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優等生


「こんにちは。ただ今ご紹介に預かりました生徒会長のニシモトです。今年はリモートでの開催となってしまいましたが、無事第28回県立京谷高校入学式の日を迎えられました。

自宅から僭越ではありますが、新入生の皆さんにひとつだけアドバイスを送りたいと思います。

こんな今だからこそ、図書室を活用してください。

今、社会は混迷を極めています。我々にはより一層『自分の頭で考える力』が求められています。そのために、多くの本を読んで先人たちの知識を受け入れることが重要になってきています。



(全部ウソだよーー!!!!

図書室なんか、行かなくていいよー!!

校長に言わされてるだけだよー!!

わざわざ本なんか読まなくても、もっと効率よく勉強できるツールはたくさんあるよー!!

俺は大抵中田敦彦のYouTube大学で済ませてるよー!!

今俺のZOOM背景になってる、ぎっしり詰まった本棚。もちろん合成だよー!!
本当は後ろ真っ白な壁だよーーん!!!!)




……あっ!すみません。

少々フリーズしていましたかね……?

大丈夫でしょうか。それでは続きを話します。

もちろん現代はSNS等からすぐに情報を入手できる時代です。しかし、自分の好きなように構築されたTLをただ眺めているだけでは受動的な情報収集しかできません。

一方、本は能動的に考える訓練に向いています。読書に集中すれば周囲のノイズが遮断されるうえ、自分のペースでページをめくれるのでじっくり著者の意見と向き合えます。

我が校の図書室には3万冊もの蔵書があります。人数制限はありますが誰でも利用できます。

図書室に行くだけで沢山の本が視界に入ってきます。通販サイトで本を探せばすぐにレビューやレコメンドが表示されますが、図書室ではそんなものに縛られず本との偶然の出会いが実現できるのです。




(読書は能動的とか笑わせるなよー!!
インプットである以上どう抗っても受動だよー!!
ページめくったくらいで能動ぶるなよー!!
そんなに受け身が嫌なら読んでないで書けよー!!

そもそも公立高校なんて受動的な人間を作り出すための矯正施設に過ぎないんだよーーん!!!!

図書室は確かにレビュー見ないで本選べるけど、誰がそんなリスキーなことするんだよー!!
直感で選んだとしても、どうせその後にレビューは確認するよー!!

『本との偶然の出会い』もよく聞くけど、逆に偶然じゃない出会いって何だよー!!
Twitterで知らない誰かがすすめてた本を欲しいと思ったとするよ?
それを求めてAmazonにログインして脇目も振らず購入したら、『必然の出会い』になるの?

でもそもそもその本が欲しくなったきっかけは『偶然Twitterで見たから』じゃないのかよー!!

出会いなんて元を辿れば全部偶然だよーーん!!!!)




……あっ!すみません。

またフリーズですかね……?

聞こえますでしょうか。それでは続きを話します。

私はこの春休みにドストエフスキーの『罪と罰』を読了しました。人間が犯す過ちとその償いについて深く考えさせられました。

そう。本を読めば周りの人間の行動や発言、果てには世界そのものの見方が変わってくるのです。

私が好きな『LIFE!』という冒険映画に、こんな名言があります。

『世界を見よう。危険でも立ち向かおう。壁の裏側を覗こう。もっとお互いを知ろう。そして感じよう。それが人生の目的だから。』

旅や留学が難しくなった今、図書館から無限に広がる世界を冒険してみてはいかがでしょうか?




(もちろん『罪と罰』もあっちゃんの動画でしか見てないよー!!

1時間で読破できたよー!!
厳密には1.5倍速で見たからもっと短いよー!!

『罪と罰』の感想で『過ちと償いについて考えさせられた』はほぼ何も言ってないのと同じだよー!!
本当に考えさせられたら最初からその中身喋るよー!!

ちなみに『LIFE!』は映画を10分くらいにまとめて紹介するYouTubeチャンネルで見たよー!!

あと公立高校の図書室から見られる世界なんて全然有限だよー!!
『はだしのゲン』とかないもーん!!

本を読めば世界の見方が変わるって、そんな単純なシステムだったら苦労しないよー!!
読むからではなく考えるから身につくんだよー!!
俺はめんどくさいから諦めたよー!!
俺が求めているのは知識ではなく権力なんだよー!!



何が言いたいって、中身ペラペラの俺でもこれくらいのスピーチなら繕えちゃうってことだよー!!

みんなうなずきながら話聞いてくれてたけど、それこそが自分の頭で考えてない証だよー!!
王様は裸だよー!!

この高校の生徒がバカばっかりだから、生徒会長の俺だけが賢くある必要もないと気づいちゃったんだよー!!

でも結局は、より上の校長という権力に踊らされる傀儡になっちゃったんだよー!!

愚かだよねー!!
本当に、愚かだよねー!!

何にもない部屋の中から、こんな大勢に向けて、思ってもないうわ言を垂れ流す男の姿なんか、いっそ笑い飛ばしてくれ)よーーーん!!!!!




あっ……

よ、よ、よん……

よーーーんだ方がいいんですよ。本は……。」






















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