エコー

 しゃれた有線を消してみてから二人は向かい合った。ファンデーションが少し崩れて見えているシミや、見えにくい場所に剃り残している毛を見合って、むしろお互いの存在がより大切になることを確認し合った。丁重に整えられたベッドの上に腰掛けてやけに機構が多いパネルのつまみを捻って、暗くなった部屋で二人はゆっくりと顔を近づけ合った。ゆっくりと近づいていった顔の、鼻が軽く触れて、そこから唇が触れた。少し留まったのちに、どちらともなく顔を離してしまう。まだ近いところでお互いに止まって目を見合わせて、くすっと笑う。二人は排他的で神聖なキスに幸せを感じていた。しかし天使の羽は堕天のために、体のどこかでは、神聖を壊すための神聖を探しているのを二人は囁き合って知っていた。なめらかな背中に手を差し入れ合って、爪の甲でゆっくりと、撫でる。いつものようにそれだけで、時間が終わっていく。

 フロントにお礼を言って外に出る二人はネオン街に涼しげだった。
「じゃあ、またね」
「ええ」
「気を付けて」
「ありがとう、気を付けて」
 違う路線の改札を抜ける未咲を見送ってから、理衣は日常的なルートを辿った。一人になったことで肩に掛かった鞄の紐を握りしめる。青いラインの入った電車に人はまばらで、端の席に座って小さな壁に体を預ける。その硬さが切ない。理衣はワイヤレスイヤホンを両耳に詰めて今日の録音を聴き始めた。ドアを閉める音、ベッドに腰掛ける音、服の擦れる音、微かなリップ音、……音量を最大にしてやっと聞こえる繊細な恋に凭れ掛かって理衣は転寝をした。空いた電車はダイヤ通り都会を離れていく。

「おかえり」
 理衣が玄関に入ると政人はもう玄関に立っていた。
「弁当箸入ってなかったんだけど」
「ごめんなさい」
「まあまみちゃんが割り箸くれたからいいけど? まじでちゃんとやれよな」
「ごめんなさい」
「どうせ飯食って来たんだろ? 俺ももう食ったから。早く脱いで来いよ」
 それだけ言って政人は引っ込んでいった。理衣は空腹をさすりつつ空のリビングまで入って言われた通り外着を脱いでいく。食べてきて食べさせられるより食べられない方がましだった。最近は食費の分電車に乗れるとも考えていた。下着も脱いでしまって寝室に行く。もうそういう時間も要らないらしかった。

「こことか、どう……?」
「うん、好き……」
「みーちゃんやっぱり、余裕そう」
「そんなこと、ないよ、来て、はるくん」
 未咲は悠のことを慕っていた。だから深い仲にはなれないだろうと思っていた。離れるように果てる。

「これでいい?」
「うん、ありがとう」
 ジャスミン茶を渡す悠は緩く微笑んていだ。
「明日は六時に出るよ」
「オッケー、見送るね。帰りはいつ?」
「夜の八時とかかな。ラインする」
「わかった」
 悠は明日から三日間出張でいない。未咲の頭の中にはくっきりとした理衣の姿があった。もうすぐこの家に理衣がやって来る。リビングに、キッチンに、風呂場に、寝室に、ベランダに、理衣の姿を想像して、未咲はひどく興奮した。
「ねぇ、まだしたい」
「えー、しょうがないなぁ」
 悠はさらに緩く微笑んだ。薄暗闇にベッドがまた小さな音を上げる。未咲の携帯はすっかり躾けられ、理衣からのメッセージを静かに撫で回していた。

