マガジンのカバー画像

《長編小説》Angel Doll

13
「超水道」加入以前に書いた作品をお蔵出し。冬の一週間を舞台に描かれる、人と人形のお話。全10話。 ◆文:蜂八 憲 ◆絵・音楽:真島こころ http://flower-praye… もっと読む
運営しているクリエイター

2014年11月の記事一覧

act4 : Wed. Dec. 20th

act4 : Wed. Dec. 20th

◀第1話 act1 : Sun. Dec. 17th から読む

居間の空気を、暖房が緩やかに掻き回していた。
カーテンを開ければ、ガラス窓は結露した水滴にびっしりと覆われている。
手で表面をぬぐうと、ひんやりとした感触とともに明瞭な景色が現れた。
太陽はすでに高く昇り、さんさんと光を降らせている。

コーヒーを口に運びつつ、眼下の街並みを眺めてみる。
昨夜も雪が降ったらしい。
見渡す限りの家々は

もっとみる
act5 : Thu. Dec. 21th

act5 : Thu. Dec. 21th

◀第1話 act1 : Sun. Dec. 17th から読む

俺は、ほの暗い闇の中を走っていた。
前方には凛の背中があった。
こっちだよ、と笑い声が弾む。
二つの足音が重なりあい、遠く響いている。

どうやら、鬼ごっこらしい。
ずっとずっと前から、追いかけていたような気がする。
そろそろ交代させてやらなければ。
俺は力を振り絞り、ぐんと加速する。
じわじわと、凛との距離が縮まっていく。

……

もっとみる
act6 : Fri. Dec. 22th

act6 : Fri. Dec. 22th

◀第1話 act1 : Sun. Dec. 17th から読む

朝の電車はがらりと空いていた。時刻は早朝五時を過ぎたところ。
乗る時間をいつもより四時間も早めたのだから、
空いているのは当然だった。
乗客はみな、一様にくたびれた雰囲気をまといつつ、背をシートに預けていた。
それは俺にしても同じことで、慣れない早起きがたたったのか、
爽やかな朝とはお世辞にも言えやしない。
重力が何割か増したように

もっとみる
act7 : Sat. Dec. 23th

act7 : Sat. Dec. 23th

◀第1話 act1 : Sun. Dec. 17th から読む

目覚めると、目の前にリンの顔があった。
どうやら、そのまま寝込んでしまったらしい。
音を立てないように、そっと身を起こす。
ソファーにもたれる格好で、すやすやと寝息を立てるリン。
そのままの体勢で寝ていれば、首や肩を痛めてしまうだろう。
俺はリンの背中を、ゆっくりと後ろに倒した。
背中に右手を当て、左手を膝の下に差し入れてそっと持ち

もっとみる