チャンスは平等の歌詞が素晴らしいという話

チャンスは平等の評判があまりよろしくないようです。
個人的には大好きなので、なかなか悲しい。
卒業曲がこんなのでいいのか、というのが大半の意見ですが、誰にでも当てはまるような、100万回聞いたような、既存卒業曲の類似曲より絶対チャンスは平等の方がいい。
曲がまず山下美月っぽいと思うんです。
明るくて、いい意味で愛らしいダサさがあって、でも音はめちゃ良くて、耳に残る。

そしてそれ以上に歌詞が良すぎる。あまりに良すぎる。
僕は世の中でトップクラスにこの曲の歌詞について深く深く考察した自信があります。
その内容については動画でも説明したんですが、改めて文字でもちゃんと書いておきます。


歌詞の意味について書いていく前に、前提条件をいくつか。
・乃木坂は時代ごとにグループ内の主人公が決まっている。
記事にも書きました。第一部:生駒里奈 第二部:久保史緒里です。
・乃木坂46を卒業しても乃木坂である。
初代キャプテン桜井玲香の発言より。他にも、AgainstのMVラストで一人になった生駒がメンバーがいる方に戻るなど、それを示唆するシーンが多い。
・乃木坂の楽曲の意味は時代と共に変わっていく。
君の名は希望で「希望」に救われていた生駒だが、卒業コンサートでは生駒が「希望」になっていた等。
・乃木坂の歌詞に出てくる登場人物は必ずしも一人ではない。
一人称視点の「僕」だけが出てくるわけではない。例として、裸足でsummerでは「僕」の視点の他に「君」視点の歌詞もある。ここにはないものでは、卒業していく齋藤飛鳥と残されるメンバーの対話のような歌詞になっている。
・山下美月に限らず、くぼしたを象徴するワードとして、「未来」「夢」がある。
未来は未来の答えから。夢は人は夢を二度見るから。
これは今の乃木坂にも当てはまる。

上記を踏まえて改めて歌詞を確認していただきたい。
まず、歌詞の中に卒業を暗示させるようなワードは散りばめられています。
「何かを決めたんだろうね」→卒業を決めた?等。
また、前提にも書いた未来とか夢とかも歌詞に出てきます。もちろん、どちらもありふれた単語ではあるのですが、乃木坂の物語を順に追っていくとより味わい深くなるんです。
1Bメロで、「今日までの経験が未来へのチケットだ」とあります。
ただ、2Bメロでは「今までの経験役に立たない」となっており、一見矛盾しているように見えます。ただその後。
「夢を見るつもりならしっかりと目を開けて全てを見逃すなよ」
これがactually…の歌詞と繋がります。

そもそもactuallyはどういう歌詞か。
この辺はYouTubeでも喋ってるので、また機会があれば聴いていただきたいんですが、これは中西アルノ視点と山下美月視点の二つの意味があり、前者は自分が乃木坂に受け入れられないんじゃあないかという中西のネガティブを、後者は変化を受け入れられず、今の自分は先輩のようになれない山下のネガティブを表しているのではないかと思います。
「理想が邪魔して真実を見失う」
自分の中に作り上げた理想、乃木坂らしさを求める固定観念で、自分への愛を見失っていると僕は読みました。

さらに、「夢を見るつもりなら」の部分。
もちろんこれは人は夢を二度見るに繋がります。
「今ならちゃんと夢を見られる」
このフレーズに繋がるもう少し前の曲があります。それが僕だけの光。
眩しい太陽を羨んでしまうけれど、自分だけの輝き方を見つけて、太陽が霞むくらい輝いてみせると決意する歌です。
2023年夏の全国ツアー千秋楽にて、僕だけの光を披露した後に二度見を披露するわけですが、それによってactuallyと僕だけの光と二度見が全て繋がる。
actually→「眩しい太陽見上げると(中略)なんか目を逸らす」
僕だけの光→ 「いつだって夢は眩しいだろう」
二度見→「今ならちゃんと夢を見られる」
眩しくて見られなかった夢を見られるようになるという流れ。
それを踏まえてもう一度見るとどうでしょうか。
「夢を見るつもりならしっかりと目を開けて全てを見逃すなよ」
一気に山下美月らしさが、というか、3期生らしさが出てくると思いませんか。
未来へのチケットになる「今日までの経験」、夢を見るために役に立たないのが「今までの経験」。
文字数としては同じこの二つを使い分けたことには間違いなく意味があると思うんです。
もしかすると、例えば1Bと2Bで視点が別の人からであるとか、伝えたい先が違うとかがあるのかもしれません。

