編集者が”編集”以外で活躍するようになった背景を考える〜Part1. BtoCビジネス

こんにちは、なんばです。

連休に外出もままならないと、息子どものエネルギー発散先が家財道具に行ってしまうので恐ろしいですね…。ふすまがボロボロになりました。。

さて、今回はクイズからはじめたいと思います。以下に並べている雑誌には、ある共通点があります。その共通することとはは一体何でしょうか?

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どれもファッション誌ですが、ジャンルもターゲット年齢・性別もバラバラです。ちなみに出版元の出版社も違います。


正解は・・・

直近3年以内に、元編集長が事業会社に移籍をしている、でした!

「ん?どういうこと??」と思われるような気がしたので補足しますと…

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こんな感じです!元POPEYE編集長の木下さんが、ユニクロの執行役員になったことは、当時かなりニュースになっていたのでご存知かもしれませんが、実は他にも雑誌編集長経験者がクリエイティブディレクターになったり、社長になったりして大活躍されています。

ちなみに元GINZA編集長の中嶋さんには、最近弊社でインタビューしたのでぜひ合わせて御覧ください!(個人的に、中嶋さんが編集長されていたころのGINZAは、チャレンジ企画が多くて大好きでした) ↓↓↓

またここで挙げた方以外でも、アパレル業界やコスメ業界では編集経験のある方が多数ご活躍されていて、マーケティングや商品開発に携わっている例が結構あります。

そこで今回は、なぜ編集者が事業会社(おもにBtoC)のビジネスに求められるようになってきているのかを考えてみたいと思います。

Point1.メーカー・小売業界のDX化

今流行り言葉になりつつある「DX」。Netflixなどのサブスクリプションサービスや、Uberのような売り手と買い手のマッチングプラットフォームなど、既存業界をディスラプトするような企業が例として挙げられがちです。ですが、実は既存産業の事業モデルにも大きく影響を及ぼしつつあります。それは、顧客のサービス満足度を高めて何度も利用し続けてもらう、「LTV(Life Time Value)最大化」の考え方です。

今やどの業界でも顧客データの収集は当然のように行われ、最近では店舗などのリアルな接点と、オンラインショップやアプリなどのオンラインの接点を横断して分析することが多くなっています。一人のお客さんが、どこでブランドに触れ、結果いつ何を買ってくれたのかが集計できるようになり、それをどうしたら最大化できるのかを企業は見ています。そして1回限りのお付き合いではなく、ずっと利用してくれるほうが、企業にとっては利益をもたらしてくれるお客さんなので、ありがたいですよね。そのためにはお客さんに毎回満足してもらって、「また買おう」と思ってもらえるように、企業側は努力しなければなりません。

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そこで、お客さんとの接点を俯瞰して見て、すべての接点でお客さんが満足してくれる「ブランド体験」を提供できるかどうかがとても重要です。でも、そのためには、商品やサービスの中身だけ良くすればいいのではありません。オンラインストアのビジュアルやそこでの購入体験、広告で届く情報、お店の雰囲気や店員さんのトークなどなど、すべてがブランドを形づくるものになり、統一した世界観や人格をもっていなければ、どこかで破綻してお客さんは冷めてしまいます。

そこで求められるのが「編集の力」なんです。全体の顧客接点を俯瞰してみたときに商品ラインナップはどうあるべきか、どこで何が提供するのがよいのか、様々な可能性から取捨選択しながら組み上げて、一つの統一された世界観に収斂させていってくれます。まさに、クリエイティブ・ディレクターとして活躍されている方々は、このようなお仕事をされているんだと思います。

ただし、この役割を担うためには編集のスキルだけではなく、ビジネス感覚がないとつとまりません。顧客目線だけではなく、ビジネスとして成功できるかどうかとのバランスを取る必要があるので、雑誌の売上責任を持っていた編集長経験者でないと難しいのだと思います。

Point2.DX化によって急増した制作物の内製化とコントロール

1にも関連しますが、お客さんとの接点ごとに「ブランド体験」を提供できるようにするには、情報もたくさん求められるようになります。特にデジタルでは、自社のオンラインストアの中で発信する情報と、オウンドメディアで発信する情報を変えたり、SNSもプラットフォームごとに中身を分ける必要が出てくるので、制作するだけでも大変です。しかもオンラインストアの中で、お店での購入体験と同じくらいのブランド体験を求められると、ライブ配信を企画したり、VRコンテンツを用意したり…。キリがありません。

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従来は、広告とシーズンビジュアルやカタログなど作っておけばよかったところが、これだけ制作物が増えると、外注するより社内で制作できる体制を作ったほうがスピーディーだし効率もよいですよね。そこで制作チームを内製化するために、編集者がマーケティングチームに入るケースが増えています。

制作には、カメラマンやスタイリスト、モデルのアサインや、ときには著名なタレントをキャスティングしたりと、編集者の人脈を活かしたチームづくりが求められます。メディア経験のある編集者が入ることによって、メディアに頼らずにチーム組成ができるようになります。また、企画編集担当として企画のアイデアを出したり、制作進行のディレクションやクオリティのコントロールも必要になるので、マーケティング活動の中での編集者が求められるスキルはとても幅広いです。


BtoC向けのビジネスでは、この2つの理由から編集者が事業会社に求められて転職していることが多いように思います。特にファッションやコスメの会社では、対面販売が厳しくなった中オンライン投資が進み、雑誌と遜色ないオウンドメディアを自社で制作したり、購入の付加価値づくりにチャレンジしたりする企業が増え、ますます編集のニーズが高まってくると思います。

また今回はBtoC向けビジネスで考察しましたが、BtoB向けビジネスやスタートアップ企業のビジネススケール拡大にも編集者が関わっているケースが増えてきています。次回はBtoB向けビジネスで活躍されている編集者について考察してみたいと思います!

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