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注文が多くてすまぬ

昨日は
『宮沢賢治の童話を読む』へ行ってきました

この講座は宮沢賢治の生前唯一刊行された童話集
『注文の多い料理店』に収録されているお話を
順を追って講義されます

今回は第3回
待ちに待った『注文の多い料理店』でした

注文の多い料理店
これは子どものとき
何度もなんども読み返しました

そして家の裏にある鬱蒼とした森の入口に立っては
「や、や、や、やまねこがここにいる」と
激しくビビりまくり恐れていました
(岩手の子どもあるある)

それくらい賢治の童話は
わたし達のすぐそばにあったのです


とてもすばらしい講座だったので
忘れないよう一気に書いていこうと思います

お話そのものは短いですが
とても深く興味深いものだったので
長いですがどうか

  どなたもどうかお入りください。
  決してご遠慮はありません

お付き合いくださいませ


・食べる、食べられる

現代において人間は『食べる』ことはあっても
『食べられる』つまり捕食されるってないですよね
けれど賢治はこの食べるという行為に対して
とても深く考えていたそうです

もし自分が食べ物の立場であったら
ということで
『よだかの星』
『フランドン農学校の豚』の解説がありました

賢治は熱心な日蓮宗徒で輪廻転生を信じていたので
「これは妹の生まれ変わりの可能性もある」とか
考えちゃうので菜食主義者だったんだそう

『食べる/食べられる』は
この注文の多い料理店を貫くモチーフでもあるんだそうです


・広告文から読み解く

講師曰く
「賢治は商才がまったくなく
 この童話集の広告文も本人が書いてるけど
 何が何やら売る気あるんかいな、
 初めて読む人には意味不明な謎の広告文
 けれどしっかり状況を把握して読めば
 とても深い興味深い広告」

それぞれの童話に広告文がついてます

二人の青年紳士が猟に出て道に迷い
「注文の多い料理店」に入り
その途方もない経営者から
却って注文されていたはなし
糧に乏しい村のこどもらの都会文明と
放恣な階級とに対する止むに止まれない反感
です

宮沢賢治 注文の多い料理店 広告文

このお話にはこどもは一切出てきません

なのに
『貧しい村のこどもら』
これは誰を指しているのか

……ワタスのことでした

山背が吹き土壌もよくない
不作なんてもんじゃない
飢饉ばかりの岩手の貧しいこどもら

わたしたち貧しい岩手のひとびとが
実はこの物語の裏にはいたのです

ナルホド
何度も繰り返し読んだわけだ


・言霊が支配する

このお話は二人の青年紳士が山猫に騙される
そのように描かれていますが
よくよく読むと
この二人の青年自らの言葉で
山猫の言葉を勝手に自分に都合よく解釈して
そのようになっていくのです

始まりに二人が連れていた二匹の犬が死ぬんだけど
猟をして鹿を撃ったらこんな風だろうね
という会話の直後に犬はそのような死に方をします

彼らは生きていくための猟をする猟師とは違い
遊びで猟をしています

「なんでもいいからタンタンターンとやってみたい」
なんでもいいから遊びで命を奪うのです

山の神(山猫)がいる領域で
口にしてはいけないことを口にしちゃったのね

彼らは犬が死んでも
「二四〇〇円の損害」
「二八〇〇円の損害」と損得のことしか言わない
(2000円は現代の250万円くらい)

そして彼らはいつの間にか方角を見失っている
猟がうまくいかなかったので帰りに宿で
「山鳥を拾円で」「兎でも」
買って帰ろうと算段する

犬、鳥、兎、これって十二支
そして十二支は方角も示すけれど
犬、鳥の方角と兎は正反対

迷ったのは自分たちが
口にした言葉が呼び起こした事態


物語の季節は秋も深まりもうすぐ冬
こんな季節に彼らは
「なにか食べたい」と簡単に言い
そして『山猫軒』という
りっぱなレストランが現れる

お金で簡単に食べ物を得ることができる
「都会の放恣な階級」に対して
わたしたち貧しい岩手のこどもたちは
「なにそれ、」と反感を抱く

最初に書いた賢治の広告文に繋がってゆくのね

因みに山猫軒はたぶんここを
模倣して書いたんじゃないのかと思われる
盛岡にある『公会堂多賀』は
子どもの頃めちゃくちゃ憧れてた
超高級レストラン
ついに行くことが叶わなかったところです


・二人の青年紳士と時代背景

この童話が書かれた1920年代前半って
第一次世界大戦の特需景気で
大戦成金がたくさんいたんだそう

物語に出てくる二人は名前がない
名前がないどころかA、Bという区別すらない

この都会でたくさん発生した大戦成金
いっぱいいるステレオタイプの彼らに
名前は必要なかった

同じように物事を考え
「この奥には偉い人がいるに違いない」と
扉が現れるたびに何度も何度も繰り返し
成金であるがゆえに
『本物の』お金持ちと知り合いになるため
怪しい注文にも疑問をいだかず奥へ奥へと進んでしまう

講師の
「友達選びって大切
 似たようなことを考える人ばかりだと
 間違いに気づけない
 違う考えを持つ人は大切にしないと」
って言葉が身に染みました

この二人の滑稽さは
扉に書かれている言葉に対する反応で
とてもよく表現されてるし
装いが『すっかりイギリスの兵隊のかたち』で
当時のひとたちが読めば
戦争成金が岩手の山奥へカッコつけてやってきた
って分かるんだそう

時代背景をしっかり学んでから本は読むものだ
最初の講義で講師が言っていたことが腑に落ちます

今だったらアルマーニのスーツに
バーバリーのコート
クロムハーツのアクセサリーじゃらじゃらつけて
岩手の山奥へ入ってた、って感じね


・ラストシーン

死んだはずの犬がやってきて
二人を助けたように見えますが
実はそうではなかったという衝撃

解説をききながら
「ひょっえー」ってなっちゃった

けどそうよね
死んだのにお金の損ばかりいう人を
犬だって助けたくないよね

『専門の猟師』が助けに来てくれて
猟師の持ってきた団子をこの二人は食べ
やっと安心します

専門の猟師=山猫に認められている

そして地に足をつけて暮らしてる岩手の猟師は
やっぱり助けに来て貧しい中から団子を
都会の放恣に分け与える

けれど二人の顔は紙くずのようになったまま


前回も書いたけど
賢治は
『本当の食べ物はなにか』を問いかけています

100年前に書かれた童話でしょ

古い古いばかばかしい
一円にもならない

そう思う?

そんなアナタは本当の意味で
世界のオオタニを理解できない

イーハトーブの世界には招かれない




いけばな教室 西宮市
へなうさ工房:甲子園球場そば
090-8214-8739(葉に意思、花咲く)
8739sshuho(@)gmail.com



#扉の文字の解説は長くなるのではしょりました
#聞きたければへなうさ工房へどうぞなのだ

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