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喜怒哀楽相関 感情コントロールの新たな視点

俳優にとって、感情表現は演技の根幹を成す重要な要素の一つである。しかし、数え切れないほどの感情を自在に操るのは容易ではなく、多くの俳優が壁にぶつかることも少なくない。
そこで今回は、「喜怒哀楽」という4つの基本的な感情に着目し、演技における感情コントロールの新たな視点について、より詳細に考えてみたい(※アジア圏にはもう一つ『恨:うらみ』があるという意見もあるが今回は四大感情を基本とする)。

1. 相関関係にある「喜怒哀楽」
一般的に、「喜怒哀楽」は互いに相反する感情と考えられがちである。しかし、実はこれらの感情は密接に関係し合い、ある感情が高まると別の感情が低くなるという傾向がある。
例えば四種が25%ずつの状態はありえない。嬉しいと同時にむかつきつつ悲しくそれでいて楽しいという状態は何かが破綻していると思われる。

2. 感情コントロールの新しい考え方
従来の演技指導では、必要な感情を「出す」ことに焦点を当てることが多かった。しかし、この考え方は俳優の精神的な負担を大きくする可能性がある。
そこで提案したいのが、「喜楽」の要素を「排除する」という考え方である。
例えば「怒」が必要なシーンであれば、「喜」や「楽」の要素を意識的に排除することで「怒」の感情を自然と高めることができる。
これは「怒」の感情を無理やり「出す」のではなく、「喜楽」の感情を「消す」ことで「怒」の感情を「浮かび上がらせる」というイメージである。
具体的には「怒」の感情をより自然に演じるために以下のような方法が考えられる。
・表情:笑顔やリラックスした表情を意識的になくす。
・声のトーン:明るい声のトーンや高い声のトーンを意識的に避ける。
・体の動き:リラックスした体の動きやゆったりとした体の動きを意識的に避ける。
・思考:楽しいことや嬉しいことを意識的に考えないようにする。

3. 有機的な演技と精神衛生の保ち方
怒りの演技のために「喜楽」の要素を「排除する」という考え方は俳優の精神的な負担を軽減し、より有機的な演技を可能にする可能性がある。
従来の演技指導では、必要な感情を「出す」ことに焦点を当てていたため、俳優は常に「演技スイッチ」を入れなければならないというプレッシャーを感じていた。
しかし、「喜楽」の要素を「排除する」という考え方であれば、俳優は常にリラックスした状態で演技に取り組むことができる。
また、この考え方は、日常生活における感情コントロールにも役立つ。
例えば「怒り」を感じているときは、「喜」や「楽」の要素を意識的に取り入れることで、「怒り」の感情を“鎮める”ことができる。
具体的には、以下のような方法が考えられる。
・深呼吸:ゆっくりと深呼吸することで、心身をリラックスさせる。
・笑顔:無理にでも笑顔を作ることで、脳が「ドーパミン」や「セロトニン」などの神経伝達物質を分泌する。
・楽しいことを考える:楽しいことや嬉しいことを意識的に考えることで「怒り」の感情を抑制する。
これらの方法を意識的に実践することで、「怒り」の感情をより効果的にコントロールすることができるようになるだろう。

4. 感情表現の幅を広げる
「喜楽」の要素を「排除する」という考え方は、感情表現の幅を広げる効果をもたらす。
従来の演技指導では、必要な感情を「出す」ことに焦点を当てるため、俳優は特定の感情のパターンに縛られてしまうことがあった。しかし、「喜楽」の要素を「排除する」という考え方であれば、役者は様々な感情を自由に表現することができるのだ。
例えば、「喜」と「楽」の要素を「排除する」ことで、「怒」や「哀」だけでなく、「焦り」や「不安」などの複雑な感情も表現することが可能になる。
また、「喜楽」の要素を「部分的に排除する」ことで、「喜怒哀楽」が混ざり合った微妙な感情表現も可能になる。

5. 演技の奥深さを探求する
「喜楽」の要素を「排除する」という考え方は、演技の奥深さを探求するきっかけにもなる。
従来の演技指導では、必要な感情を「出す」ことに焦点を当てるため、俳優は演技の表面的な部分にとらわれてしまうことがあった。しかし、「喜楽」の要素を「排除する」という考え方であれば、俳優は演技の深層部分を探求することができるのだ。
例えば、「怒」が必要なシーンであれば、「喜」や「楽」の要素を「排除する」ことで、「怒り」の根底にある「悲しみ」や「恐怖」などの感情を発見することができる。

このように、「喜楽」の要素を「排除する」という考え方によって、俳優は演技の新たな可能性を発見することができるだろう。

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