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平家物語(ひらやものがたり)―事故物件ではないがお勧めしない―

(画像の出典: Illust-ac)

生まれ育った家は平家、つまり2階がなかった。
ビンボーで2階を建てる予算がなかったのかと言われても否定はできないが、理由はそれだけでもなさそうだ。
というのも「家」は確かに持ち家だったが、土地は違ったのだ。そこいら一帯の土地を所有する地主が別にいて、母は毎月、地代金を納めに行っていた。
その地主の意向もあったんじゃないかと思う。
2階を建てられたらその分は土地を使わないわけだし、地主としては商売あがったりだ。なので借地人には予め、2階を建てるなというルールを課していたんじゃないかと。
その証拠に近隣の家もみんな平家だった。多分うちよりお金持ちも普通にいたはずだけど、一様に1階までしかなかった。

高校卒業まではその家にいた。父、母、自分のそれぞれの部屋と居間、トイレ風呂台所が一応あるというどってことない質素な家だ。親父はクッソおもしろくもない転勤のない公務員だったんで、引っ越しや、それに伴う転校などすることもなかった。ほんとは学校でいじめられた時転校はしたかったけど、そんな自己都合の転校は親が許すわけないんで。
ともあれ自分の人生の中で一番長く住んだ家であり、今も夢の中に「自分の家」として登場するのは主にそこなのだ。
他県の大学に進学してしばらくしてから、親は郊外にあった土地に家を建て引っ越した。今までの家は、近所の人で欲しいという家族がいたので売り払って。うちより人数が多い家族だけど「こんな広い家が見つかってよかった」と言ってくれたそうだ。

だから、ある年の夏休み、突然帰省先が変わった。引っ越し作業は両親だけでやり、自分はノータッチだったんで。
それまでのあの家と、それがある町には、以来ずっと近寄ってない。
あんなことやこんなことや、虐待された思い出のいっぱい詰まったあの家には。
(参考:『不如帰』
『母がフーゾク嬢になろうとした件』)

しかし2、3年前、図書館で住宅地図を見る機会があり、ふと、あの辺りは今どんなんなっているのかなーと思って調べてみた。
すると、うちのあった住所の場所は、放課後学童クラブ? のような公共施設になっているらしい。
ああ、解体されて建て替えられたのねーぐらいにしか最初は思わなかった。
居住者(うちの次に入居した家族かは不明)が出ていって、地主が市に売り渡したんだろうと。

しかしそうではなかった。

去年母が死んでから改めて旧住所の辺りが気になって、今度は図書館ではなくGoogleストリートビューで番地を入れて検索してみた。すると……

解体されてない!

私が住んでいた時のまま、施設として再利用されているのだ。
「学童クラブ」とか手書きで書かれた看板をぶら下げて。
道路に面した入口側しかよく見えなかったけど、反対側の庭(家庭菜園含む)だった方は均されて遊び場にされているようだった。
よく考えてみたら解体して新たに建設だなんて、あの市にそんな予算あるわけないか。
古民家の再利用、古民家と言えば風情のあるイメージもあるけど、あの家じゃあただのボロ家である。もう築60年ぐらいにはなる。

そんな所へ通わされる子どもたちもかわいそうだが、それ以上に「それはちょっと…」と思うのは、あの場所がよりによって子どもたちの集まる場所とされていることだ。

だってアレだよ? 門限にたかが15分程度遅れただけで「もう帰ってくんな!」と母に玄関からケトばし出されたり、「お前があんまり言うことを聞かないから、精神病院に連れてってやる。入院させてオリにぶちこんでやる」と怒鳴られた場所だよ? 私の、親への恨みが深く、深ーく染みついた物件だよ?

サイコメトリー的にとてもお勧めできない!
あの場所こそが児童虐待の象徴みたいな所なんだから。
通っている子どもたちは本当に誰も何も感じてないんだろうか。なんかイヤな「気」を感じたりとか。ボロいってこととは別に。
子どもたちの親御さん達だって、そういう家だと知ったら預けるのは躊躇されるんでは。
せめて建て替えた新しい施設なら、場所は同じでも少しはマシなのに。

何という市の何町の学童クラブか、筆者のこれまでのnoteを見ていくと、もしかすると特定できるかも知れない。
あなたのお子さんが行っている所かも知れない。
そう、私はお子さんと同じ年の頃に、そこに住んでいた者です。
お子さんに何か異変があったら、その場所の影響ってこともありえるかも知れません。

ただひとつ救いがあるとすれば。

ウチの次に入居した家族や、(もしいるとすれば)その次など、物件が市に渡る前に住んだ人々がしあわせに暮らせたのであれば、私があの家に残した恨みは相殺され薄れているかも知れない。

その可能性を願うのみ。

諸行無常。


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