 翌日、悠を見送った後、未咲はキッチンに立っていた。ボタンを押して鋭利な刃を回すと、複雑な音を立てながらバジルは粉砕され、オリーブオイルやレモンやペッパーやと一緒になっていく。程なくして注げるようになったそれを予め切り刻んでおいたトマトとチーズ、アボカドに合わせ、手でぐしゅぐしゅと混ぜ合わせる。理衣はお昼頃に来るというので、ランチの準備にも熱が入った。手を濯いで皿ごと料理を冷蔵庫に入れてから携帯を見る。まだ連絡は無い。タイマーの残り時間を確認してから、未咲は脱衣所へ向かう。体を綺麗にして、いい匂いをさせて、とびきりの衣類を着て、……一度果てて落ち着こうと、行き先を寝室に変更する。妄想の最中、理衣のメッセージはダイニングテーブルの上で淡く光った。

 インターホンが鳴り切らない内に開けたドアの向こう側から西日が差して、未咲は理衣に後光を見た。
「会いたかった!」
 理衣を中にあげ丁寧にドアを閉め鍵をかけ、それからすぐ未咲は理衣に抱き着いた。
「遅くなってごめんね」
「ううん、来てくれたからいいの」
 二人は家の中を普通に歩く。
「はるくんが理衣によろしくって。だからよろしくしよう」
「そうね」
「お風呂にする? ご飯にする?」
「お風呂、入りたいな」
 未咲はにっこり笑って脱衣所の扉を開けた。
「一緒に入ってもいい?」
 未咲の問いかけに、理衣はその腰を抱き寄せることで答える。小指から伸びる赤い糸を互いの体中に絡めるように二人は体を摺り寄せ、どちらともなく脱衣所に入っていく。
「脱がせて」
 少し暑い、しかし白く華奢なスタイルからそれを感じさせない、理衣の黒コートの中に未咲は手を入れて、そのまま両肩からコートをすべり落とす。露わになった理衣の全身を見て未咲は息を呑んだ。白く艶やかな半袖ブラウスと蒼く上品な花柄ロングスカート、やわらかくなめらかな彼女の首筋、二の腕に足首……悉く血塗れの……は、かの日々、美術の時間に決まってなぞった表紙裏のヴィーナスに、ひいてはそれより気高い美しさとして、未咲には感じられた。
「旦那のこと殺してきちゃった」
「うん……うん、あたしが洗い流してあげる」
 未咲はサラダの調理工程に似た手つきでスカートのチャックを降ろし、ブラウスのボタンを外し、やさしく抜き取ったそれらをそっと洗濯かごに入れる。両手で丁寧にホックを外し、恥じらいの両手をつい綻んだ表情のまま除け、スムーズにどちらも抜き取ってやはりそっと洗濯かごに入れる。理衣が風呂場に足を踏み入れるうちに、未咲も素早く自分の服を投げ捨てて後ろから理衣を抱いた。細い理衣のくびれはなお未咲の腕が埋まりそうなほど柔らかく、未咲は心臓まで達した恐れを興奮に混ぜ込んだ。理衣の体越しにシャワーの蛇口を捻り、水が温かくなるまで理衣の絹肌を瞳と指先とで眺め、それから二人で体を清めた。お揃いの匂いがするようにと一緒に買ったボディソープで穢れを落としていく。
「片付けはしたの?」
「まだ。これ以上遅れたくなかったんだもの」
「手伝わせて」
 震えている未咲の手を理衣はさっと取って、落ち着けるように握ったり撫でたりした。
「無理しないでいいのよ」
「ううん、理衣、あたし嬉しい、なんだろ、すごく……ぞわぞわするの」
 理衣は自分の体からボディソープを掬って未咲の方に向き直り、その背中に手を回して撫でた。
「ねえ未咲、きっと今なのよ」
 理衣の中指は、未咲の背中に泡で羽を描いていった。そしてそのまま彼女の耳の後ろまで滑ってきて、二人はどちらともなく鼻先を擦り合わせる。理衣はシャワーヘッドを掴んで触れている肩先から二人を洗い流した。タイルに残った赤い泡は弾けて乾くのもそのまま、シャワーは床に落とされてお湯を出し続け、湯気の中で二人の触れ合いは祝祭のように深くなっていった。心の中の凛とした羽が強かに開いていくのを感じながら、雲の中に似た浴室は天国にも限りなく似ていった。

