見出し画像

孤独⑤

悪夢の出来事

 これついては、今となっても本当は思い出したくない。(更新に、何週間もかかってしまった)
 8月も終わろうとしていたその日の朝8時頃、夫は寝ている娘をそのまま居間に置いて、日曜なのにも関わらずどこかへフラフラと出かけていった。夫が居ないと私が気づいたのは数十分後。電話をかけ、一体どこにいるのか、何をしているのか、日曜に子ども達と遊ぶ約束はどうしたのかを問いただした。聞けば、「ちょっと知り合いの手伝いに出ている」との事、子どもと遊ぶ約束は守ると。それならば、最低限行き先ぐらい言えるだろう!何時に戻ってくるのかなどと尋ね、電話を切った。電波のせいか夫が言うことはあまり聞こえず、イライラは最高潮に達していた。

 ありえない…。せっかくの日曜、子ども達は朝から遊べると楽しみにしていたのに、いくらまだ起きていないからって、そのまま置いて出掛けるなて。娘が起きたらパパがいなくてがっかりするのが目に見えている。
 その時、義母が呼ぶ声がして、1階に降りた。

 始めは、義母が何を言っているのかわからなかった。「子ども達がかわいそうでしょ」…と言うような事を言っており、夫が何も告げずに出て行ったことに対して言っているのかと思って私は同調した。が、その直後

ガッシャーン
「やーよ!!(お前のことだよ)」パイプ性の子ども用椅子を床に叩きつけ、義弟が言った。驚いた私は思考が止まった。他にも方言で何か言っていたようだが、何を言われたのか全く頭に残っていない。義母、義父、義弟ともに、私が子どもに対して「黙れ」などと言う暴言を放ったと言っている。数秒後にようやく理解した。

 頭の中は真っ白、足の先から手の指先まで痺れがおさまらず、目からは涙が溢れ出していた。倒れそうだった。「子どもに何を言っているんだ」と言われても、どんな状況で言ったのか全く記憶にないのだ。今思えば、おそらく夫との電話のことを言っているのではないかと思う。だがその時の私は、マザーブレインとでも言うのだろうか、状況の整理はつかず、言葉もうまく出てこない状態だった。

 「あなたはいつも子どもに酷く当たっていると〇〇(義弟)から聞いていたのよ、〇〇が注意すると言った時も、まさかとは思って(注意を)させなかった。でも今さっき、私もあえて外に出てみたら聞こえた。子どもに何でそんな酷い事を言うの」
うまく声が出ないながらも、震えながらも必死に訴えた。私はいつも1人でやっている。今だって、夫が出かけてしまっていなかった。そんな事を言ったなんて、認識していない。と。
その間も、義弟はスマホを片手に、兄である夫を呼び出しながら、「子どもに罪はないだろ」などと言っている。ようやく夫が電話に出たのであろう、「えー(おい)、どこにいるすぐ帰ってこいや、やーのトゥジあびくるされとんぞ(お前の嫁が叱られてるぞ)」
私の必死の反論には覆いかぶさるように
「そんなの覚悟の上で産んだんじゃないのか。何で責任持って育てられないのに産んだ?旦那が帰ってこないことが悪くても、そんなの(帰ってこない事)1人目の時に分かっていた事じゃないのか?第一、お前達とっくに別れてもおかしくないと思っていたのに2人目ができているし意味わからん。勢いで後先考えないからこう言うことになるんだろう」


 そして呼び戻された夫が帰ってきた。
 「お前達もう破綻している。すぐに別れろ」と義弟は連発。「お前が子ども引き取ったほうが良いんじゃないのか。よくこんなのと別れないのか意味がわからん。俺ならすぐに別れる」
「ストレスしか溜まらん。」「ずっと前から(私に)嫌悪感を持っていた」
※インスタのこの直後に記録としてアップした投稿から引用しています。

 全身の痺れと闘いながら私は言った。「私は、夫の今までの事から信頼ももう無いし、夫から信頼をとりもどそうと言う気も感じられない。このままなのは私だって嫌だ。私だって、こんなふうに夫が居ないストレスから解放されるなら、別れて子ども達と一緒に暮らしたい」

 しかし夫が言ったのは、「別れない」。「これからは自分も早く帰ってくるようにすうから、お互い気をつけよう」と。「ただ、どうしても出ていきたいなら子ども達ふたりは置いていけ」

この日私は、とても混乱しており、何もする気が起きず、食べず、飲まず。ただただ寝て自室で過ごした。

それから1週間…

義弟とは顔を合わすことなく過ごした。生活時間はもともと合わないが、朝は義弟が起きて出勤するのを見計らって1階に降り、夜も義弟が帰ってくる前に早々と2階に上がる。全身のだるさと無気力さと、これからどうするか…の頭の中のグルグルは常にあった。

毎日、毎時間。誰かしらが寝ている居間。いつも気を遣って子ども達に、「静かに!」と言って生活していたが、これを止めるのはしゃくだったので、変わらずひたすら静かにさせた。私だってストレスしかないわ。息子は時々手がつけられないほど大泣きする為、家にいる時はほぼ自室から出なかった。いつでも復帰できるよう、粉ミルクで育てていたのも、いつの間にか部屋から出ない為と節約の為に完母に切り替わった。

 3歳の娘は、「3名は嫌だ、4名が良い。ママがいないのもパパがいないのも嫌だ」と言った。保育所で敬老会に向けて教えられた「芭蕉布」や「童神」、「島人ぬ宝」「涙そうそう」一生懸命に覚えてきて歌う姿を見ると、胸が締め付けられた。
 前々から、夫と別れたらその瞬間に、私は身寄りのない迷子のようになって、この土地の全ての物が襲いかかってくるような気がして、怖かった。考えても考えても何が最善なのかわからず、そして子ども達のことを考えると、身動きができなくなる。
 心の整理は一生つかないと思った。でもひとつだけ確信したのは私がここにいる理由はただひとつ、仕事であるということ。学生時代からずっと入りたかった会社で、せっかく昇進もしたんだ。大きい会社なんだ。いつか本社に移動できるかもしれない。その頃、子ども達は高校や大学で、県外に進学させることもできる。

 今のことは…、ダメだ、すぐには動けない。ひとまず仕事復帰する来年の春まで実家に帰りたいけど、冬まで待とう。ハロウィンと、お遊戯会と、クリスマス会…それが終わった後すぐだ。ゴールを決めたら、それに向けて進むのみ。

 夫は、妻を母親のように扱う。お金をくれる人、気に入らなければ文句を言う。自分が守るべき存在とは、1ミリも思っていない。粗大ゴミ。この家に爆弾でも落ちれば良いのに。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?