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省略プロフィール

僕はお笑いが好きなのでネタ番組をよく見る。

ただ、そういった番組で披露されるネタは、ほとんどが「見たことがあるネタ」だ。

大抵、何年か前の単独ライブで演じられたネタや、他の番組で放送されて好評だったネタを使い回している。

そして本当に「今、1番自信のある勝負ネタ」は、その年の賞レースやたっぷり時間をとってネタを披露できる豪華な番組などでしか披露されない。


理由はたくさんあるだろうが、その中の1つに「お笑いのネタはネタバレに弱すぎる」というものがあると思う。

同じ4分間のエンタメでも、歌なら「あ、この後サビが来るんだな」と分かっていても楽しめる。

しかしこれが漫才になると「あ、この後あのボケやるな」と分かっていると初見ほどの感動は無くなる。

家族でテレビを見ている時、心なき親に「このあとのボケ知ってるー!」と陽気にネタバレをかまされて殺意を覚えたことがある人も多いだろう。(多くなかったらすいません。)


なので、大舞台で披露する予定のネタをマスなメディアで消費しすぎると、肝心な舞台でウケなくなる可能性が出てきてしまうのだ。

賞レースが近づくと特定の界隈で「あの芸人はまだ勝負ネタを『隠している』」という都市伝説が囁かれることもよくある。

そんなに面白いネタがあるなら隠すなよと思うかもしれないが、お笑いネタの賞味期限の短さを鑑みると仕方のない現象だと思う。

長くテレビに出るためには、勝負ネタをどこで披露するのかを真剣に考えないといけないのだろう。




そして、芸人ではない僕も、「自信があるネタを隠す」という行為をすることがある。

それが、初対面の人と話すときだ。

昔は会話を広げることに必死で、相手のプロフィールをガンガンに掘り出し自分のプロフィールを矢継ぎ早に放つという戦略を取っていた。

しかし、これは今後のことを考えると非効率的である。

その人とたった一瞬しか付き合わないのならいいが、もし長時間会話を続けないといけないとなると話のネタを消費し続けることは得策ではない。

そこで有効なのが、「あえて自分の素性を半分くらい隠しておく」ことである。

もし相手が「俺noteで友達いなくなりそうな文章ばっか書いてるんだよね」と言ってきたとしても、すぐには「俺も俺も!!」とは返さない。

会話のフックになりそうなネタはギリギリまで出さずに、薄い会話を金箔のごとく引き伸ばしていく。

そしてその作業にも限界がきて、沈黙が続くようになってきたらようやっと「俺もnote投稿するたびに現実の人達に距離置かれるようになってるんだよね」と告白するのである。



側から見たら、あまり自分を出さない冷酷な人に見えるかもしれない。

ただ、僕からしたらこれほどの思いやりはない。



会話の流れの先を見越し、「ネタを隠す」という技術を心得た今、就活で初対面の大学生と話すときも会話が途切れなくなった。

目の前のピンチに焦ることなく、常に物事を俯瞰する力をネタ番組が教えてくれた。ありがとうネタ番組。

最近ではひたすらアクセル全開で自分語りしている人を見ると、「そんなんじゃもっと大事な場面で使うネタなくなるぞ」とか「もしかしてもっとすごい勝負ネタ温存してるのか?」とか、お笑いヲタクのSNSみたいなことを思ってしまうようにもなった。

勝負プロフィールを小出しにすることは、会話が苦手なすべての人にオススメのテクニックである。






ただ、「僕自身がお笑い好きである」というプロフィールは毎回あんまりハネないので最近はお蔵入りにしている。












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