「どうせ体のことしか考えてないと思ったから、教えてあげたの私たちのこと。そしたら燃え上がって少しはマシな夜になるんじゃないかしらって。でも普通に怒鳴られるだけだったのね。それで、本当につまらなくなって」
 テーブルクロスがぴんと引かれた食卓で、ひとしきり未咲の料理を褒めた後、理衣はさっきのことを話し出した。未咲はカルボナーラを巻く手を少し乱暴にした。
「勝手にばらしたこと、怒ってる?」
「ううん、嫉妬。政人さんにあたしが見たことない顔見せたんだなあって」
「それはそうよ」
 にやっと笑ってみる理衣に向かって、未咲はあからさまに頬を膨らませた。
「でもあれよ、四人で見に行った映画の後の顔の下位互換よ」
「あぁ、政人さんの趣味だったもんね、あの恋愛映画。覚えてる、あんなかわいい顔」
 理衣ははにかむ。
「あの映画は最悪だったわ。ねえ未咲、私たち、あんなキスはもうしないようにしましょうね」
「そうだね」
 その台詞で理衣と未咲の考えは通じ合い、そしてお互いに通じ合ったことを理解した。二人の頭の中では悠が動かなくなっていた。二人は一緒に片づけをして、掃除をして、洗濯をして、歯磨きをして、触れ合った後、眠った。理衣が右腕を未咲の首の下に通して、左手は繋いで。そうしてゆっくりと夜が明けていくのを、二人は夢も見ずに温め合って過ごした。

「おじゃまします」
「どうぞ」
「ありがと」
 理衣が整えたスリッパを履いて、未咲はその背中に着いて行った。あまり嫌な臭いはしなかった。寝室の扉を越えると急に辺りは冷たくなり、身震いする未咲に理衣はクローゼットからカーディガンを出して渡した。
「冷房かけたの、少しは持つかと思って」
 急風に設定されたエアコンが唸っている。ベッドの真ん中でおかしい顔をして政人は寝ており、未咲は思わず声を上げて笑った。
「ごめんなさい、あたし、っ」
 堪えて笑い続ける未咲につられて理衣の口角も上がっていく。
「直してあげればよかったかしら」
 その必要はない、未咲と笑い合えたのだから、と理衣は思いながらそう言った。
「二人で笑えたからオーライだよ」
 未咲は過呼吸気味のまま返した。
 理衣は開けたままのクローゼットから今度はキャリーケースを出してくる。それを横目に見た未咲は足元の血を持ってきたタオルで拭うのを中断して政人の首を掴んでぐっと引っ張る。不安定なので脇の下を掴み直す。手袋が少し滑る。理衣はすかさず政人の太ももの下に手を差し込んでフォローする。
「せーの」
 何とか少し持ち上がった体を理衣が開けて置いたキャリーケースの上に落とす。どす、という鈍い音とぱき、という軽い音が同時に鳴る。
「やばい、壊れたかな」
「大丈夫そう。この人は何もできなくて困るわ」
「ほんとに、なんで結婚したの」
「これ以上結婚しなくて済むからよ」
 手でキャリーケースからはみ出た部分を押し込んでいく未咲だったが、理衣が足で直しているのを見習って足でぐいぐいと押し込むのに切り替えた。二人は未咲が持ってきた未使用の靴下を履いていた。悠が買っていたものだった。やがて政人の体が収まると、理衣は蓋を被せて上から踏みつける。カチッと音がした。未咲は親指を立てた。
「行ってくるわね」
 政人の服に着替えて理衣は車のキーを指に引っ掛けた。
「一人で大丈夫?」
「曾祖父の炭焼き場があるからそこになおしてくるわ」
「そのまま燃やしちゃえば?」
「残念だけど火のあるところには煙が立つのよね」
 にやついていた二人はそこでまた声を上げて笑った。理衣を先回りして、未咲は政人のシークレットシューズにティッシュを詰めて玄関の前に整えて置いた。理衣は廊下に敷いたタオルの上でキャリーケースを滑らせ、玄関まで移動させた。
「ありがとう」
「気をつけてね」
「ええ、未咲も、ちゃんとドアストッパーまでかけて」
「うん」
 未咲は理衣にいってらっしゃいのキスをした。それは少し盛り上がって、理衣が背中に手を入れようとするのを未咲は慌てて制した。
「だめ!」
「あら残念」
 笑いながら別れた後、未咲は残ったシーツなどを剥がして黒いポリ袋に詰め込みそれをまた黒いポリ袋に詰め込み、先程のタオルに持ってきた大根おろしのチューブを絞って包んで、残った血液を拭き取っていった。未咲にはしんとした部屋が少しだけ冷たくて怖かった。だってさっきまで理衣とずっと一緒だったから。カーディガンの袖をきゅっと握って、はっとして慌てて袖を捲る。借り物を汚してはいけない。

