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初の海外で財布を盗まれた(Vol.2)
オランダ行きの飛行機が発つ日の朝。
私は機内ではなく未だにデンマークにいた。
私がやらなければいけないことは、オランダで風車を眺めることでも、のんきにアップルパイを食べることでもないからだ。
固定電話探しの旅
友人の寮を出て、自分の寮に到着したときには既に日付は変わっていた。
少し休もうと横になるも、財布がなくなったショックとこれからどうやって生活すれば良いか分からない底なしの不安で、ずっと財布を探し回って疲れ切っているはずなのに全く眠れない。
寝るのを諦めカード会社のホームページをあさっていると、緊急カードというものがあると分かった。
クレジットカード会社や銀行のなかには、海外でカードを盗難・紛失した際に、緊急で代替となるカードを発行し海外の住所まで郵送するサービスをしてくれるところがあるのだ。この緊急カードは契約者本人からの電話(コレクトコール)での申請が必要らしい。
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そして、この緊急カードには欠点が2つある。
1つ目は、カードの有効期限が短いこと。
新しいカードを再発行し手元に届くまでの「つなぎ」のような役割にすぎないので、緊急カードの有効期限は2~3ヶ月である。日本では緊急カードは利用ができないため、帰国後はすぐにカードの再発行手続きをする必要がある。
2つ目は、磁器カードであること。
機械にカードを挿入し暗証番号を入力して決済するICチップ式のカードとは異なり、緊急カードは機械にカードをスライドさせる。このカードは暗証番号を持たないため、決済の際はサインをする必要があり、主にショッピングでのみ使用が可能である。
財布が見つかるまでの間、有効期限が短かろうが磁器カードだろうがすぐにでもものを買う手段を得たかったので、このカードを手に入れるべく固定電話を貸してくれる施設を探しに出かけた。
しかし、いくつかホテルを回って訊いてみるも、設置費用が高いのでそもそも固定電話を置いていないという場所も多く、捜索はかなり難航。
ようやく貸してくれるホテルを見つけたのは、固定電話探しの旅を始めてから2時間後のことだった。
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途中、通話時間が長いと言われレセプションスタッフに電話を強制終了されそうになったが、これ以上固定電話を探す体力も精神力も残っておらず、周りの宿泊客の目も気にせずわんわん泣きながら必死に抵抗。おかげで無事に緊急カードを申請することができた。
きっと固定電話を借りに来る不審なアジアンガールとしてあのホテルの出禁リストに載っていることだろう。
北欧、緊急カード使えない問題
そんなこんなで、どうにか申請できた緊急カードは3日後寮に届いた。
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実は、カードが届く前日、ウエスタンユニオンという送金システムを使って、海外にいながら日本の銀行口座にある預金の一部を現金で受け取っていた。これで一時的にではあるが、現金もクレジットカードも使える状態になった。
やっと人並みの生活ができる。
ここ3~4日まともな食事も取っていなかったので、すぐさま近くのスーパーへ食料を調達しに出かけた。
レジに並んで、さあお会計という場面。
しかし、なぜかカードをスライドしても決済ができない。
スライドすると暗証番号を入力する画面が出てきてしまうが、緊急カードは暗証番号を持たないのでなにも入力できない。
店員にサインでの決済でいいか尋ねるもセキュリティ上暗証番号が必要だと断られてしまった。
どうしようもないので手持ちの現金でその場は支払いを済ませたが、これではこの先カードで買い物ができないではないか。
その後いろいろと調べてみると、カード社会の北欧ではセキュリティも厳しいため、暗証番号の入力を必要とするカードの利用度が高いと判明した。
つまり、機械にスライドさせ、サインをして決済する緊急カードなどの磁器カードは、北欧では使えないのではないかということだ。
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財布をなくしてから気づいたことだが、たしかにデンマークのレジにあるカード読み取り機はICチップ式カードにのみ対応しているものが少なくない。
磁気カードに対応している機械もあることはあるだろうが、きっと私が行ったスーパーのように暗証番号の入力が必要になるだろう。
磁器カードはスキミング被害のリスクも高い。莫大な量の情報を高度に暗号化し保存しているICチップは短時間ではスキミングできないため、磁器カードよりもセキュリティ性は高いのだ。
一方、磁器カードはICチップ式カードよりも作るコストが低い。もしかしたら、これが理由で、すぐに発行しなければならない緊急カードは磁器を採用しているのかもしれない。
というわけで、あんなに苦労して手に入れた緊急カードは北欧、とりわけデンマークでは使えないと分かり、しばらくは現金オンリーで生活しなければならなくなってしまった。
パン屋巡りも自粛せざるを得ないのが私にとっては一番ストレスである。
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カード停止できていなかった事件
緊急カード申請後、警察署で盗難届を書いている最中に母から電話がきた。
電話に出ると母から
「あなたのカード一枚止まっていないらしい」
という衝撃の一言。
自分で停止手続きをしたはずのカードがきちんと停止できていなかったのだ。
財布をなくしてから既に3日は経過している。
絶対不正利用されているに違いないと直感した。
日本でバイトして必死に稼ぎ、旅行にも行かず節約してコツコツ貯めたお金が見ず知らずの誰かに使われているかもしれない恐怖。
警察署の中であることを忘れ、過呼吸になるほど泣いてしまった。
このカードを利用停止にするには本人から直接カード会社に連絡しなければ行けないらしい。
とりあえずカード止めなきゃ。
盗難届を出し終えると、すぐに固定電話を探した。
目の前に観光客向けのインフォメーションセンターに飛び込み、なんとか交渉して固定電話を貸してもらう。
まだ利用が停止できていないらしいとカード会社に伝えると、実際本当にカードの利用は停止できていなかった。
幸いなことに不正利用は確認されず、盗難から3日経って、ようやく無事にすべてのカードを停止することができたのだった。
この電話中も、施設のおばさんに本当にコレクトコールか疑われ(コレクトコールで電話を掛けないと発信者側に多額の通話料が請求されるため)電話を切られそうになった。
こっちは大金を失うかどうかの瀬戸際なのだ。日本のコレクトコールの番号だから調べてもらって構わないと泣きながら訴える。
しばらくして、おばさんは私が嘘をついていないと分かると、態度が一変。
何があったのかと私を心配そうに聞いてくれ、在デンマーク日本大使館の電話番号まで調べて連絡させてくれた。私の手が震えていることに気づくと、そっと水まで差し出してくれた。
まとめ
2回に渡って、デンマークでスリに遭った経験についてまとめた。
ちなみに交通機関に乗るお金もなかったので、寮から交番、固定電話探す旅などすべて徒歩で移動した。
おかげで総歩数は4日間で10万歩。
ざっと計算したところ、総移動距離およそ70km。
これは東京都心から私の地元・茨城県かすみがうら市までの直線距離に相当する。
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本数は1時間に2本しかないので、絶対に乗り遅れてはいけない。土浦止まりの数が多すぎるので、それ以北に住んでいる県民は1度東京に行ってしまったらなかなか帰ってこられない。
まだまだ続く留学生活、今回の反省を忘れず過ごしていきたいと思う。まだ私のデンマーク生活は始まったばかり。先は長い。ここでくじけるわけにはいかないのだ。
みなさんも海外渡航の際は、盗難・紛失に十分気をつけましょう。
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