宮森 ぱん

ROM専門でしたが、NaNoWriMo 2016 の参加をきっかけに小説を書き始めまし…

宮森 ぱん

ROM専門でしたが、NaNoWriMo 2016 の参加をきっかけに小説を書き始めました。 第三者の目線で読むとてんでなっていなくて、読んでくださる方に申し訳ないなぁと感じつつも、頭の中の情景に文字で輪郭を付けていく作業はとても楽しいです。

マガジン

  • 相対性 伝言ゲーム

    ひとつの物語が、時間や人を介することで、だんだん変化していく様子を見ていきます。

  • 50s フィフティーズ

    地方都市に住む50代独身男性が綴る2017年9月中旬8日間のモノローグ。浮かび上がるのは、半世紀の社会の変遷と終わりの始まり──。  ◆毎週金曜夜更新の予定でしたが、数週間、数カ月と間隔があき、結局最終話が公開できないまま今に至ります。(2020年1月記) ◆登場人物名はリアル知人をヒントにしてますが、語感を拝借しただけでキャラとは関連していません。「もしかしてこれって俺?」って思った方、私のあなた評=そのキャラ像ではありませんので、どうか誤解なきようお願いします。(2020年6月記)

最近の記事

相対性伝言ゲーム #1④・マコト

●マコト/16歳/平日の午後/先輩と喫茶店で/報告 先輩、見てきたっすよ。ノリオんち。 新聞記者とかテレビカメラとかたんまり来てて、えらい騒ぎだったっす。あと、オレみたいな野次馬が山ほどいて。 マッポが家を取り囲んだり、交通整理してたっす。そいつらが家に出入りするたびに中が少し見えて、家の奥に……血の海を見ちまったっす。 そっす、ノリオはオレと同じ中学っす。いや、クラスは違ったんで、たいして親しくないっす。アイツはオレとおんなじ中卒で、でも、ズッコケて高校行けないオレとは

    • 相対性伝言ゲーム #1③・タイガ

      ●タイガ/11歳/深夜/友だちと宿泊研修の宿で/怪談 オレ、この話、ばあちゃんから聞いたから、これホント、ガチ。 昔、五寒森林公園は今よりもっと小さくて、公園のまわりは畑ばっかりだったんだ。昭和時代だよ、昭和。令和の前の前だよ。大昔。 その畑が少しずつ家になって、土地が広いから庭付きの豪邸ばっかりで、子どもだったばあちゃんはうらやましかったんだって。 その中の1軒に、4人家族が住んでた。両親と子ども2人、兄と妹。親は金持ちだったけど、父親の体罰がひどくて、特に跡継ぎの兄に

      • 相対性伝言ゲーム #1②・マキ

        ●マキ/58歳/平日午後/入院患者と病棟で/接遇 はい、じゃ、サトウさん、床頭台の上がちょっと散らかってるから片付けさせてくださいねー。 うん、いいのいいの、寝てて。わたしが全部やりますから。 何を食べてるの? この香りはラムネかな? ラムネ菓子好きですか? うちの孫も好きなんですよ。 ちっちゃい時は「仮面ライダーのラムネはあるのに、ウルトラマンのがない」って文句言ってました。ウルトラマンが好きなんですよ、うちの孫。娘がウルトラマンタイガの俳優さんが好きで、息子にタイガっ

        • 相対性伝言ゲーム #1①・アケミ

          ●アケミ/14歳/放課後/友だちとマクドナルドで/雑談 ねえ、覚えてる? うちのおばあちゃんの部屋に、パパの会社にいた男の人が住んでるって話。あの人、先週急にいなくなっちゃったんよ。 あれ? マキは知らなかった? やだ、好きとかじゃないよ。だって、フツーのおじさんだよ? その人、パパの会社で働いてて、1年くらい前に辞めたらしいんだけど、先月の夜にいきなりうちに来てさ。「おみやげです」とか言って、パパにはお酒、ママにはエプロン、あたしと妹にはバッグをくれたの。 ママがパパ

        相対性伝言ゲーム #1④・マコト

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        • 相対性 伝言ゲーム
          4本
        • 50s フィフティーズ
          20本

        記事

          初参加のNaNoWriMoで書いたものを、推敲しながらnoteにアップし始めたのがちょうど3年前の1月9日。最終話が二転三転、四分五裂、七転八倒でまとまらず今に至ります。自ら課した「次作はこれをきちんと終えてから」は白紙に戻し、もっとおおらかに書くことを楽しむことにします。

