紫陽花

紫陽花の速度で
人生が進んでいく

6月の
透明な水滴の中に
忽然とあらわれた
球形の華やぎに
重ねあわせる

紫陽花の温度で
肌が火照っている

雨粒の中
傘一つ
人間ふたりの
しあわせな
空間

紫陽花の表情で
梅雨が終わっていく

雨足は強まり
弱まりしつつ
地面で煩悶し
忘れがたみのような
水たまりを残す

紫陽花の花が
今年も咲いている

色とりどりの花が
一瞬の生を歌うとき
枯れた花弁が
夏に落下する

紫陽花の花が
去っていく雲間に

夢中で女を
追いかけた
掛け違ったボタンを
止め直している
アスファルトが熱い

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