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綴る

私たちの生活の中で起こる諍いのその根底にあるものは、きっとものすごく単純で幼稚なものであるに違いない。世界を救うのはいつだって難しい。


「結局、自己満足でしかないんだ」
窓の向こうを見ながら男は呟いた。
放たれた言葉はひどく無機質で、表情は見えない。


探し物はここにあるのに。
貴女と出会ってから、なぜだか目が離せなかった。

今日はやけにあいつが絡んでくる。
暇なのだろうか。
そこまで心配されるほどの価値が私にあるとは思えないがそれでもあいつはやけに突っかかってくる。
あの頃とは大違いだなあ、ほんと。
「私は人の役に立てるなら喜んで社会に貢献しますよ」
その言葉に偽りはない。
けれど言っておきながら自分でも思う。
まったく馬鹿真面目だと。


薄暗くて、冷たい路地。
表の通りは馬鹿みたいに五月蝿い。
視界も霞がかかってよく見えなくなりそうだった。
だから取り敢えず笑った。
心の溝はまだ埋まりそうになくて、これ以上踏み出せばまた壊れそうで。
罅が入っていく様だった。
同じような日々を繰り返していくのが億劫になる。


この人はたまに
全て理解っているのでは無いかと思う。
目を瞑って黙っていれば美形の類なのに
喋れば少し鼻につく。
上から目線というかなんというべきか。
だが何故だかこの人の存在が気になって仕方ない。

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