          初参加のNaNoWriMoで書いたものを、推敲しながらnoteにアップし始めたのがちょうど3年前の1月9日。最終話が二転三転、四分五裂、七転八倒でまとまらず今に至ります。自ら課した「次作はこれをきちんと終えてから」は白紙に戻し、もっとおおらかに書くことを楽しむことにします。

          50s フィフティーズ 〈第20話〉 自分で決めるゴール

          ■9月第4土曜 ③ 18:00 橋本家で夕食(中止) 18:30 エントランスで橋本夫妻と待ち合わせ 19:00 木下さん母、お通夜  缶ビールを飲み干してひと心地ついたので、仕事部屋の横にあるウォークインクローゼットまで行って部屋着に着替えた。たぶんまた何年も着ないであろうスーツは冷や汗をたくさん吸い込んだのでクリーニングに出そう。 そう思いながらデスクの前を通り過ぎようとして、書きかけのエンディングノートを出しっぱなしにしていたことを思い出した。  そういえば、購入前

          50s フィフティーズ 〈第20話〉 自分で決めるゴール

          50s フィフティーズ 〈第19話〉 尊厳死

          ■9月第4土曜 ② 18:00 橋本家で夕食(中止) 18:30 エントランスで橋本夫妻と待ち合わせ 19:00 木下さん母、お通夜  木下さんのところに思いのほか長居してしまい、帰宅したら11時を過ぎていた。玄関からすぐ冷蔵庫前に直行し、取り出した缶ビールを手にソファに座った。まずビールをひとくち飲み、心身をずっと覆っていた、居心地の悪さに由来する緊張感を脱ぎ捨てる。背広を脱ぎ、黒のネクタイを緩めて、ようやく日常に戻れた気がした。  木下さんの母親の葬儀は、50年生きて

          50s フィフティーズ 〈第19話〉 尊厳死

          50s フィフティーズ 〈第18話〉 エンディングノート

          ■9月第4土曜 ① 18:00 橋本家で夕食  朝7時57分。わたしは本屋の前で開店を待っている。わたしは本屋と呼ぶが、書籍や文房具、新品・中古ゲームの販売、DVDレンタルまで扱っている複合店舗だ。駅前に位置していることから通勤・通学客をターゲットに朝は8時から営業するので、あと3分で開店する。店が開く前から待つなんて、小学性のころ親に連れられてデパートで初売りの福袋を買うため早朝に並んだ時以来だ。  家を出た時は近所のコンビニに行くつもりだったが、外を歩いてみると快晴の

          50s フィフティーズ 〈第18話〉 エンディングノート

          50s フィフティーズ 〈第17話〉 率直は誠実の裏返し

          ■9月第4金曜 ③ 20:00 蓮くんのおかあさん、来訪  午後8時ぴったりにドアホンが鳴った。 「こんばんは。散らかってますけど、どうぞ」  そう言って蓮くんとその母親を我が家に招き入れる。言い訳ではない。わたしはあえて部屋をいつもの乱雑なままにしておいた。蓮くんの母親に、わたしとわたしの家を判断する材料を提供したかったのだ。  蓮くんと目が合った。ずるい顔をしている。わたしは蓮くんが企てる悪だくみの共犯者になった気分だった。正論ビームを吐くだけで面白みのないママゴンの

          50s フィフティーズ 〈第17話〉 率直は誠実の裏返し

          50s フィフティーズ 〈第16話〉 不謹慎な発想

          ■9月第4金曜 ② 予定なし  この国から逃げてどこかへ行くという選択肢が午前中にぽんと頭に浮かび、なんとなく高揚感でムズムズしてきたので、仕事を放り出して木下さんのトランクに入れた旅袋を漁っていたら昼になった。スマホの時報アプリは、夢見る中年を現実に連れ戻すのになかなか役に立つ。 「どのまちも行ったとして滞在するのは簡単だけど、死ぬまで居れるかってなると結局は金次第なんだよな……」  ひとりごちてから、ひらめいた。わたしの仕事は場所に依存しないのだから、レギュラーの客を