「ただいま」
「おかえりーー」
 理衣がコートを脱ぐ前にその上から未咲が抱きつく。理衣は左手の手袋を外し、その頭をそっと撫でる。
「寂しかったの?」
 ぶんぶんと首を縦に振る未咲に、理衣はつい笑ってしまった。未咲の腰に手を回して、靴を脱いだ理衣は寝室に向かった。
「すごくきれい、よく出来たわね、マットレスとか」
「ふふ、理衣が教えてくれたからだよ」
「どこで寝たの? 体痛くない?」
「うん、ソファーふかふかなんだもの、さすが理衣の趣味」
「旦那と別に寝れるように選んだのよ」
 理衣は箪笥から通帳や印鑑を選びとっていく。それを覗いた未咲はそこから数珠を引っ張り出してこれみよがしにポケットにしまった。二人は口を押さえてしばらく引き笑いをした。
「これでいいわ、行きましょう」
「いいの? ま、戻ってこれるか、きっと」
 明るく未咲が言うので理衣は微笑んだ。そして理衣が着ていた政人の服を脱いで袋に突っ込み、自身の服に着替え直すまでを、未咲は食い入るように見ていた。

 未咲は無地のティーポットに熱湯を注ぐ。ポットから二つのティーカップにも熱湯を注ぐ。そしてそれらは全て捨ててしまって、ポットにアールグレイの茶葉を注ぐ。そこに今一度熱湯を入れると茶葉が動き出す。
「きれいな絵ね、金縁も」
「そうでしょ、新しく買っちゃった」
「未咲のセンスが私を選んでいるのが嬉しいわ」
 理衣の眺めているカップに、未咲は紅茶をそっと差し入れていく。澄んだ水色を少し覗き込んで理衣は息を吸った。自分のカップにも紅茶を注いでから未咲は理衣の向かいに座った。理衣が砂糖の小瓶を未咲の方に滑らせ、未咲はそこから砂糖を二杯掬って自分のカップに入れた。未咲のスプーンは優雅にシュリーレンを掻き回し、皿の上に眠らされた。
「血は面倒かも。正直結構疲れたし……」
「そうね、でも未咲がやりたいなら全体的には血の方が楽よきっと」
「動脈はやめたいな、アレだってあたしだけ動く方が好きだし?」
 理衣は堪え切れず少し笑う。
「私は天国からの宅急便を待ってもいいわよ」
「あたしは待ちたくないし、それにそそっかしいから間違えて飲んじゃいそう、……ごめんね、むずかしい」
 未咲のスプーンは実行犯にされて眠らされてを繰り返しており、紅茶はすぐ冷め気味になってしまう。未咲は残り半分位を一気に飲み干してポットのカバーを外し、また温かい紅茶を注いで砂糖を沈める。
「大丈夫、私たち難しいことをしているのよ、他の誰にも出来ないことをね」
 理衣は右手をテーブルの下に入れ、未咲の左手を握った。未咲は手を握り返し、長く回していたスプーンを止めた。
「はるくんが大切にしてるパターにする、はるくんにはお世話になったし」
「新しいパートナーと一緒にしてあげるのね、いいじゃない」
 紅茶を啜りつつ、テーブル下の二人の手は二匹の蛇のように絡まり合い、落ち着く場所を探していた。

