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拝啓、私の中のあなたへ

不安定な情勢と猛暑が続きますが、お元気ですか。
今日は38週2日目。「いつ産まれてきても大丈夫」と、先週太鼓判を押されたところです。

おなかにあなたを授かって、私は自分が「動物」だと思い知りました。
DNAが「生き物として次はこうだ」と示すまま、進まざるを得ません。
おなかの皮膚がひっぱられ、どんどん体重が増えていきます。ホルモンの乱高下に精神状態は左右され、勝手に涙が止まらなくなり。食べられるものも、心地いい姿勢も、寝返りの可否も、自分ではどうにもできません。

「私」が選択できることは、本当にわずか。
でも今はそのことが、とても小気味いいのです。

今年は仕事でこんなことができたらいいな。
そんな計画が根こそぎ吹っ飛んでいった日々は、笑っちゃうしかないくらい無力でした。無力で、心細くて、あなたのことが心配で、エコー写真を見て「動いてる」「ここが手だ」とわかるだけで嬉しくてたまらなくなる日々でした。

今はもう臨月なのに大胆な動きのまま、あなたは右の胃のあたりをぽこぽこと蹴り、脇腹のあたりを回転しながら上手に移動しますね。
めぐりめぐって夫と私のもとに来てくれたこと、そのことが大きすぎる出来事のような、それでいて必然のような、そんな気持ちになっています。

出産、きっと一緒に乗り越えましょう。
何があってもおかしくない、最後まで奇跡に支えられる出会いだからこそ、言葉で書いておきたくなりました。
私は、あなたと過ごせて本当に幸せです。そして、あなたと生きてみたい。
でも、神様か何かの采配で、万が一億が一それが叶わなくても、私は本当に本当に今、幸せなのです。この世に来てくれて、ありがとう。

そして、同時に思います。
「母になる」ことと「親であり続ける」ことはイコールではない。
両方が奇跡だ、と。

「良い親」になれる自信は、正直ないのです。
あなたに失望される日が来るかもしれません。
それはとっても怖いですし、不安です。
でも、その瞬間その瞬間に、目の前のあなたと向き合って、お互いに見ているものを分け合って、進むしかないのだと感じています。

この世界は、たくさん悲しいことが起きるけれど、同時に美しいものもたくさんある場所です。
一緒に、楽しみましょうね。木々のざわめきや鳥の声を聞いて、一緒に食べて笑って眠りましょう。

あなたの誕生日はいつでしょう。
あなたの声が聞けるのを、あなたの手が握れるのを、心から楽しみにしています。

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