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USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?④

USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)はかつて
大人が楽しむためのハリウッドテーマパーク
として支持されてきました。

そうなるといつのまにかある問題が浮かび上がってきます。それはディズニーにはあって、USJには無かったものです。それは

”子供” のターゲット層

他のテーマパーク産業と比べても、子供連れファミリーの集客が明らかに低いことが発見されます。この層が増えれば1~2割もの売上が伸びることは明らかでした。俗にいう「金の卵」です。

しかしテーマパークであるにも関わらず、なぜUSJではこんなに子供層が少なかったのか。当時のマーケティング担当であった森岡さんとその娘さんとのエピソードと共に紹介します。


人気アトラクションが子供たちに与えた恐怖

子供の来園者数が少ない原因を追究するために森岡さんは実際に子供を連れてUSJに来園しました。しかしほとんどの人気アトラクションは身長制限が厳しく、年齢が上と下の人で行動が分かれてしまうということに気付いたそうです。

それでも当時珍しく身長制限が無い上、家族みんなで体験できる人気アトラクションがありました。それが「JAWS(ジョーズ)」です。

JAWS(ジョーズ)は水上ボートで港町を巡り、水中から巨大な人喰いザメに襲われるという体験型アトラクションです。森岡さんが家族と乗った際、運悪く娘がボートの一番左側座ることになります。その席は人喰いザメを一番近くで見ることができる配置なのです。

まだ年齢も幼なかった娘さんにとって抽象思考が充分にできず、見えている物を現実として受け取る年齢でもあったため人喰いザメを見たことによって異常なトラウマとなってしまったようです。

数日経ってもしばらく「怖い!」と嘆いていたくらい恐怖を感じたらしく、これこそが開業以来USJが多くのファミリー層を取りこぼしてきた原因であるとわかったのです。



「子供には楽しめないテーマパーク」



この負のイメージを克服するために皆さんはどういった解決策があると思いますか?



単に子供が乗れるアトラクションを一つ一つ増やしていけばいいということではありません。それだけでは「USJは子供でも楽しめるんだ」というイメージは定着しないからです。


小さな子供をたくさん呼び起こすためには、
小さな子供には楽しめない」というイメージそのものを変える必要があったのです。


そういった状況の中新規事業を考える上で、

・小さな子供は楽しめないというイメージを覆すものであること
・世の中に認知されるための即効性があるもの
・多くのファミリー層が来ることになっても充分なスペースがあること
・予算内であること

これらを必要条件とし生まれたのが大きな複合型ファミリーエリアです。森岡さんは「アトラクション」や「ショー」、「プレイエリア」すべて子供のために作られた空間が必要であると考えたのです。


そうして生まれたのが「ユニバーサル・ワンダーランド」です。ハローキティやスヌーピー、エルモなどの子供向けキャラクターで溢れたエリアであり、これまで大人達から批判的で居場所が無かったUSJ内のキャラクター達に、家を与えられたのです。


アトラクションなどの機能は子供向けであるものの、周りの建物やデザインは母親向けで徹底的にこだわり抜きます。「ハローキティのカップケーキ・ドリーム」というコーヒーカップ型アトラクション一つを取って見ても、乗り物が全て子供の目線で設計されており、普段乗ったら手すりしか見えないような子供でも、これに乗ればUSJの世界を360°見渡せるように設計されているのです。

JAWS(ジョーズ)で痛い目を見た森岡さんの娘もこの新エリアには大興奮で、結果的に一番好きなエリアとなったみたいです。ほっこりするエピソードですね。

USJの事業としての実績においても、新エリア「ユニバーサル・ワンダーランド」開設前の年間集客約740万人だったのが、開設直後の年間集客が約975万人を記録し、ファミリー層を呼び戻すことに大成功しました。


負のイメージを挽回するためにかなり大きい行動に出たUSJでしたが、例え多くの大人達から批判されようとも自分の考えを信じ実行する姿勢には私達も学ぶところがありそうです。ただその際「明確なゴール」を確立していなければいけません。正しいベクトルで自分の時間と労力をつぎ込めるために目標を明確にするには頭を使う必要もありますね。


ここまで読んでいただきありがとございました。


次回もお楽しみに!



追記))
私の投稿では「本で得た知見を具体的にどう生活に活かすことができるのか」を自分なりにアプローチしたコンテンツを配信しています。「本を読みたいけど時間が無い」方も読むことができるコンテンツを発信していくのでぜひともフォローの方よろしくお願いいたします。

ここからの記事では、森岡 毅(2014)『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』 を参考に書いていきます。本の内容を通して一緒に考える時間を過ごしましょう。

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