見出し画像

サックスの上達法⑴

なぜサックスについての記事を書くのか

前回の「具体」と「抽象」という記事から一転、関連性があるとはいえ、どうしてサックスについての記事を書くのか。
私は10年間サックスという楽器を吹いてきたが、これまでの短い人生の中でも、圧倒的にサックスの経験がその多くを占めている。
サックスについて、色んなことを教わり、色んなことを考えてきた。
実体験から一番多くを語ることができて、一番自分らしい話ができるのは、やっぱりサックス以外ないだろうと思い、この記事を書かせて頂いている。
ただ、サックス以外にも活かせることであることは間違いない。
音楽は人生の色んな教訓を教えてくれる。

そして、この記事が、困っているサックスプレイヤーの助けになったら、そんな嬉しいことはない。
ただ、これはどんなことでも当てはまるが、この記事に書くことは、実際に行ってみないと意味がない。

サックスが上手くなるためには

では、サックスが上手くなるためにはどうすればいいだろうか。
もちろん、練習が必要である。これは言うまでもない。
でも、これもお分かりだと思うが、ただ練習すればいいと言うわけではない。
そこでまず必要となってくるのが、「具体化」と「抽象化」である。
「具体」と「抽象」については、前のnoteを見て頂きたい。

サックスの奏法における具体例

では、サックスにおける「具体」と「抽象」は何か。
例えば、「もっと優しい音で吹いて」これはとても抽象的なイメージと言える。楽器によっても人によっても「優しさ」はバラバラである。ではその抽象的な「優しい音で」を達成するために具体的に何をするのか。
リスト化してみよう。ここには、これまでレッスンで受けてきたような具体的な奏法の改善策も示す。特に重要なものは強調した。

具体例:
ブレスのスピードは素早くせず、ゆっくりと深く吸う
・重心を下げる
お腹の支えをきちんと作る
・喉をリラックスさせる
・発音時のタンギングは優しく離す
・タンギングした後の舌のポジションは少し後ろ
・舌の角度を少し縦方向にする
・指のタッチは柔らかく
・音を抜かない
お腹の圧力を保つ
・姿勢は前傾5°
・腰を固めない
・足がしっかりと地面とくっつき、支え合っている
・高音であれば頭の上から裏声を出すようなイメージで
・体をホールのように響かせて
・鼻腔、耳腔も響かせるようなイメージ
・目線は下げない
・アンブシュアを噛まない
奥歯を5mm開けて顎をリラックスさせる
硬口蓋を緩ませる
・音を前に出すのではなく、垂直方向に出すイメージ
・優しい音色のイメージを持つ
・どこに音を繋げるか考える
・大きなフレーズ感をイメージする

これらは一例であって、もちろん個人個人で差があることであり、必ずしも正解ではない。
また求められる優しさも、曲の場面によって変わる。そしてこの具体例の中にも抽象的概念がたくさん含まれている。
ただ、これが、「優しい音で吹く」という動作を抽象的なものを具体的な細分化した状態である。厳密には、ただ具体化したものと、一度抽象化してから具体化したものが混ざっている。
具体例の最後に出てきた「大きなフレーズ感」、フレーズを長く歌うとも言い換えられるが、これを図解化するなら以下のようにできる。これは「優しい音で」という単音の次元からより高いレイヤー、抽象度の次元の話になる。

画像1


このように抽象的に求められた言葉を、具体的な行動に落とし込むことで実現が可能となる。

サックスの奏法における抽象化

ではサックスにおいて抽象化とは何か。それは1つに、上手く行かない根本原因を探ることに当たる。
先ほど、「優しい音を出す」ための具体例を沢山挙げたが、これには連関している部分があったり、グループ分けできる部分があったりする。
例えば、「ブレスのスピードは素早くせず、ゆっくりと深く吸う」ことによって、自然と「喉をリラックスさせる」「重心を下げる」などの行為が達成されたりする。他のものと連関すると思われるのが、強調した要素になる。
色んなことを一度に意識するのは難しいが、抽象化されることで、意識すべき「本質」が見えてくる。その根本原因を治すことによって、色んな行為に作用が広がり、全体的に改善されていくのである。
まさにこの根本原因を探すというのがとても重要である。
音楽というのは、作り上げるのに時間を要するとともに、あまり十分な時間が取れる状況はなかったりする。そのような状況の中で、いかに効率的に改善していくか、これは重要な課題である。
根本にある原因、それを改善できれば一気に音楽がぐっと良くなる。指揮者の先生だったりプロの楽器奏者や先生がおっしゃる言葉はまさにこの根本、本質を突いているのである。だからこそその一言で、音楽がガラッと変わるのだ。

楽譜の読み方の抽象化

楽譜の読み方においても抽象化は大事になってくる。フレーズの中のある一つの音・曲中の1場面の中での1フレーズ・曲全体の中の1場面・オーケストラ(スコア)全体の中での1パートの楽譜というように、楽譜の中の1音1音は、より広く抽象的な単位の中でその役割を捉える必要がある。
木を見て森を見ず」ということわざがあるが、楽譜の中の1音1音を追うだけでは、その本質が見えてこない。
一体この音はどんなフレーズの中の音なのか、そしてこのフレーズは他のどんなフレーズと絡み合っているのか、といったように視野をより広く持っていくことがとても大事になる。

とは言えどのようにその抽象化をしていくのか、
「経験の積み重ね」これが大きいとは思うが、それについて、自分なりの見解を次の記事で述べたいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?