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量販店とはどう付き合う?   その④ー最終

 △△商事さんの帳合いという形で、スーパーへの販路の骨格が出来ました。あとは肉付けをして望ましい形に近づけられればいいのです。

 大事な決め事   価格  です。

“価格” 生産者にも販売者にも消費者にも重要な要素であり、価格によって取引が増える事も無くなる事もあります。
 消費者は安いに越したことはありません。
 生産者は高い値段で出荷したい
 販売者はというと、高過ぎたら売れないし、安ければ売れはするけど、安すぎると単価が上がらず売上は下がることもあるので、妥当なところがいいのです。
 今回のようなケースでのポイント

①生産者の手取り価格が妥当か。

 私は小松菜1袋100円は欲しいとします。
△△商事の帳合い手数料と利益分と鈴木バイヤーさんの会社との取引手数料(この中身は企業毎に幅があります)などが上乗せされ、店舗の届く値段は125円になったとします。
 ここに今度は店舗の利益が乗ります、平均的には20%なので、そうすると消費者が買う値段は158円になるのです。
 小松菜1袋158円、まあ妥当な価格でしょうか。
 仮に私が、小松菜1袋 200円欲しい。としたら、この話は無かった事で。となるでしょう。

②相場変動時の対応

結論は『私は何もしない』です。

 相場の暴落時と暴騰時にこの100円を変えるのか、変えないのか。ここで結構揉めます。
 まず、相場暴落時。小松菜などの施設栽培も多い品目は、天候による相場暴落の嵐に巻き込まれる事があります。
 ずーっと天気良くて、温度も高くて、台風も一回も来ない、全国の産地で豊作です。こんな時一時的に小松菜1袋30円!なんて相場になったりします。たまに見ませんか?スーパーで小松菜58円で売ってたりする事。
 こんな時私の小松菜も「相場が30円だから少し安くしてよ」って要請されてそれに応えるのか、あるいは相場がいくらでも100円のまま突っ張るのか。
 このような相場変動にいちいち対応してたら仕事になりません。
私は100円であれば経営が継続出来ると判断したのだから100円でいいのです。相場が安いから安くするなら逆もしかり、相場が上がったら今度はこっちから「上げてよー」って要請しなければなりません。買う側から「相場上がったから値段上げましょうか?」なんて聞いてくる事は稀です。
 生産者の手取り価格は一定でいいのです。

 一方でお店の状況ですが、私の小松菜を販売している店は、周りの八百屋さんや競合スーパーが58円で小松菜売ってるのに、100円も高い158円で売らざるを得ない。これでは店は『もうこの小松菜要らないな〜』ってなってしまいます。

 なので店舗に届く値段は、極端な相場の時だけ相場相応の値段に変更してもらうのです。
 この対応は、鈴木バイヤーさんと△△商事さんの仕事です。△△商事さんの出荷段階で価格を変えるか、スーパーさんの店舗への出庫価格を鈴木バイヤーさんが変えるのかはいずれにせよ、店舗には私の小松菜は50円くらいで届くのでストレス無く販売できます。
 当然相場暴騰時は逆になります。
この上げ下げの調整でプラマイ0にするわけです。

青果物のような相場変動が当たり前の業界では、このような価格調整は必要なのです。(まあ調整にも限界はありますが)

 数年前 台風が連チャンして、レタス598円とかほうれん草398円とかニュースでも話題になった事ありましたよね、あの時って市場での取引価格はレタス1玉1000円とかあったのです。
 じゃあ 1000円で仕入れたから、店は1280円で売ってね。とはなりません、あまりにも非常識なので、ここは流通各社が限界まで調整して、レタス598円まで抑えたのです。で、限界突破した企業からレタスを売るのを休止したのです。
 これは非常に稀な例でしたが、調整機能は必要なのです。

 私は100円で出荷する小松菜生産を続ける。
私の小松菜がその先でどんな価格で売られてても、それはその先の方々の仕事。と割り切ることです。

③決めた数量は必ず出荷する。

相場暴騰時にスケベ心を出してはダメです。
今相場高いから市場出しすれば小松菜1袋150円になる、でも数が足らないから△△商事さんに出す分を削って市場に出しちゃえ。
 これをするとすぐにバレます。
△△商事さんは市場の仲卸さんです、毎日市場に出荷された商品は見てます。そこで私の小松菜を見かければ、「あーなるほどね〜」となり、鈴木バイヤーさんに「モモちゃん小松菜なんだけど、ウチへ出す量は欠品してたけど、市場に出てたから1袋50円腹切って、御社の発注数は揃えました。」となってジ・エンド
 青果物業界は狭いです。すけべ心はすぐしっぺ返しが来ます。

④本末転倒になる考え方 

小松菜1袋100円で私は鈴木バイヤーさんのスーパーへ出荷してます。でも今年1年の小松菜市場平均価格は120円でした。直売所でも198円という値段が主流でした。これではスーパーに出さずに直売所に出してた方が儲かったのでは?なんて考えは本末転倒です。
 そもそも直売所だけでは供給過剰だったからスーパーとの固定価格取引を始めたのです。
 一時の値段で得した、損したと考えては先へ進めません。

 販路は複数確保して、その比率を変えて利益のバランス最適を探る、今までは直売所と市場出荷だったのが、安定して100円で20ケース販売出来るスーパーとの取引が始まったのです。
 市場出荷と直売所は「ドブ相場」になれば手取りは減ります。そこにベースとなる売上の柱ができたのです。
 ベースを何割、相場を何割にすれば利益が上がるかを考えた方が建設的です。

恐らく数年後また近所の畑が空いて、生産面積が増える機会が来ます。その時はスーパーの出荷数量を増やせる可能性を得たので、こういった販路は持っておいて損はありません。
 高売りを期待せず、再生産価格で出荷量が掛け算出来る販路を確保する事で、生産量が増えても出口がまだまだあります、という状況が作れて安心して生産量を増やせます。

このテーマは以上です。

ここで挙げた意見は私個人のもので、いろいろな地域でいろいろな品目の生産者さんといろいろな取引方法をやってきて感じた事でございます。
決して正解ではありません。(誰も正解だなんて思ってね〜か)

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