鼻で笑われた話

脳内出血で入院して、出血した血液は次第に消えて運動神経も回復。
 1ヶ月後退院する前に、切れた血管はそのままなので、またいつか切れるかもしれない。でも開頭手術はできない場所なので、切れない事を祈って生きてくか、ガンマナイフで血管を除去するか。と、先生から話があったのです。
 オッサンだけどまだジジイじゃないし、出来れば爆弾を抱えて生きたくは無いので、そのガンマナイフ治療ってのを希望しました。
 当時はその治療法はまだ珍しかったらしく、県内で唯一治療が出来る病院に紹介状を書いてもらい、後日その病院に再入院しました。

 無知な私に先生が治療方法の説明をして下さいました。
 無知なのでよく分からないのですが、頭に装着を取り付けて、患部を特定し、ガンマ線を照射するとの事、ガンマ線?装置を頭に?
 先生が『こいつ何も理解してねーな』と感じたのか、「大丈夫です、全身麻酔しますので寝て起きたら終わってますよ」と言ってくれたので納得して翌朝を迎えました。

 血管造影の準備をし、ガンマナイフ治療室に入ると、先生、看護師さんの他に10人位の若者がいました。
 まだあまり行ってない治療法なので、医学生達の見学です。
 そこでまた先生の説明です。
 「まずこの装置を取り付けます。」って装置が巨大な鉄の塊で、イボイボの先に配線されてて、昔シュワちゃんの映画にあった『意識だけ時空を転移できる装置』みたいなゴツさなのです。
 「先生 これどうやって頭に固定するんですか?」
 「ボルトで固定します」
くだらない事聞くな、位の返答です。
ボルトってあなた…
 着々と準備が進み、いよいよ麻酔してボルトで固定する段階で、先生が
「では麻酔しますが、何か質問あります?」
と聞かれたので、質問は無いけど恐れを隠す為に
「立派にモルモットを演じてきます。」って言ったら全員スルーで、学生さんが一人だけ
 「フン」って鼻で笑いました。

おしまい

 

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