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立体テクノ ミックスダウン実務

こんにちは、Nacoです。

クラブ系トラックをハウスとテクノに大雑把に大別するなら、テクノはハウスに比べてサウンドデザインに拘る傾向があります。その方針は得てして「立体的」であることが多く、また「立体的=音が良い」と認識されます。

例えばこちらのトラック。

Timedandeの名手Metristのトラックです。真横から音が鳴っている印象です。めちゃくちゃサイドに広げてゲインを稼いでいる…?

続いてこういうのも。

フランスのレフトフィールドレーベルParadoxe Club運営メンバーLe Domのトラック。こちらも面白い処理をしています。低音の処理が特に上手だなと感じます。ちなみにアートワークとティーザービデオはWeirdcoreの仕事。

これら2曲はややオーバーなMS処理が施されていますが、立体的なミックスのヒントになりますのでまたゆっくり聞いてみてください。なお、ハウス路線ではLuke Vivertが規格外です。

では前置きはここまでにして…立体的に聞かせるミックスダウンにおける、個人的TIPSをご紹介します。制作の一助になれば幸いです。

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ミッドとサイドの音量をコントロールする

立体感をデザインする上で、音を広げる(サイド成分を増やす)処理以上に重要なことが、相対的に考えてデザインすることです。つまり、ミッドとサイドの関連性をこしらえてあげる必要があります。最もシンプルな方法はWaves Centerを使うことです(めっちゃ安いな・・・)。

センター(ミッド)とサイドのレベル調整と、各信号のかんたんな処理が可能です。これ以外にもたくさんありますが、分かりやすさが群を抜いていると感じます。

ミッドのみをブーストする

サイドに広げたトラックのミッド成分をブーストします。ガッツのある音に仕上がるのでお勧めです。僕はFabFilter Pro-Q3でMidをブーストするのが好み。赤枠のところでどの信号にアプローチするか選択できます。この処理のメリットは、まさしくミッドの特定帯域のみを強調できることです。自身のアレンジで活きるかどうか試してみてください。ハマる人はクセになると思います。

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トランジェントシェーパーでアタックを作る

アタックは早ければ早いほど、強ければ強いほど手前に出てきます。手前に配置したい音はトランジェントシェーパーを使ってアタックを作ります。僕はiZotope Neutron3 Transient Shaperを使っていますが、調子に乗っているとピークがすぐ0dbFSを超えてしまいます。そこで、イメージをあまり損なわず抑え込んでくれるSonnox Oxford Inflatorがおすすめです。個人的には重宝しています。

尚、リミッターは各社アルゴリズムにかなり違いがあるので、安いタイミングで色々買い漁っても損しないと思っています。

ゲートでアタックを微調整する

上述したトランジェントシェーパーの前にゲートを挿すことがあります。低ダイナミクスのオーディオファイルの場合(アンビエンスを多分に含んだファイル等)、うまくトランジェントが検出されないときがありますので、ゲートでケツを削ります。…というのは基本中の基本なのですが、コンプと同程度に重要なダイナミクス系エフェクトであるにも関わらず、話題に挙がりにくいので敢えて記載しました。コンプの話しはみんな好きですよね。でも、ゲートも同じくらい重要です。

ショートディレイをセンドで送る

CPU性能とプラグイン軽量化の両面で進化し続けた結果、空間系エフェクトも躊躇なくインサートされるようになりましたが、立体感の演出におけるショートディレイはセンドがお勧めです。センドで送ることで原音が損なわれずに、最初に書いた相対的な関連性を維持できるからです。また、ディレイタイムはシンクを切ってmscを使います。最短よりやや上を指定し、ステレオに広げます。更にハイパスをかけて濁りをなくせば、音がぱっと明るく広がる筈です。以上の処理は、Waves H-Delayで完結します(これも安・・・)。

ショートリバーブをインサートする

リリースタイム最短のリバーブを使いましょう。リバーブはディレイと違ってインサートをお勧めします。ステレオイメージも広げておきます。原音とリバーブは5:95の比率から始めて、頃合いのいいところを見つけてください。僕はFabfilter Pro-Rを頻繁に使っています。

キックをタイトにする

キックが膨らんでいると「立体感」が損なわれます。そもそもアレンジ時点でタイトなキックを使うほうが無難です。ミックスダウンでは100~300Hz辺りを削るとタイトになりやすいです。「ドン、ドン」ではなく「タンッ、タンッ」と鳴るキックだと立体テクノ感が出やすいです。ちなみにリリースタイムが短いほうがよりタイトになります。気になる場合はゲートでリリースを切りましょう。

センドでエキサイターを送る

一般的にエキサイターはインサートで使いますが、旨味をどれだけ送るかを調整できるようになるため、センドのほうが自然な仕上がりになりやすい気がします。また、エキサイターを通した音は倍音が付加され主張が強くなるため、先述したトランジェントコントロールと併用していきます。

しっかり踊らせたいならモノラルが最強

最後にひとつ。立体的な処理を突き詰めていくと、人によってはモノラル恐怖症になるのですが、現場ではモノラルが最強です。自宅やスタジオでのリスニングを想定しない場合は、全チャンネルモノラルでもいいんじゃないかとすら思っています。だから、ハウス(やその流れを汲むトラック)には立体的処理は不要かつナンセンスだと考えています。これについては異論等々あると思いますが、個人的にはそう考えているってハナシです。

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おわりに

立体的な音って好きな人は本当に好きだけど、それに特化したTIPSって中々無いよなぁ〜…と思いこの記事を書きました。僕自身まだまだ修行の身ですが、ミックスダウンのヒントになればいいなと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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