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恋のゆくえ(最終回)




部屋の壁に無造作に掛けてあるカレンダーを見る。

目立つ4の数字に、もうそんな季節だと。

あっという間だなって。

もうじき桜も満開になるっていうのに、

僕はあんまり思うほど成長してないや。

まだまだ発展途上かな。


そう言えばあれから彼女も見かけなくなったし。

元気にしているかな。

日々の雑事に追われてすっかり彼女のことを、

僕は忘れていた。

彼女のことを意識的に思い出さないようにしてたと

いう方が、むしろ正しいのかもしれないけど。


そんなある晴れた休日。

朝から気分もいいこともあって、花見がてら

彼女と出逢ったあの公園に久々に行くことにした。

もしかしたら今日は彼女に逢えるかも!なんて。

そんな淡い期待を胸に抱きつつ、僕はアパートの

部屋の鍵を慌てて閉めた。


近所の公園に到着すると、蕾を付けたままのソメイ

ヨシノの樹木たちが僕を歓迎してくれた。

花見のシーズンらしく、多くの人で賑わって

いる公園には、色とりどりのテントが鮮やかだ。

やっぱりすごい人だな…

この状況下で彼女と再会できるのか不安な気持ちに

なった、その時だった。


あっ、彼女だ!

瞳が彼女に釘付けになる。


だが次の瞬間、僕は思わず自分の目を疑う。

彼女の隣に旦那さんらしき男性の姿があったから。

手を繋いで桜並木の小道をゆっくりと歩いていた。

おそらく新婚さんみたいだ、と僕は直感する。

彼女が既婚者だったとしても不思議じゃないけど、

それはそうなんだけど…

僕にとってその光景は、ショックでしかない。

僕は逃げるように立ち去ることしか出來なかった。



でもこれで良かったかもしれない。

それにあの彼女の幸せそうな笑顔を見たら、僕は

もう腑に落ちるしかないじゃないか!

そう、だからお幸せに!!


これで僕の淡い初恋のような恋は、儚く散った。

あっけない幕引き、

終わりなんてこんなもんさ。

こんな桜の季節に失恋とは。

なんだか急に切なくなる。



そんな傷心の自分へ…

いつか自分にも相応しいパートナーが現れるから…


そんなことを思い僕は前を向いて歩き出した。








 

































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