見出し画像

「一介のエンジニアが大手カード会社とアライアンス」からのBizDevとしての成長記録

8年くらい前に書いたバンドルカードの前の事業、Card Linked Offerをはじめるまでの軌跡をまとめた記事がこちらです。当時28歳。エンジニアしかやったことない状態から、大手カード会社と提携するまでをまとめたものです。

そして、今月で36歳となり(6の自乗ですね)、ここから8年経過しました。当時は自分含めて従業員は3人くらいで、自分でもコードを書かないと回らない状況。ビジネスとしてはプロダクトをリリースしたばかりで、売上もほぼない。とは言え、カード会社も1社だけではスケールしなくて、2社目、3社目と提携して、カード業界の中でのポジションも築きたい。なお、Offerを提供してくださる加盟店=広告主も広げないといけない。そんな中、Biz職は自分一人で、一人で同時に複数のベクトルを展開しないといけない状態でした。

それが今は、従業員も35名程度になり、新しいプロダクトのバンドルカードにピボットし、その事業も他の人に任せられつつあり、自分は新規事業やビジョン・戦略作りに時間を使えるようになっています。自分自身の変化よりも、環境の変化が多分にある実感があるのですが、その前提の上で、自分の考えがどう変化したのか?変わらない点はどこか?をBizDevとしてのキャリア観点で記録しておこうと思います。

一応、エンジニアで起業したての人、これから起業する人、といったエンジニア社長が8年経つとどうなるか?というニッチなテーマに興味がある人にも参考になれば幸いです。

①開発タスクをやってない

なぜか?社長だから。

というと端折りすぎなんですが、当時は提案のためのデモ開発も自分でやったし、実際、プロダクション、特にフロントは自分で書いてましたが、このプロダクトが2年目に入ってから自分で書かなくなりました。それは優秀なエンジニア達が入社してくれたから、というのが一番大きい。

また、社長が最もレバレッジが利くのはBizDevだとも考えました。もちろん、事業内容や社長の特性にも依存するわけですが、アライアンスによる非線形の成長を一番効率的にできるのは社長。というのも、アライアンスにおいて肩書は大事。基本的にアライアンスしてメリットがある場合って、相手の方が立場が上(規模が大きい、その市場で強い)であることがほとんどで、そういうケースではトップをちゃんと握るということが重要です。10Xのyamottyもそう言ってました。

その場合、こちらもトップであったほうが確実に提案、交渉がしやすい。社長以外の肩書でBizDevをやったことないので検証はしてないのですが、No肩書よりもまず会える確率は高いし、メッセージが伝わる確率も高いと感じます。創業ストーリーがそのまま口説き文句になるし、その場で決めたことが会社の決めたことになります。だから、営業やBizDevの人は肩書にこだわるんだな、と合点がいきました。責任を持った人のほうが、明確にBizDevとして強いと思います。

とは言え、小さい会社の社長というのは、必要な事はすべてやるというスタンスになりますよね。バンドルカードのリリース時も、メール問い合わせを自分一人でやってましたし。なので、BizDevがレバレッジ利くと思うようになったのも結果論ではあります。一介のエンジニアである自分が、BizDevになるに当たって一番苦労したことは、自信を持ってしゃべる、ですかねw

交渉・提案において最も重要だと思うのは、提案する側の自信だと思います。提案している側が、不安に思いながらしゃべってると、提案される側も不安に思いますよね。ただ実際のところ、提案内容もやってみないと良いか悪いか判断できない側面もありますし、そもそも提案活動自体やり慣れていないので、今思うと恐る恐るしゃべっていた気はします。どこで変わったかというと、慣れももちろんありますが、良い結果になるか悪い結果になるか分からないけど、少なくとも良い結果を導けるよう全力で努力します、という覚悟を乗せてしゃべれるようになったと思います。事業の進捗のおかげというよりも、実際、全力で努力した、という経験が蓄積されて自信になりました。

