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ラグビー日本代表vsライオンズの舞台《スコットランド》関連の本を探す④〜国民詩人バーンズ〜

(このトップ画は、イギリス絵画の巨匠ターナー作『バス・ロック島』。スコットランド東岸の沖合に位置する火山活動によってできた島を描いている。)

1.別れの歌ではありません

ロバート・バーンズ(1759〜1796)

彼の誕生時、スコットランドはすでに政治的独立を失っていた。

日本では、卒業式の定番『蛍の光』原曲の作詞者として知られる。

原題は『Auld Lang Syne』

これはスコットランドの公用語の一つゲール語の表記。英語に訳すと『Old Long Since』、日本語に意訳すると『過ぎゆく昔』となるらしい。

スコットランドでは、非公式ながら国歌に準ずる扱いを受けている。主に年始、大晦日のカウントダウン直後の新年ソングとして定着している。

日本では『別れの歌』だが、バーンズの歌詞にそうした要素は全くない。

映画『カサブランカ』の名曲『As time goes by』=『時のすぎゆくままに、時が経っても』みたいな意味だろうか。英語は苦手だ。

日本語訳にすると、こんな歌詞だ。

旧友を忘れ 思い起こすことがなくても良いのか?
昔懐かしい日々を忘れても良いのか?

懐かしき日々のために 我が友よ
友情の杯(さかずき)を酌み交わそう
懐かしき日々のために
きっと君はジョッキを飲み干す
きっと僕もそうするさ!
友情の杯(さかずき)を酌み交わそう
懐かしき日々のために
僕ら二人で駆け回ったあの山々
綺麗なヒナギクも摘んだ
だけど僕らはさまよい続け 疲れてしまった
長い年月を経て
僕ら二人は小川を渡った
朝日から夕暮れまで
だけど僕らを荒海が隔ててしまった
長い年月を経て
この手をとってくれ 親友よ
そして君の手を僕に!
さあ酒をぐいっと酌み交わそう
懐かしき日々のために

一緒に飲もう!とは、同窓会的な歌だったのだ。ちなみに、訳者が《ジョッキ》と訳している箇所は、《pint-stoup》が原語。

pint=1パイント=473ml、stoup=大きなコップ、要するに、

彼らはパブで『ビール中ジョッキ』から始めるらしい。

少なくとも中身はスコッチウイスキーではないだろう。あの頃のスコットランドにハイボールはなかったと思うし。

このメロディーに《中国の故事》をもとにして、歌詞を『7.5.7.5.7.5.7.5』で1フレーズを作る日本古来の歌謡形式《今様》で作ったのが『蛍の光』。

ホタルノヒカリ マドノユキ 

フミヨムツキヒ カサネツツ

イツシカトシモ スギノトヲ

アケテゾケサハ ワカレユク

たしかに7・5&4行でできている!

日、中、スのコラボ曲とは❗️

まさか、遠く離れた国で卒業式の定番songになっているとは、バーンズも天国で驚いているだろう。

ちなみに、スコットランドでは、彼の誕生日1月25日を『バーンズナイト』として祝う習慣があるらしい。

彼の作った『ハギスに捧げる歌』を歌い、伝統食《ハギス》を食べる、ということだが、、

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ザックリいうと、巨大《羊モツ》シュウマイ。

羊の内臓、主に肝臓をミンチして、オーツ麦、玉ねぎ、ハーブ、牛脂と共に羊の胃袋に入れて茹でる、もしくは蒸す。

牛脂を除けば、ダイエットにはかなりいいかもしれない。私も食べてみた。味付けに難がある、かなり。イギリスあるあるだが。

最新版の『るるぶ』や『まっぷる』でも、相変わらず『イングリッシュブレックファースト』推しのイギリス。あの国でおいしいのは、今も《カレーと中華》なのかもしれない。

そう考えると、元スコットランド代表レイドロー選手が気に入った『CoCo壱』のカレーは、相当ハイレベルなんだろうか。

2.美しい人生よ  愛が、全てさ

バーンズの詩集は、かつて岩波文庫に収められていたが今は絶版になっているらしい。

仕方なく岩波文庫『イギリス名詩選』を買ってみた。

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バーンズの詩は一編だけ収められている。イギリスはシェイクスピアをはじめ、ブレイク、ワーズワス、バイロン、テニソンなど詩人天国だ。日本も万葉の昔から歌人、俳人天国、心の内を言葉で紡ぐのは古今東西変わらぬ人の営みなのだろう。

バーンズの詩、タイトルは

《A Red Red Rose》

岩波文庫の日本語訳は下記の通り。

俺の恋人よ、お前は赤い薔薇だ。6月にパッと咲いた赤い薔薇だ。
お前はまるで甘い音楽だ。見事に奏でられた甘い音楽だ。
お前の美しさに負けまいと、俺の恋も命懸け、おお、俺の可愛い恋人よ!
たとえ海という海が干あがろうと、たとえ岩という岩が太陽に溶けようと、
俺の心は変わりはしない。いつまでも、そうだ、俺の命がある限り、➖おお、恋人よ!
さようなら、俺のたった一人の恋人よ、ちょっとの間だ、さようなら!
俺は必ず戻ってくる、おお、俺の恋人よ、千里の彼方からでも戻ってくる!

彼はどこに行くのだろう❓戦争、だろうか?

熱い。熱すぎる。歌なら松崎しげる『愛のメモリー』、ハウンドドック『FF』レベルに歌い上げないとドン引きするんじゃないか⁉️

これが彼の1番人気の詩、という事になっている。しかも、これには後日曲もつけられて、現在も様々なアーティストによってカバーされている。

試しに聞いてみたが、意外にも曲の雰囲気はしっとり、『イルカ』の『なごり雪』に似ていた。

私達の聞く『蛍の光』、あくまで共通なのはメロディーであって、バーンズの書いた詩は関係ない。とはいえ、私がロンドンにいた20年前、スーパーの日本食材売り場は『Asia』ではなく『Far East』と表示されていた。

極東‼️

その響きに泣きそうになった事もある。そんな遥か遠い国のメロディーが、明治の昔に海を超えて今なお歌い継がれていることがなんとも感慨深い。






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