ここで気になるのは、そもそもこの歌詞は誰視点なのかということ。
これは乃木坂そのものの視点ではないかと思っています。
ちなみに、ここでいう乃木坂は、単にメンバー全員のというわけではありません。
概念として、卒業したメンバーがたどり着く場所としての乃木坂。

そんな乃木坂視点で歌われていると思われる曲があります。
久保史緒里センターの3期曲「僕が手を叩く方へ」
この曲についてもYouTubeでしっかり喋っていますが、ざっくり書いておきます。

そもそもライブで披露する1ハーフとフルバージョンでは意味が違うんです。
1ハーフで歌詞を見ていくと、先輩の3期生が後輩たちを励ますような歌詞になっています。ただ、フルで披露すると違和感のある箇所が出てくる。
1サビで「君」に向けて頑張れと言っているのに、2Aでいきなりのネガティブ。
「ただ涙溢れて何もできないまま自分の無力さを味わい続けた朝」
果たしてこれは後輩に向けて3期生が歌う曲と言えるのか。
僕は3期生が後輩に向けて歌う曲ではなく、概念としての乃木坂が、そこにいるOG達が、不安の中にいる3期生に向けて伝えたいメッセージなのではないかと思います。

またチャンスは平等に戻ります。
ナナナの部分について。
1サビでは「聴こえてくるだろう? 近づく足音」
2サビでは「風が吹いてくる」
2サビの「風」で、山下美月だから三番目の風を連想した人も少なからずいると思います。
ただ、足音と風がどちらも出てくるピッタリな曲があります。
それがSing Out!

SingOut!は発表時点では、卒業して一人になったOGに向けて一人ぼっちではないと歌う曲でしたが、前提にも書いたように、乃木坂の楽曲の意味は変わっていきます。
オリジナルメンバーもどんどん少なくなった今、意味が変わっているんじゃあないかと。
概念としての乃木坂になったOGから現役に向けての曲になったんじゃあないかと思うんです。
もうお気付きでしょうか。
SingOut!の「この想い届けClap your hands」「風に乗って飛んで行け愛の歌」「僕たちはここだStomp your feet 存在に気づくように踏み鳴らせ」
そしてチャンスは平等、僕が手を叩く方へのどちらにも孤独とか一人を匂わせるフレーズが出てくるので、それに対する「ひとりぼっちじゃないんだよ」まで。
チャンスは平等、僕が手を叩く方への、くぼしたがそれぞれセンターに立つ楽曲で、SingOut!の歌詞を回収しているんです。
卒業を決意して、一人で歩き出して、僕たちはここだと足を踏み鳴らす音が聴こえてくる。それがチャンスは平等だと思っています。

最後に、チャンスは平等のチャンスとは何か。
チャンスについて、歌詞の中で「ただじっと待てばいい」と出てくるんですが、そもそも普通に考えた時に、ただじっと待てばいいチャンスなんかないんです。
普通は、自分から掴みにいかなければならないものなんです。
つまりここで出てくるチャンスは普通のチャンスではなく、乃木坂だけに当てはまる特別な意味があると思います。
チャンスは、主人公になるチャンス。
主人公が固定された乃木坂というグループを卒業して、自分が主人公の人生を歩き出すチャンスです。

これらを踏まえて考えると、いかにこの歌詞が山下美月の卒業曲、引いてはこれから卒業していく3期生にとっても当てはまるようなものであるかが分かっていただけると思います。

YouTubeでもこんな感じで乃木坂の歌詞考察についてなど喋っているので、チャンネル登録お待ちしてます。
更新は毎週火曜日と、不定期で土曜日の20時から。
よろしくお願いします。

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