もちろんアライアンス以外にもBizDevの手法はあります。いずれにせよ、大きく非線形に事業を伸ばせることを考える・実行する部分に身を置いたほうが、自分がコードを書くよりも何十倍もレバレッジが利くと考えています。あと、社長はコードを書いてはいけない、という話でもないです。あくまで事業特性と個人の特性次第で、自分の場合はBizDevがもっともレバ効くな、と思っているという。

②組織や会社の力学がわかるようになった

他社に提案からのクロージングまでを何回もこなすと、キーマンは誰か?提案がどこで止まりやすいか?何に困っていてどういうソリューションを求めているか?どうしたら有利なポジションで交渉できるのか?といったことがなんとなく分かってきます。

当時は "Facebookでカード会社で働いているっぽくて、新しいことに寛容そうな人、20人くらいにひたすらメッセージを送りました。" ということをしていましたが、今だったらターゲット企業の人事情報や、SNS、あるいは人づての情報から、その会社のキーマンが何となく分かるので、そこに最短で近づける道筋をたどると思います。

これはどうやって培うのかというと、、場数、でしかない気はします。ただ、営業やBizDev職としての提案を仕事にしていないと駄目かというと、そういうわけでもない気はしており、組織人の人と定期的に飲みに行く、あるいは、ある特定のプロジェクトに対してその組織の誰がどう対処しているかを、外から見て観察して勝手にPDCAを回してみる、とかでも見えてくるかもしれません。

自分の経験上、大企業の管理職の人と飲みに行くと勉強になります。自分は、社会に出てから自社含めてベンチャー企業でしか働いたことがなく、組織の力学なんて全く分からないところからのスタートではあったのですが、管理職の人と飲むと、経営層に対する愚痴や部下に対する想い、PJの進捗状況とそのボトルネック等が聞けるわけです。もちろんそのためだけではないですが、当時は、月に2, 3回はカード会社の人と飲みに行っていました。ここから、カード会社の組織力学がなんとなくつかめてきた気はします。

あと、この力学がわかると、国の力学もなんとなく分かってきます。どの省庁、政党が何をどうしたいと考えているのか?というのは概ねネットに落ちているので、そこからどういう法改正に向かうかざっくりとした方向性は見える気はします。そこから逆算して事業を作る、ということも可能になります。もちろん、1年単位で読むのは難しいですが、国としての優先順位を推測して、事業の優先順位を決めることは可能です。

例えば、最近話題のデジタル給与の話。これは2019年に首相官邸から出ている成長戦略フォローアップ案で、デジタル給与払いの解禁が明文化されており、解禁されること自体は確定、あとは時間の問題となったわけです。もちろん、検討を進めるにつれて課題が出てくるので、数年スパンの前後はありえますが、方向性としては確定した未来だと感じます。但し、色々な制約を加えられて骨抜きにされるパターンもあるので、要注意。

③人脈が広がった

実際、困った時に相談できる人は増えました。昔書いたみたいに、未知の課題を解決しようとする時の一歩目は格段にやりやすくなった気がします。既にその課題を解いている人が周りに複数いる状況(もちろんその分抱える課題の難易度も上がっている)。

では、何を通して広がったのか?

これも結果論でしかない気がしますね、、会社の注目度が上がって、何かの会(講演でも飲みでも)に呼ばれるケースが増えた事が大きい気がします。また、Twitterのフォロワーも増えました。多分、自分の発言の内容よりも、会社の注目度が寄与している部分が大きいはず。

ただ、今も昔もアウトプットをし続けることは意識しています。情報は情報があるところに集まるという実感がありまして、無名だけどカード会社を広げないといけない時は、今までに会ったカード会社の偉いっぽい人・キーマンに対して、一方的に決済関連のメルマガを送りつけていました。もちろん自分の考察込みで。その領域に詳しい人間と認識されると、ちょくちょく呼ばれるようになります。最近だと、WATARU会とかですね。もちろん、twitterもnoteも重要なアウトプットです。これは、当時と今で変わっていないことです。基本、オタクなんでしょうね。

