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サークル・オブ・ライフ_6 当たり前の教育

 村の子供たちが通う黒滝村立黒滝小学校は寺戸区にある。役場と郵便局の中間あたりに位置し、校門前には村で唯一の信号がある。中学校は堂原区にあるのだが生徒の数が少なく、小学校に併合されるのも遠くないのではという気がしている。それはさておき、こどもおとしより園を卒園した子たちはこの黒滝小学校へ進学するのだが、昨今叫ばれている教育改革の波。Wi-Fiを完備したりタブレットを一人一台配布したりと予算が嵩むことばかりな上にヒップホップやプログラミング、金融といった新しい題材も増え、先生陣も悲鳴を上げている(小学校では習わない科目も有)。これに関して言えば、ダンスが体育に加わるのはいいとして、なぜヒップホップなのか?これには言及しないにしてもなぜ体育の先生が教えるのか?甚だ疑問である。これまで踊ったことのないヒップホップをどうして教えられると思い、誰が考えて決めたのか不思議でならない。最近ではダンスを習っている子も多いので、むしろ子供たちの方が上手かったりするのではないだろうかと思ってしまう。同じことがプログラミングと金融にも言えるわけで、家庭科の先生が金融を教えられる様になるには相当学ぶ必要がある。明らかに専門家を呼ぶのが正解であり、この分け方は冷笑の種にしかならない。という様なことには気づく人も多く、金融の専門家を講師にして授業しているところも増えてきたらしい。

 さて、ここいらでまたもや想像の翼をはためかせてみることにしよう。黒滝小学校は村でもI Tリテラシー高めの、役場職員や学校職員らに協力を仰いで“学校”という存在のイメージの大転換を図るといいと思う。それは『オンライン学習とオフライン学習を分ける』ことである。従来は知っての通り、全ての教育活動を学校に物理的に通うことで行っていた。私は座学は自宅からメタバース内で行うことを提案する。ヴァーチャル世界にリアルな黒滝小中学校とそっくりそのままな校舎を用意し、自身のアバターが廊下や校庭を歩くことで、実際に学校にいる感覚と酷似させるのだ。まあ瞬間移動はできるし空も飛べるので違いはあるが。XRグラスなどのガジェットの進化とWi-Fi設備に6Gの浸透がこれらを可能にする。山間部障壁で3Gが現役のスポットも多い黒滝だが、今後のキャリアの人工衛星への投資でそのあたりは解決していくだろうし、もしかしたらくろたん1号の出番もあったりするかもしれない。生徒数が少ないので県や国からの助成金・補助金も比較的おりやすいだろうし、オンライン学習はあっという間に受け入れられる気がする。

 もう一つ、オフライン学習の在り方も見直された。人間の目は益々“画面”に向けられることが多くなった。オフライン学習でもグラスをつけるが、あくまでも補助的役割にしている。メインは黒滝に溢れている木々や草花、虫や土、建物などである。それらを生で観察し、触れ、考察することが目的だ。では校舎は何の役割を果たしているのか?それは“遊び”である。子供はヴァーチャル上での遊びに長けているが、現実上(そろそろヴァーチャルも含め現実の定義が曖昧ではあるが、ここでは肉体が存在している世界を指すこととする)での遊びも相変わらず必要だ。2022年時点でヴァーチャル空間における五感の再現はまあまあ(昔に比べれば)高いが、やはり現実のそれには遠く及んでいない。この先はどうあれ、今の所“生”の感覚にはまだ需要があると言っていい。ともあれ、自宅での座学と屋外での授業と校舎での遊び。これらを横串で刺し、一つの学び体系として教育委員会に捉えてもらっていく。今世紀に入ってから流行りのSTEAM(科学・工学・技術・芸術・数学)教育だ。この黒滝教育の仕組みのコツは、如何に子供に勉強————勉めを強いる————と感じさせないかで、なるべくゲーミフィケーションを使って進られるかである。

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