはず…。
この話自体は昔同じようなことがあったねという軽いオマージュにも受け取れた。

「本庁の刑事恋物語3」27巻FILE267~

佐藤刑事の父親の話が描かれるエピソード。松田刑事は36巻初登場。佐藤が松田の件でトラウマになったのも父親の件があったから、というのを忘れてはならない。この作品を通すと佐藤刑事というキャラクターの深みが出るのと同時に、ハロ嫁鑑賞ポイントが少し変わる。

(コナン君もよく覚えている)「愁思郎事件」で18年前に犯人を追跡中、交通事故で亡くなった佐藤刑事の父親。
実は自棄になりトラックの前に飛び出した犯人を救おうと、突き飛ばして替わりに轢かれてしまったのが真相。

ここで父親である毛利小五郎が取った行動がリンクしたのではないか。

これだけでも十分なのだが、この話では他にも今作との共通点があり、

  • 冒頭探偵団(歩美)の証言を基に似顔絵を作成するシーンもある。

  • 登場する放火犯は品川に火の文字を書くように放火を行っていた。渋谷の地形を使ったトリックに重なる。

揺れる警視庁以上に物語の根幹に置いた原作エピソードなのではないかと推察できる。


ラストの探偵団が高木と佐藤のキスシーンを目撃するのは「初恋の傷跡」64巻FILE670~のエピソードと被っている原作ファン大興奮シーンですが……ボロボロで傷だらけ、生死を彷徨う状況の高木との会話は佐藤刑事の父親との最期もリンクしている。(もともと原作自体がそこと重なる構造にもとれる)

高木の生還により佐藤刑事の救済が描かれたのではないか。

脚本上の対比構造

偽りのウエディングで由美→佐藤に替わったのと似ているのが高木の松田への変装。
揺れる警視庁や警察学校編のオマージュは多く、映画企画の元の話になっているので割愛していくが、この対比構造が物語の核になっていたような印象をうけている。

  • 佐藤父と小五郎

から始まり

  • 松田と高木

  • 佐藤とエレニカ(理不尽に愛するものを失った者の瞳)

  • コナンとエレニカの息子(転がるサッカーボール)

  • 萩原と松田(松田のガムの発想は7年前の萩原)

  • 降谷と景光(階段を駆け上がり降谷を助ける景光、そして助けられなかった降谷)   etc…

こうなると伊達にも何かがあったのではないかと思うのだが、村中とクリスティーヌが伊達とナタリーだったのではないかと…。結構残酷な対比であんまり考えたくないが、最初に見たときにあの二人を思い出したのは事実。二組とも結婚指輪を渡す前に……。まあ考えすぎかもしれない。

劇中で最終的に萩原がすべてを救ったヒーローだったといっても過言ではないハロウィンの嫁だが、ガムをあげた伊達のおかげで松田が一日生き延びてたり、ヒロが負わせた致命傷のおかげで降谷は生き延びたり、松田が投げたボールが新一と蘭のピンチを救ったり、それを降谷が知ったことで過去と人間関係の線が繋がっていく。
とても丁寧で綺麗な回収をするリレー構成だった。
そして結婚から葬式で最初に戻って生と死で綺麗に締める。(冠婚葬祭)輪廻転生ともとれる。

劇中のみでこれだけ見事なので今作はいい作品ではあるけど、もっと大きな名探偵コナンという枠組みで考えたときに過去のエピソードたちと繋がる構造を作ったのが、本当に素晴らしいと思うと同時に、読み解いてくれるだろうというファンへの信頼を強く感じた。

色々と他にも言いたいことはあり、過去映画のオマージュは沢山あったし、分かりやすくピアノソナタの事件を経たコナンとか、これは大したことではないけど風見が持ってきたであろうジャケットを着た降谷(風見にかけられた降谷のジャケット)というバトンタッチだったり、探偵団がベルトを届けにくるところとか、それを繋ぐところとか、縁だったり結びつきを強く感じる映画になってたのではないかと。

高木と佐藤、そして降谷の縁に関しては今作では結ばれなかったように見えて最大の謎として「フルヤレイ」というキーワードを残していったので、今後なにかしら近づくことはあるんだろうと予想しております。



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