なお、コツは人脈を広げようとしないことですかねw。そもそも人脈というワード自体が利己的に感じるわけで、その人が将来役に立つかもしれないから仲良くしようとすると、根本的には仲良くなれないです。分かっている人ほどそういう傾向がある気がします。ピュアに会ってて楽しい、面白いと思える人間関係が一番良い。もちろん、相手にも楽しい、面白いと思っていただけるよう振る舞いもします。

なお最近は、コロナもあって、受け身の機会ばかりになってきているのを課題として感じていて、もっと色々な業種・立場の人と会っていくべく、Podcastを始めました。ご興味あることは是非聞いてください。

④細かい調整タスクを人に任せられるようになった

優秀なBizDevマンが社内にいるので(@garciaan1994とか@tkmyaoとか)、自分が直接細かい調整をするようなこともなくなりつつあります。なので、一番抽象的、大上段のタスクだけやってればよいという状況になりました。ありがたい。とか)、自分が直接細かい調整をするようなこともなくなりつつあります。なので、一番抽象的、大上段のタスクだけやってればよいという状況になりました。ありがたい。

ただ、彼らのサポートをちゃんとしないといけないわけで、そこはまだまだ下手くそな気がしています。大きな方針を示す、やり取りしやすいように先方と進め方自体を握っておく、等は意識しているつもりなのですが、交渉・調整のマイクロマネジメントをしているような。もちろん、会社の趨勢を占う重要なアライアンスの場合は、ミスれないので自分が出ざるを得ない時もあるはありますが、前提や情報格差を埋めきれていない感覚があります。この部分、ただの反省文になってしまいました。

任せる、というのは本当に難しいですね。昔、インターンの子(pay.jpをBASEに売却したKKT)に、ただの丸投げと任せることは違う、と言われたことを強烈に覚えています。それ以降、徹底的な情報格差の是正、定期的なフィードバックは意識しているつもりではあるのですが、なかなか十分にできている実感がないですね!

昔は、丸投げでなんとかなっていたのだと思います。理由は、役割分担が明確だから。自分ができることは自分でやるし、自分ができないことはお願いする、という至極シンプルな関係性で、情報格差も生じにくかったから。ただ今は、週次のmtg体も増え、仕事上自分が直接関わらないチームも増え、逆に自分と役割の似たチームをマネジメントすることになり、自分がやったほうが早いと思える機会が増えたからな気がします。いわゆる「クソジーコ問題」ですね。

あと、任せるということは、非常に大きな恐怖を感じるものだとも思います。今まで自分で行っていたタスクを引き継ぐシーンにおいては特に問題ありませんが、未知度が高いものを任せる場合は、規模の大小問わず、怖い気がしています。要は、自分の求めるアウトプットと違うものが出てくることへの恐怖なんだとは思いつつも、それなら割とコミュニケーションとってコントロールが可能なので、そこまで怖いと思う理由がないように感じます。もっとこう、感情的なもの。自分より良い成果を他者が出してしまうのが怖い、とか、、でもない気がする。。。普通に、そういう成果ばかりだしな。

根本的な怖さの理由は模索中ですが、この恐怖を感じるゾーンの大きさが、経営者の器なのではないか?と感じております。あと、

「決して指摘が間違っているわけではなくても、指摘が多い・早い」

という事象自体は分かっている(つもり)なので、まだまだ道半ばではありますが、解決に向かっていると願いたい。

***

とまあ、こんな突破やら葛藤やらを8年間で味わってきたわけですが、おそらくこれからの8年も同様の経験をすることになると感じます。事業にも、チームにも恵まれた結果なんだと、pureに感じておりまして、今度は逆にこういう機会を他に人に提供してきたい。

という、ただの備忘からの、採用につなげたいわけです。BizDevに限らず、全方位で鋭意採用中ですので、ご興味ある方は是非ご覧ください。↓

***

クソジーコ問題について、ジーコは監督としてクソではなかった、という文献も発見しました。語呂が良すぎて、謎に一部の経営者間でミーム化してしまっていますが、新しいワードを提唱する頃合いなのかも知れない。

***

ヘッダの画像は、ベーシック・イン・カンムです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?