見出し画像

神聖かまってちゃん ”きっと良くなるさ”

「ロックとは何か」という問い、ロックファンにとっては普遍的なテーマだ。音だけみたらポップスもロックもそんなに変わらない(サウンドは全然違う)。
じゃあ何を持ってロックで、何を持ってポップスなのか? 僕は歌詞が違うと思っている。ざっくり分類するとポップスの歌詞は、「〜が良かった」というようなポジティブで肯定的な表現で、一方のロックは「〜が良くない」という否定的な表現だ。単純に考えるなら、ポップスがポジティブでロックがネガティブなら、明るく元気なポップスの方がいいじゃないか、と思うかもしれない。でもロックはポップス以上の強度のポジティブさを持っているのだ。
何故か? それは「〜が良くない」という否定をしたうえで、その否定を含めた全体を肯定してるからだ。「〜が良くない」と嘆きつつも、その嘆きを抱えた人生に対して立ち向かうぞ!というファイティングポーズを示すことで、悩ましい人生を肯定しているからだ。これが僕のロック観だ。

そんな僕のロック観にぴったりと当てはまるロックソングが最近リリースされた。神聖かまってちゃん のニューアルバム『夏.インストール』の1曲目の”きっと良くなるさ”だ。

「彼女がいて 結婚して 人並みに金稼いで 理想の自分は消えた」

この曲は、マニュアル通りのつまらない人生・人生が理想から離れたこと、それに対して愚痴っている。ネガティブに現状を否定しているところは、しっかりロックしているなと思う。ただ、この曲はここでは終わらない。さんざん愚痴ったうえで、最後はこの言葉の繰り返しで終わる。

「うまくいかない事もあるさ人生 全部きっと良くなるさ yeahyeahyeah!」

どうしようもなくポジティブな言葉だ。うまくいかない人生を愚痴りながら、最後はそれも含めた人生をポジティブに捉えて前を向く。激しく否定するけどそれも人生だ、と現実に向かっていくところは、ロックの最大の武器だと思う。
神聖かまってちゃん がこの曲を作ってくれたことが、ロックファンとしてとても嬉しい。


#ロック
#音楽
#コラム
#エッセイ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?