登山の何が楽しいの?

「趣味は登山です」
 僕が社会人になって500回ぐらい行った言葉だ。
 僕には登山の他にも読書や映画鑑賞などそれなりの趣味はあるが、読書も映画鑑賞もネタとしてはありきたりなので、趣味は登山というようにしている。そして、趣味は登山と言うと大体聞かれることがある。

「登山の何が楽しいの?」

 確かにわざわざ重い荷物を背負って辛い運動をすることが、良い景色を見ることに見合っているとは思えない。良い景色を見たいだけなら、車やロープウェイを使って簡単に見に行けば良いだけの話だし、仮に富士山や高尾山の頂上に車やロープウェイでいけたら登山者は減少するに違いない。となると、「登山の楽しさ=頂上での景色を見る」ではないことがわかる。
 つまり、登山の楽しさとは「体験」そのものにあることがわかるだろう。重い荷物を背負って辛い思いをするから、頂上に到着した時に達成感を味わうのであって、それらはストーリーによって体験として組み立てられている。登山を終えた後に温泉に入るから余計楽しいのであって、単に温泉に行くだけでは近所のスーパー銭湯に行く週末と何も変わらない。
 サウナの蒸し暑い空間で耐え忍ぶからこそ、水風呂と外気浴が気持ち良くなるのと同じ理屈だ。サウナに入っていない外気浴など、単に外で裸になっているだけだ。

 というわけで、「登山の何が楽しいの?」と聞かれた時、僕は体験そのものが楽しいと答えるようにしようと思う。とは言いつつも、体験とは実際にやってみないと良さをわかってもらい辛い部分もある。自分自身の言語化能力の低さに、日々失望するばかりだ。
 日々謙虚、日々感謝。

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