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隊長職変死の椅子【毎週ショートショートnote】

一回も事件を解決したことのない名探偵の小籠包蒸(ショーロン・ポームス)探偵に呼ばれた。なんでも僕の推理力を試したいらしい。

「おお、良く来たな!小林君」
僕のことをワットサンと呼ぶのにも飽きたようだ。

「ちょっとこれを見て背景を推理してみてくれ」

オークションサイトの出品ページだった。

タイトルは『隊長職変死の椅子』

商品の状態は、傷や汚れあり。

商品説明欄には
『遺品です。変な情や念とかは入っていません!』
とだけ。

昨日落札されており販売済みのタグがついていた。落札価格は送料込みで5000円だった。

なんだなんだ?いきなりどうした?情報はこれだけか。

「まだまだだな!時間切れだ!小林君!」

「ちょっと待て!出題から1分も経ってないじゃないか!」

ポームス探偵は僕の言い分はスルーして得々と自分の推理を披露しはじめた。

「まずは隊長職だがなんの隊長だと思う?この椅子張は上等な蛇革だ。そしてこの大きさといったらオオアナコンダしかない。ズバリ、この椅子はなアマゾン探検隊の隊長のものだった。これだけのものが5000円とは」

ふむ、筋が通っている。

「次に変死だ。まず肘掛けだ。なんか心持ち左右に開きかけているだろ。これは両側から強く引っ張ったせいだ。そしてこの背もたれと脚の傷だ。通常の使用ではこんな傷はつかない。背もたれの方は激しく掴んだと思われ、脚のほうは激しく取り回した際の傷だ。ここから推測されるのは」

僕は息を潜めてポームスの言葉を待った。

「椅子取りゲームだよ!小林君!」

「ええっまさか!」

「そのまさかだ。隊長職は椅子取りゲームで決められたのだ。この画像を見てみろ。歴代隊長の名前が彫られている」

たしかに座面の裏側の画像にははそれがあった。

「そしてこの最後の第十五代隊長だ。名前の後に殉職とある。故人には申し訳なかったのだが調べさせて貰ったよ。椅子取りゲームの最中に転倒してしまい打ち所が悪かったんだ。その時点で名誉隊長に決まったんだが結局帰らぬ人となってしまった」

そうだったのか。たったこれだけの情報でここまで推理を組み立てられるとは。さすがポームス。

「さてと、まだまだ修行が足りんな小林君!出直してこい!」

ポームスの物言いにイラッとしてなにか言い返そうとしたその時、ピンポ~ン。玄関のチャイムが鳴った。

「おっ運送会社か!」

まさかポームス、お前が落札者なのか?

「ええっと、荷物の引き取りにまいりました。らくらく家具便で宜しかったでしょうか?」

それを聞いた瞬間僕はポームスにキレてしまった。


「お前が出品者かっ!!!」


(おおよそ1000字強)


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