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セカンドステージ(修正版)



ギブアンドテイクの人生




 誰しも先のことは分からない。

いよいよ人生は後半戦へ。
あと残された時間は、どれくらいなんだろう。
人生なんてあっという間。

半世紀以上も生きてれば、人生山あり谷あり。
時にこんなはずじゃなかったなんて思うことも。
だけど良くも悪くもこれが、私の人生だから。

おひとりさまの私は一人で何でも決断してきた。
人から与えてもらうというより、人に与える方が
多い人生へと変貌を遂げた。

私はひとりっ子で育ったせいか、よく母からは
依存心が強いと言われたことがある。
ただ時は流れ、私も少しは成長をしてるはず。 
多少のことには動じなくなったし。
女も一人になると嫌でも強くなる。
そんなだから私は人に甘えられない。
でも残りの人生は『ギブ』から『テイク』へと
少しずつ変わっていけたら。

そういう私は訪問介護のヘルパーをしている。
まさに『ギブ』なんです(笑)

初めて介護業界に足を踏み入れた時、迷いや葛藤が
なかったかと言えば嘘になる。
介護の仕事は最後の砦くらいに考えていた。
そんな生意気な私もこの仕事を続けていく中で、
自分も人様のお役に立てていることが分かったし、自分のやり甲斐にも繋がっていることに気づいた。

「向いてると思いますよ亅

介護事業所の女性職員からそう声をかけてもらった
こともある。
それぞれの利用者様のご自宅を訪問するところから
我々の仕事は始まる。

「こんにちは、ヘルパーです」  

そんなふうに声かけしながら。
明るく、そう笑顔で現場入りする。
幸い私は好奇心旺盛な性格のおかげで、意外と物怖じしたことがない。 
人との交流も楽しいし、やっぱり自分はヘルパーに
向いてるのかな。たぶん。

「ありがとう」

利用者様からのこの一言は魔法の言葉。
私自身も癒されている。

介護職員初任者研修の資格を取るため、今の職場で働きながら学校に数カ月間通った。
コロナ禍の中で学校は制約もあり、人と人との密を避けながらの授業だった。
介護は実習のカリキュラムも多いから。
若い人たちに混じって私は年長の方だったけど。
楽しかったな。

こうして私なりにヘルパーの資格を取得してからは
諸先輩方の仲間入りを果たし、今に至っている。

「いいヘルパーになるから」

職場の女性職員から私はそう声をかけてもらって。
今も、その言葉が私を支えている。

 

ひと夏の私の体験



 昨年私は4ヶ月ほど仕事を休職した。
かねてから手の具合が悪く、このままだとヘルパー業務にも支障が出かねないと自己判断したから。
思い立ったが吉日というか行動力のある私は、近隣の整形外科を探して受診した。

私を診るなり院長先生は、
「手術をご希望ですか」と仰られた。
その時は即答はしなかったものの、数日後受診した際に私が手術を希望する旨を先生に伝えると、
先生はある病院を紹介して下さった。


 こうして紹介状を携えて私は紹介先の病院へ。
病院も、主治医の先生も、何もかもが初めて。
こうして私は整形外科で診察を受けることに。

主治医の男の先生が、
「手遅れじゃないから」と仰ってくださって。
その言葉に私は少しホッとした。

初診から数週間後に手術することになり、先生から手術の説明があるから次回家族に病院に来るように
告げられた。
家族と言えば私には一人息子がいる。
その肝心の息子には仕事が休めないと言われ、結局
私一人で先生の説明を聞くことになった。

よその患者さん方はご家族連れで来院してるのに。
それなのにウチは、まったく!!
先生に失礼なことをしてしまい、当時気まずい思い
をしたものだ。
もう大事な手術の前だってのに!
先生にどう思われただろう。
顔合わせづらくなる。
きっと心象を悪くしたんじゃ。
私、こう見えて小心者なんです(笑)

 過去に外科手術で粉瘤の手術をしたことがある。
まあ、そこまでの手術じゃなかったし。
でも今回は全身麻酔もするような外科手術だ。
ただ私が手術に踏み切ったのは手術の大変さより、手の痛みの方が勝ったから。
私は手以外にも膝の変形性関節症も患っている。
加齢でクッションの役割をする軟骨がすり減り、
骨と骨がダイレクトにぶつかって痛みが起こる。 
当時の私は早くこの痛みから解放されたくて。
手術までの日を落ち着かない思いで過ごしていた。

 そんな中運命の日がやって来る。
やはり『案ずるより産むが易し』だった。
全身麻酔は術後数時間麻酔が効いているため、私は病室のベッドで術着のまま横たわっていた。
主治医の先生、麻酔科医の先生、手術室の看護師の
方が入れ替わりに私の様子を見に来て下さった。
その時の私はといったら眠くて仕方なくて。
先生方の話も半ばうつらうつらしながら聞いてて。

