【読書記録】2024年4月

5月も半ばを過ぎてしまいました。暑い日が増えてきましたね。すでに気温のアップダウンの激しさに身体がついていきません……。
今回は4月の読書記録です。



1冊目:浅倉秋成『六人の嘘つきな大学生』

あらすじ(文庫裏表紙より引用)

IT企業「スピラリンクス」の最終選考に残った波多野祥吾は、他の五人の学生とともに一カ月で最高のチームを作り上げるという課題に挑むことに。うまくいけば六人全員に内定が出るはずが、突如「六人の中から内定者を一人選ぶ」ことに最終課題が変更される。内定をかけた議論が進む中、発見された六通の封筒。そこには「●●は人殺し」という告発文が入っていた――六人の「嘘」は何か。伏線の狙撃手が仕掛ける究極の心理戦!

浅倉秋成さんの小説は初めて読みました。11月には映画も公開される予定のこの作品は単行本を見かけたときからずっと気になっていました。

とても面白くてあっという間に読了してしまいました。
就活生の闇を描いているようでいて、採用側である企業の闇を描いているような気もしました。
企業が自社を魅力的に見せようとそれはそれは美味しそうな餌をチラつかせるから、就活生はそれを得ようと嘘をも武器にして就活に挑んでしまうよな……と。

未来の姿は就活時にそれぞれが描いたものではないかもしれないけど、就活生ではなくなった彼らの本来の姿も物語の中で窺うことができて良かったです。本当の悪人などいなかったのだと。

映画も楽しみです。どんな風になるのかなあ。山下美月さんがキャスティングされているのが嬉しいです。



2冊目:宿野かほる『ルビンの壷が割れた』

あらすじ(文庫本裏表紙より引用)

「突然のメッセージで驚かれたことと思います。失礼をお許しください」ーー送信した相手は、かつての恋人。フェイスブックで偶然発見した女性は、大学の演劇部で出会い、二十八年前、結婚を約束した人だった。やがて二人の間でぎこちないやりとりがはじまるが、それは徐々に変容を見せ始め……。先の読めない展開、待ち受ける驚きのラスト。前代未聞の読書体験で話題を呼んだ、衝撃の問題作!

宿野かほるさんも初めましての作家さんです。

SNSのメッセージ機能を使った往復書簡形式で進む作品でした。
往復書簡で進行する小説といえば一番に宮本輝さんの『錦繡』が思いつきます。手紙風な小説だと井上ひさしさんの『十二人の手紙』とか。どちらも好きな作品です。

この『ルビンの壺が割れた』は元恋人をSNSで見つけた男性がメッセージを初めて送るところから始まります。このメッセージで彼女を見つけた過程も語られていますが最後まで読んでから振り返るとそこからしてすでに気持ち悪いです。

学生時代の思い出を語り合っているだけかと思いきやどんどんと雲行きが怪しくなっていく。そして訪れる最後の1ページ、最後の1行。太文字フォントのその1行がスカッとします。



3冊目:原田ひ香『三千円の使いかた』

あらすじ(文庫本裏表紙より引用)

就職して理想の一人暮らしをはじめた美帆(貯金三十万)。結婚前は証券会社勤務だった姉・真帆(貯金六百万)。習い事に熱心で向上心の高い母・智子(貯金百万弱)。そして一千万円を貯めた祖母・琴子。御厨みくりや家の女性たちは人生の節目とピンチを乗り越えるため、お金をどう貯めて、どう使うのか?

原田ひ香さんの小説は3冊目かな。読んできた3冊の中で一番ピンと来なかったかもしれない。

美帆の婚約者が全然良い人と思えなかったのが原因で結末に全く納得がいかなかった。
琴子さんの堅実さが好きなので「お前らちゃんとお金返せよ……」としか思えなかった。

物語の中の出来事に対して現実的に突っ込むのはナンセンスだとわかっていても相手方の家族が地雷臭しか感じなくて結婚しても前途多難が目に見えていて祝福できないと思ってしまった。



4冊目:くわがきあゆ『レモンと殺人鬼』

あらすじ(文庫本裏表紙より引用)

十年前、洋食屋を営んでいた父親が通り魔に殺されて以来、母親も失踪、それぞれ別の親戚に引き取られ、不遇をかこつ日々を送っていた小林姉妹。しかし、妹の妃奈が遺体で発見されたことから、運命の輪は再び回りだす。被害者であるはずの妃奈に、生前保険金殺人を行っていたのではないかという疑惑がかけられるなか、妹の潔白を信じる姉の美桜は、その疑いを晴らすべく行動を開始する。

くわがきあゆさんも初めまして!

「同じ一人称で語られている=同一人物である」という読者の思い込みを利用した小説だと思いますが、この手法を一つの物語の中で多用されるとクドイんだな……と思いました。

展開が面白くてサクサクと読めるけど、ラストスパートはグロいです。グロテスクな描写が苦手な方は注意した方がいいかもしれません。



5冊目:山田詠美『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』

あらすじ(文庫本裏表紙より引用)

ひとつの家族となるべく、東京郊外の一軒家に移り住んだ二組の親子。それは幸せな人生作りの、完璧な再出発かと思われた。しかし、落雷とともに訪れた長男の死をきっかけに、母がアルコール依存症となり、一家の姿は激変する。「人生よ、私を楽しませてくれてありがとう」。絶望から再生した温かい家族たちが語りだす、喪失から始まる愛情の物語。

読んでいて切ない気持ちになる小説です。

あらすじには「絶望から再生した」と書かれているけど、私には再生したとは思えませんでした。
どちらかといえば、この物語の結末を足掛かりにやっと再生への道を歩んでいくのかな、と感じました。

4人兄弟の次男に創太という男の子がいます。彼の幼少期の必死さも大人になってからの足りないものを埋めようとする感じもずっと切なくて、創太に「報われてほしい」「幸せになってほしい」と願いながら読了しました。



おわりに

4月は5冊の読了でした。4冊は積読消化だったのでまずまずかな、と。
5月もぼちぼち読んではいますが、今のところ積読を増やしています。

先日夫に積読の中に最長で3年積んでいる本があると言ったら「それを優先的に読んだら?」と言われてしまいました。夫の意見は尤もなんですが、読みたくて購入していてもいまはその本の気分ではないというのは読書界隈のあるあるじゃないですか……

でも流石に3年は寝かせすぎかな、と私自身思ってはいるのでそろそろ着手したいです。

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