見出し画像

右脳左脳神話 《考察編》

【この記事のまとめ】
自分が思い込んでいる「常識」や「正解」には、間違った俗説が含まれる可能性があるため「それ本当?」と、今一度自身に問いただす情報リテラシーが必要


前回の記事で「右脳左脳神話」についてお話ししました。いわゆるパーソナル診断が登場するほど俗説として出回る「右脳左脳神話」ですが、一体何が問題なのでしょうか?今回はこれについて考察していきます。


問題点①「二項対立」

画像1


問題の1つが「二項対立問題」です。
物事の構造をわかりやすくするために隔てる「AとB」というような明確な分類は、時として間違った認識を植えつけてしまうことがあります。

たとえば右脳派・左脳派をみるパーソナル診断でいうと、「右脳が感性やクリエイティビティを担当しているから、右脳派の人は論理性に欠ける」といった解釈のことです。前回解説した通り、これは根拠のない話なので信じなくても大丈夫です。

知性感性は単純化して当てはめられるようなものではなく、複雑な処理を介して生まれる高次の知的能力だとされています。これを一方を重じて一方を軽んじてしまう、この対立構造の認識が問題だと指摘されています。


ちなみにこの「右脳左脳神話」ですが、日本以外の国でも広まってる俗説みたいですね。「右脳しか勝たん」的なニュアンスの本がいっぱい出てるからなんでしょうか?

去年発売されて超絶ブームになった『FACTFULLNESS(ファクトフルネス)』でも同じことを指摘してましたね。当てはまりそうなのは「パターン化」「単純化」「分断化」あたりでしょうか。おもしろい本なのでぜひ読んでみてください。


ともかく「右脳左脳神話」も含めて、俗説がやっかいな点は疑う隙が基本的にないところです。『FACTFULLNESS』でも著者が警鐘を鳴らしていますが、まず事実を知ることが重要であり、科学を知ろうとする姿勢がそのための第一歩だとぼくは考えています。


POINT①

・右脳=感性 / 左脳=知性 という二項対立を鵜呑みにしない
・事実や正しい知識を身につけるための科学的な視点



問題点② 「脳科学」

画像2


問題の2つ目は、「脳科学って付くとなんとなく信じられる問題」です。「脳科学的な○○」とか「脳が喜ぶ××」って、なんとなく信憑性が高そうなイメージがありますよね。

これは「二項対立問題」とは別ベクトルで疑う隙が基本的にない話です。

疑う隙が基本的にない
二項対立問題:俗説として最初から信じている
脳科学問題:説得力があると思い込んで信じてしまう


言い換えると、「すでに入ってる情報」と「これから入ってくる情報」に対するフィルターのかけ方の違いです。これらを意識すれば間違った知識を信じてしまうことは少なくなりますが、対策には共通点があります。

【間違った知識を入れない対策】
「それ本当?」って心で自問自答


こうすると何が起こるかというと、まず本当かどうかわからなかった場合、それに関連するデータを調べにいきます。それに何らかのエビデンス(正しいという証拠)があるかどうかをみて、情報を精査するようになります。

たとえば、今回の「右脳左脳神話」もそうです。何を隠そう、ぼく自身がこの俗説を信じていました。神経科学に触れることがなかったら、きっとこのまま疑うことなく生きていたと思います。


一方で、自分の常識行動を省みて、文脈合わせを始める場合もあります。それを客観的にみることができれば、正誤判断がある程度自分でできるようになります。

たとえば、「傾聴力」に関して、ぼくは人の話を聴くのが上手い方だと思っていました。なので、よく意見が衝突する友人との会話は、相手が自分の話を聞き入れていないものだと思い込んでいました。しかしある日、その友人との会話を振り返って考えると、「話を聞き入れない相手を否定している自分」がいることに気が付いたのです。

それに気付いたぼくは、すぐに友人に宣言しました。
「考えてみたんだけど、傾聴力がないのはぼくの方だったかもしれんから、これからは意識してみるで」

その後も何度か衝突しましたが、しばらく経ったある日、友人はこう言ってくれました。
「そいや最近、意見が衝突したあとのムスッとする時間が短くなってきとるわ」

たしかに以前のぼくはかなりムスッとしてました。自分の話を聞き入れていないのは相手だと思い込んでいたからです。なので、相手の話を感情に任せずに聴く力は、確実に成長した能力といえるものだと考えています。友人に大感謝ですね(ちなみにとても仲良しの友人です)。


この経験から、自分自身を疑わないことそれ自体がバイアスになっていることを痛感しました。心理学でいうところの「確証バイアス」です。

「それ本当?」という一言を自分の心に投げかけることは、情報が氾濫する現代人に必要なフィルターなのではないでしょうか。


POINT②

・情報リテラシーに必要な問いかけ:「それ本当?」
・確証バイアスへの理解と対策


参考文献

石山徹; 田中彰夫; 池田るり子. 描画学習における機能的な展開可能性に関する研究. 美術教育学: 美術科教育学会誌, 2014, 35: 79-91.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?