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ちょっと変わった田舎暮らし、はじめます。#10お花見の準備

まだ少し薄暗く、日の光がまだ部屋に入らない朝6時。昨日の晩に作っておいた味噌汁と冷ご飯を温めながら、スマホで天気予報を見ていた。

当然、今日の天気と気温、降水確率とかが載ってるわけだけど、ちょっと下にスクロールすると他にも情報が出てくる。UV指数とか花粉指数とか、天気痛予報までいろんな情報が配信されている。

何気なく『桜の開花予報』チャンネルをタップした。

現在地を取得すると、大体の開花状況が表示される。この周辺は、『満開』の文字と桜の花のマークが表示されていた。

「え、満開なんだ。そういえば最近何かと忙しくしてたから、見に行けてないな。」

本当に最近は色々あった。
外に行ったとしても、食材の買い出しにコンビニへ行ったぐらいだ。せっかく桜の季節なのに、見ないなんて選択肢はない。桜が散ってしまう前に見ておきたいところ。

鍋で温めている味噌汁がぐつぐつ沸騰し始めたので、慌てて火を止めてお椀に移した。ごはんと作り置きの野菜炒めを温めて朝ご飯にした。

「この近くで桜が綺麗なところってどこなんだろ。」

独り言をつぶやきながら、スマホで『名川町 桜』と調べてみた。

すると、駅の近くに並木があることや、町の神社にも多く植わっていることが分かった。こんな簡単な調べ方でも、案外欲しい情報は出てくるもんだな。

朝はまだちょっと冷えるこの部屋で、少し塩辛くなった味噌汁を静かにすすった。その音にちょっと耳が反応したのは子熊のごろうちゃん。多分、まだ夢の中かな。

朝ご飯を食べ終わって食器を片付けると、お風呂を洗った。

最近朝早くに目が覚めるので、ルーティン化してきている。

このルーティンをこなしていると、なんだか心が整うような気がしていて、実際、このルーティンをこなさないと何かを忘れてきたような感覚になるほどだ。ルーティンを終えると少しずつ太陽が山の上に顔を出し始めていた。

「あとは洗濯さえすれば、今日は一日ゆったり過ごせるな。あ、でも部屋の掃除もしたいな。」

ここに引っ越してきてから一日の流れがとてもゆったりに感じてしまう。私は勝手に田舎マジックと呼んでいるこれは、仕事に追われていたからそう感じるだけなのかもね。

そんな田舎マジックを感じながら洗濯機を回していると、廊下をトタトタ歩く音が聞こえた。

「おはよう、ごろうちゃん。」

洗濯機がある洗面所から廊下をのぞきこんで声をかけてみた。

「おはよ~おわぁぁ。」
「大きなあくび出たね。水、飲む?」
「んー。」

まだ半分夢の中にいるごろうちゃんは、寝ぼけ眼でお気に入りのシェラカップを探していた。食器を干すかごの中に入っているので、ごろうちゃんには届かない位置にある。

シェラカップを取って、水を注いでからごろうちゃんに渡そうと足元を見ると、さっきまでシェラカップを探していたはずのごろうちゃんが私の足元で丸くなって半分夢の中だった。

「ごろうちゃーん、起きてー。」
「んー。」
「ほら、お水だよ。」
「んー。」

ごろうちゃんは寝ぼけながら私の手をつかんで、というよりも少しのしかかるような形でシェラカップから水を飲んだ。冷たい水を飲んで目が覚めたのか、少し笑って「おはよう」と言って、座っていた所から立ち上がった。

ごろうちゃんの行動はいまいち予測できないけど、小さい子どものような感じがしてどこか愛くるしい。

立ち上がってからはそのまま自分の寝床を整えようとしていた。お布団が来てからは、毛布を折りたたんで作ったお手製のベッドで寝ている。その寝床を自分で整えようとしてる、まあ、結局寝そうになってるけど。

「あらら。起きてー。窓際のほうがあったかいよー」
「うんー。」


毛布の上から移動して、ごろうちゃんを膝の上に乗せた。

「ごろうちゃんってさ、桜、見たことある?」
「さくら?」
「うん。今日さ、桜、見にいかない?」
「いきたーい!」

というわけで、引っ越し作業で見に行けていなかった桜を見に行くことにした。とりあえず近場の神社と川の方に咲いている桜を目的地にして、お散歩をしながら。

寝ぼけている状態のごろうちゃんを連れていくのは少し大変なので、2時間後の12時をちょっとすぎてから家を出ることにした。出発時間までは、お花見のときに食べるサンドイッチを作ることにした。

食パンでレタスとトマトと、あとはハムを挟んで耳を切り落とした。

ごろうちゃんは食パンの耳を自分の耳と勘違いして自分の耳を守るように覆っていた。

「つまみ食いしちゃおっか。」

6㎝角に切ったサンドウィッチをごろうちゃんに手渡した。ごろうちゃんはお腹が空いていたらしく、あぐあぐ食べ始めた。ほっぺにマヨネーズがついてしまったので、濡らしたタオルで拭いてあげた。

ピクニック用のサンドイッチを、お弁当箱に入れたかったけど持ち合わせていないから、タッパーに入れてリュックに詰めた。

「また色々買いに行かないとだな。」

独り言をこぼす私の傍には、ごろうちゃんがわくわくした様子でサンドイッチをつまみ食いしていた。

あとがき
(今回からあとがきを書くことにしました。)

なかなか更新できず、長らくお待たせしていたかもしれません。

残暑の季節に書き始めた「ちょっと変わった田舎暮らし、はじめます。」ですが、図らずもあと少しでお花見の季節かなという時期に作中でもお花見に行くことに決まったわけです。

まあ、更新ペースが遅かっただけの話ですが。
ちょうどこれからの季節なので、たくさんのお話を書いていこうと思います。

ほかの作品も投稿する予定なのですが、「このシリーズがお気に入り!」という方は、マガジン「ちょっと変わった田舎暮らし、はじめます。」をフォローいただくと更新されたらすぐに読むことができますよ!

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梔子。


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