このように病院関係者の皆様のお陰もあって、まず最初の手術は無事に終了した。

 私の病名はCM関節症といって親指の付け根にある
箇所に不具合が起こる。
閉経後の女性に多い疾患だ。
この手術をするのに自分の腰骨から自家骨を移植して、患部の親指に金具を入れて固定する。
こういう外科手術は私はしたことがなく、それこそ大変なことも多々あった。
何でもやってみないと分からない。

中でも金具との格闘には懲り懲りした私(汗)
出来ればもう二度とやりたくないと思うくらい。
先生が仰るにはもう少し長く金具を入れといた方が良かったらしいのだが、なんせ私の体がもう耐えられなくなってきてて。


ある時、あまりの痛さに私は先生に、
「もう取って下さい」と直談判したことがあった。
すると先生は、
「今、取ったら崩れちゃうから」と仰られて。
その時私は先生の言葉に納得するほかなかった。

それから時が経ち、ある日の受診でのこと。
私の手を診察した先生は、
深い溜息をつきながら
「もう全部取ります」と仰ったのだ。
さすがに先生ももう限界だと思われたらしく、結局
予定より早く金具の抜去手術を行うことになった。

 手術は当初予定していたよりも1回多く、最後に行った抜去手術も含め計3回行った。
その最後の手術も無事に終了すると、あれだけ金具に苦しめられていたのが嘘のように痛みが消えた。
やっとこれで思う存分自転車に乗れる!
金具が手の中にあった時の不自由さといったら!
こればかりは身を持って体験してみないとホント
分からない。

最初の手術からもうすぐ1年が経とうとしている。
私は去年の秋から職場にヘルパーとして復帰した。

この左手の生々しい傷跡を見るたびに、これからも私はあのひと夏のエピソードを泣いたり、笑ったり
しながら思い出すのだろう。




息子との日々


 
 30年前に誕生した我が子は、月足らずだった為2週間ほど保育器のお世話になった。
体より大きな紙おむつをした小さな赤ん坊。
母親だけが入室を許されている新生児室の一室で、
小さな赤ん坊は保育器の中からうっすらと小さな瞳をこじ開けるようにして私を見る。
とても不思議な感覚だったのを今でも覚えている。
これが、息子と私の初々しい親子の初対面。
どうぞ、よろしくね。

それから我々親子は時に喧嘩したり、笑い合ったりしながらもこの長い歳月を共に歩んできた。
息子が私と居てくれることに本当に感謝している。
息子とは苦楽を共にしてきた同志だから。
思えばいろんなことがあった。
それも今となれば全てがいい思い出。
年相応の息子の反抗期もあって、一時期家族も大変な思いをしたこともあったけど。
でもそれがあったから今がある。
親子の絆も盤石なものになったから。

それにしても術後の生活は思った以上に大変。
包帯でグルグル巻にされた私の手は、あのバルタン星人のような見た目に変わって。
そんな時期、息子に家事を手伝ってもらうように。
そして今も彼が出来る家事は引き続きしてもらい、
私としてはかなり助かっている。
せっかくなのでその流れを続行させて(笑)
当時一番大変だったのは買い物や調理。
息子に買いに行ってもらったり、調理もすぐに作れるレトルト食品などを利用した。
野菜や肉だけ切って使うようにして。
そんな私は肩からリュックサックを背負いながら、徒歩で近所のコンビニへ買い物にも行った。
この時どれだけ健康が何より大切かということを、
私は身に沁みて痛感することに。
怪我したり病気したら本人が辛いだけでなく、家族も大変なのだということも。
そして改めて家族のありがたみが分かった。

本当にありがとう。

私の手術をきっかけにして親子で料理をするように
なったことは、一番の収穫だと思う。
息子が休みの日には野菜を切ってもらったり、簡単な料理(カレーライスなど)を私が教えながら息子に作ってもらうだとか。

何気ない時間が永遠の思い出になっていく。

今だけはそんな貴重な時間を二人で楽しもうね。

いつも、ありがとう!



今は風の時代です!


 

 風の時代になってからの方が、私はなぜか
生きやすくなってきたように感じる。

そう、なんとなくなんだけど。

風の時代はあまり考えすぎず軽やかに生きていった方がいいそう。

だから私も既存の仕事だけにとどまらず、これからは思う存分好きなことを並行してやっていきたい。

やっぱり人生は何でもやったモン勝ち!
しない後悔よりやって後悔した方がいい。

自分の心と向き合って、自分をもっと解放したい。
誰でもない自分の人生なんだから。

やりたいこと、やろう!

恋も、仕事もなんだって。

生きてさえいれば叶えられる。

そう、諦めないかぎり。







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