          50s フィフティーズ 〈第16話〉 不謹慎な発想

          50s フィフティーズ 〈第15話〉 あやつられる思想

          ■9月第4金曜 ① 予定なし  今日はアポこそないが急いでやらなければならない仕事があり、成田さんの会社に出勤していたときと同じ朝のルーティンをこなしている。まずは地上波テレビの番組を流しっぱなしにする。画面上で時間表示が大きいのと、番組の進行具合で時間経過が耳でもわかるので、朝の番組は時計代わりにもってこいだからだ。 そのおかげで、世の中は与党の衆議院議員が覚せい剤所持で捕まったニュースで持ちきりだということが分かった。たいして興味がないからチャンネルを変えてみても、ど

          50s フィフティーズ 〈第15話〉 あやつられる思想

          50s フィフティーズ 〈第14話〉 ビジネスはカルト風味

          ■9月第3木曜 ③ 10:00 安斉さんと打ち合わせ(skype) 11:00 歯医者 (追加) 17:30 新規の打ち合わせ?(カフェメルロード)  深山さんと約束した時間より、少し早く店に着けるように家を出る。どこからか焼き魚のにおいが漂ってくる。まだ5時すぎなのに、こんな早く夕食をとる家庭もあるのだな。  旭町教会を通り越し、昼間通ったスクールゾーンに入る。 「ティーチ……?」  昼間、前歯のない笑顔を見た蓮くんとその友だちが同時にその名を口にした。たぶんアニメかマ

          50s フィフティーズ 〈第14話〉 ビジネスはカルト風味

          50s フィフティーズ 〈第13話〉 のびる極小ネットワーク

          ■9月第3木曜 ② 10:00 安斉さんと打ち合わせ(skype) 11:00 歯医者  前歯がなくて恥ずかしいので、歯医者の帰りにコンビニでマスクを買う。最近は夏でもインフルエンザになる人がいたりして、マスクをしている人には一年を通して日常的に接する。15年くらい前なら、とてもひどい風邪をひいているのか、コンビニ強盗でも企んでいるのか、いずれにしろちょっと身構える対象だった。それが今では、旅行から帰ってきた時に「あぁ、日本に帰ってきた」と思うくらいに見慣れた風景の一部とな

          50s フィフティーズ 〈第13話〉 のびる極小ネットワーク

          50s フィフティーズ 〈第12話〉 初老の足音

          ■9月第3木曜 ① 10:00 安斉さんと打ち合わせ(skype) 11:00 歯医者  今朝は10時から安斉さんとのskype面談があったので、9時前に起きて過去に提出した自分の職務経歴書などの更新作業をした。ITエンジニア専門のエージェント会社に勤めていた安斉さんは最近同じ業種で独立したそうで、自分のところにも登録してほしいと先週メールが来て、今日の面談となった。  安斉さんが元いたエージェントにわたしがエントリーしたのは10年くらい前だったろうか。skype面談

          50s フィフティーズ 〈第12話〉 初老の足音

          50s フィフティーズ 〈第11話〉 子どものリアル

          ■9月第3水曜 ③ 予定なし  ネットで銀行口座の残高を確認したり振り込みをしたり、請求書を書いたり、確定申告に使う帳簿の伝票をまとめたりしているうちに昼になり、朝昼兼用の食事でようやくバーベキューの残り物をすべて食べ切った。月曜夜と火曜夜に食べたがわずかに残ったので、冷蔵庫にあった中途半端な食材と併せて平らげた。ずいぶんかかったな。来年はまた大石が辞退するだろうから、今度こそ事前に和代さんに言っていい加減食材の量を減らしてもらおう。わたしたちはもうガンガン食える年ごろ

          50s フィフティーズ 〈第11話〉 子どものリアル

          50s フィフティーズ 〈第10話〉 外れ者の家計術

          ■9月第3水曜 ② 予定なし  見積もりを依頼された案件は、このまちと隣町に計2校を持つ個人経営の英語教室のサイトだった。現在、経営者の日本人女性がたまに更新するブログしかなく、新規生徒の集客と既存生徒の退会予防のためにサイトをつくりたいらしい。  その経営者の個人ブログのURLが参考資料として書き添えられていたので見てみた。広告付きの無料ブログに最近買った英語に関するグッズや生徒からもらったおみやげの写真がひとこと添えてアップされているような、実に個人的な内容のもの

          50s フィフティーズ 〈第10話〉 外れ者の家計術