 未咲は自室のベッドに腰掛けて、抜き出してきたパターを磨いていた。前に教えてもらって一緒に磨いた時のことを思い出しながらクロスを擦り付ける。存外傷が入っていることについて未咲は意外だと思った。そういえばこれは、上司にもらったから大切にしていると言っていた。未咲は自分の結婚の姑息さに思い至った。
「そろそろ寝ましょう」
「うん」
 未咲はパターを床に置き、隣に腰掛けた理衣を抱き締めた。
「ねえ、あたしたち、ひとつだよね」
 理衣は未咲を柔らかく抱き返した。
「私たちは数えられたりしないわ」
理衣はやさしく未咲をベッドに横たわらせた。
「体があるから分かりにくいけれど、もう溶け合ってどこにでもいる、大丈夫よ」
 そして片腕でやさしく未咲を抱き寄せて、背中をぽんぽんと叩いた。
「大丈夫よ」
 未咲が寝息を立てた頃、理衣は目を瞑りながらそう呟いた。

 悠の黒いシャツに手を通す時、未咲は蝙蝠の話を思い出していた。少しだけ考えている、私たちは人でなく神様でもない、間を飛び交う内に必然に出会うことができた二匹の蝙蝠だと。パターのグリップをぐっと握る。
「疲れていないの」
「元気だよ、あんなに愛し合ったら」
 未咲の声は明るい。昼過ぎから日が落ちるまで荒らしていたベッドをそのままに、二人はリビングに立っていた。未咲はもう何十分もパターを握りしめている。理衣はたまに時計に目を移しつつキッチンの向こうからそれを見守っていた。
「なんて話そうかな」
「先に考えるといざという時言えなくなるわよ」
「もっとパター磨いてあげればよかった」
「もう十分きれいよ、未咲が触れたんだもの」
 玄関で音がした。未咲はパターを強く握りしめる。理衣はキッチンに隠れるようにしゃがむ。鍵ががちゃと回され、ドアがぎしょと開き、ぎちゃと閉まり、ず、と靴を引き摺るような音がして、とんとんと足音が、とんとんとんとそして、かちゃ、と悠がリビングの扉を開けた。
「ただいま、……?」
 扉の前でパターを握りしめる未咲は、迎えの台詞を言うこともなく固まっていた。
「みーちゃん、どうしたの? その、パター」
「あ、磨いてくれた、の……?」
 悠は感謝の言葉より困惑が前に出てきており、未咲の顔を覗き込む。未咲はその悠の頭が下がる時にパターを振り上げた。そしてそのまま固まり、小刻みに震えた。
「なに、やめて、」
 悠はパターを取るために震える未咲の手に触れた、瞬間思い切り沈んだ、ドライバーのヘッドに押しつぶされて。それには音もついていた。理衣がドライバーを足元に降ろしていた。
「未咲ごめん、私、」
 理衣は悠を跨いで未咲に駆け寄った。未咲はふにゃとした笑顔を浮かべていた。
「理衣ごめんね、あたし、ぞわぞわしすぎて、いっちゃった」
 未咲の言葉に理衣は呆れ笑いをして、息をついた。
「しょうがない子」
 理衣は未咲の耳の下を撫ぜつつ目配せをする。微かに動き、前を見ようとしている悠の体を、統率しているところの後頭部を、未咲はピカピカのパターで思い切り叩いた。未咲は笑った。理衣も笑った。それはうつくしく頭から落ちていく二人の結婚式だった。




※この短編は昨年ネットプリントとして公開したもののテキスト版です。

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