出版業界における中国市場の可能性
最近、中国のエンタメが面白い。
劉慈欣のSF小説『三体』、そしてそれを原作とした映画『流転の地球』やNetflixドラマ版『三体』は面白い。
小説や実写映画だけではない。最近は日本でも放映が始まったアニメ『龍族-The Blazing Dawn』は日本人クリエイターも多く関わっていることもあって、とても面白かった。
最近では中国にも海外のエンタメが進出するようになり、かつ経済発展を遂げたことで、人々がそれに触れる機会も多くなった。また、中国は日本よりも人口が多く市場規模自体も大きく、一つのエンタメ作品にかけられる資本力もでかい。中国も日本と同様に少子高齢化が進行しているとはいえ、依然として日本の数倍も大きなマーケットであることは事実である。
さて、日本の出版業界は現在、危機に瀕している。漫画のない出版社の業績は軒並み悪化し、漫画のある総合出版社も将来が必ずしも安泰とは言えない。なぜなら、日本は少子高齢化による人口減少の真っ只中であり、国内市場は常に縮小しつつあるからだ。読売新聞が世界で一番発行部数のある新聞であることからわかる通り、日本は活字大国だ。ほぼ100%の識字率を誇り、国民全体に活字を読む習慣が根付いている。質の良い顧客が一億人もいる環境は出版業界にとっては宝そのものであり、それが日本の出版業界を支えてきたといっても良いだろう。
しかし、そんな日本の人口が減少するとなれば、日本の出版社も厳しい状況となる。日本の市場が小さくなるなら海外に進出すれば良いという感がけ方もあるだろう。しかし、文芸を主軸とした日本の出版社のビジネスモデルにおいて、言語の壁を越えることは案外難しい。もちろん、ライツビジネスや漫画は言語の壁を容易に越える可能性がある。しかし、それで生き残ることができるのは多様なIPと資本力を所有する大手出版社だけであり、日本に乱立する中小出版社の多くは潰れてしまうだろう。
日本の人口が下げ止まり、再び出版市場が回復するまで、どうすれば良いのか?それは、単に海外に出るのではなく、特に中国市場への進出を視野に入れるべきではないのか。もちろん、中国の人口も減少傾向にあるが、それでも日本の数倍あるのは事実であるし、何より物理的に距離が近いので、文化や価値観の面で似ているものも多い。そして、何より前述した通り、最近は中国発のエンタメ自体が成長しつつある。
中国のエンタメ作品が日本の市場を食い尽くす前に、日本の出版社が中国に進出する。そして、中国の膨大な資本力と共に、共存関係を構築する。創作プラットフォームやエンタメプラットフォームの面でも国境を超えた連携を図り、日本の出版業界がカバーする市場を東アジア全体に拡大する。観光や台湾も日本のコンテンツが受け入れられている重要な市場であるが、何せ人口が少ないので、市場規模も頭打ちになりがちだ。それに、それらの国も少子高齢化が進行しつつある。
まずは、中国を抑える。今の中国で起こっているエンタメの波を十分に吸収し、手を組む。それしか日本の出版社が生き残る道はないだろう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?