vol.13イタリア買い付け旅行記「カフェシチリア衝撃の試食会」
10月1日(火)Siracusa(シラクーサ)からNoto(ノート)へ
「今回のハイライト」
・歴史ある街シラクーサと世界遺産の街ノートを堪能する
・ノートの街の中心部で「カフェシチリア」オーナーに面会
・味わったこともないドルチェの数々に圧倒されっぱなし
最終バスに乗り遅れ、予算オーバーのタクシーでやっと深夜10時にチェックインしたホテル「ホリデイ・イン」。考古学研究が進むギリシャ時代の遺跡地帯のど真ん中にあります。朝、朝食後に散歩してみると、朽ち果てた大きな大理石がごろごろしてます。アルキメデスが暮らした街。
町の中心部までは徒歩10分程度で行ける模様。目の前に「AGIP」のガソリンスタンド。「ホリデイ・イン」はアメリカ系のホテルチェーンです。たいていイタリアのホテルといえば、ほとんどがヨーロピアンスタイルかアメリカン・スタイル。ビジネスに向くのは後者かな。
宿泊代は安くてもたいてい近代的な設備が整っている。電話ひとつとっても、きちんと日本と同じモジュラージャックの室内機。これだと、ノートパソコンがすぐに接続できますね。ゼロ発信で最寄のアクセスポイントに接続すれば、直ちにメールチェックが可能に。
注)これは2002年の旅行記録。2020年では小さなホテルもほぼWIFI環境がが整っています。当時はネットアクセスが大変な時期でした
朝食はセルフサービスのバイキング。ハム・ソーセージから卵焼き、トースト、チーズ、果物、ヨーグルト各種それにコーンフレークが食べ放題。地元産の搾りたてオレンジの生ジュースさえも無料で楽しむことができました。
たっぷりと朝食を摂ってゆっくりしていると、約束の9時半が近づきました。今日は「カフェ・シチリア」から私を迎えに来てくれる予定。シラクーサからノートまではとても交通が不便で、電車はあるけど2時間に1本だしバス乗り場もかなり遠い。土地勘がないので迎えを要請したのです。
お迎えの車が到着
ホテル入り口脇の椅子に座って待っていると、1台のフィアットが現れました。ホテル内唯一の東洋人のワタシを見つけ、女性が歩み寄ってきてました。「ピアチェーレ(宜しく)!
こんな風に、あっさり彼女のフィアットに乗り込んで話を始めます。会話はすべて英語。彼女の名前はマリオ・ハイマン。聞けば彼女はドイツ人。かつてシチリアに旅行に来て、今のご主人と結ばれたのだとか。私とほぼ同年代のようです。
「シラクーサの素敵なところは、実はこのあたりじゃないのよ。本当に景色のいいところをちょっと案内してあげるけど、どお?」と聞かれ、今日はたっぷり時間をとってあることを告げます。レッツゴー!
彼女がクルマでシラクーサの海岸に突き出た半島部分に突き出た「オルティージャ(シラクーサの旧市街)」と呼ばれる場所に案内してくれます。かつてこの地域が諸外国との交易でとても栄えたという。メルカート(市場)や、行政の中心部もこのあたりに集中し、港町の面影を残しています。一方では目抜き通りにベネトンやマックス・マーラも軒を連ね、美味しい料理屋もこのあたりにあるのです。
世界遺産の街ノートへ
シラクーサの町を15分程度で一周し、いよいよ目指すカフェ・シチリアのある「ノート」へ高速を飛ばします。シラクーサからノートは約30キロほどの距離。時間にして30分程度でしょうか。市街地を抜けると、民家すら発見できない広大な畑が延々と続いていました。
これらの畑ではアーモンドやオリーブ、トマト、オレンジ、レモンなどが植えられます。ところどころに見える白っぽい岩肌はとても乾燥していて「内陸は砂漠同然」といわれるシチリアを彷彿とさせる異質な光景です。
今年はかなり暑い日が続いたようで、水不足が懸念されているとか。大雨で冷夏が続いた北イタリア方面とはまったく違う悩みです。この日も日中はほとんど半袖でオッケー。強烈な太陽光が降り注ぎ、サングラスが不可欠です。あとで帰国して気づいたのですが、実は相当日焼けしていたのでした。
ノートの町は小ぢんまりとした町です。18世紀に大きな地震があり街は壊滅。その後、スペイン人によって再興された町並みは「バロック様式」の建物ばかりです。たとえば窓に設けられたバルコニーの下側に、華麗な装飾が施されていて、見上げるととても優雅。
建物の壁の色がほとんどどの家もベージュ色で統一されているし「屋根瓦」は薄いオレンジ系で、ちょっとスペインを思わます。町を遠くから眺めると、カベの色のせいか、はたまた強い太陽光のせいか、町全体が「金色」に輝いて見えるのです。
スペイン人やシチリア人の金持ちが別荘を建てて住みつき、その結果、富裕層が多く暮らす町だそう。それらが相まって、ユネスコ世界遺産に登録されたのだと推察します。
町のド真ん中に佇む荘厳な礼拝堂(ドゥオモ)のすぐ隣りにあるカフェが、かの「ミエラーロ」の製造元「カフェ・シチリア」。チョット見では、地味な普通の「カフェ」そのもので、拍子抜けする小ささです。
コラード兄弟との出会い
迎えてくれたのは、経営者カルロ(兄)とコラード(弟)の兄弟。にこやかに笑みをたたえ握手を求めてきました。今まで彼ら二人とは「メールのやり取り」だけのつきあいでしたが、ここで顔を突き合わせ、言葉を交わします。これは感激の瞬間。
早速、店の奥のに3人で陣取ります。
カルロ「小さなカフェだけど、実は地下に広い工房があるんだ。これはと思う厳選した原材料を惜しみなく使って、100% 手作りで製品を一つ一つ完成させているんだよ。」
コラード「あとで地下の工房を案内してあげるよ。その前に、俺が作った自慢のドルチェを試食してよ。最初はまず、クラシックタイプのドルチェからにしようかな。」
そしてこのあと、目の前に「デザートわんこそば」が繰り広げられることになろうとは!
試食会@ "Caffe Sicilia"
兄弟で経営している「カフェ・シチリア」の商品たちは、弟で白いヒゲを蓄えたコラード・アッセンツァ氏によって全て考案されていた。数人の職人をかかえて自らも忙しく動き回り、毎日新しい「デザートレシピ」をひねり出していたのでした。
注)2020年現在、コラード・アッセンツァ氏はイタリアドルチェ界の帝王として様々なメディアに出ています。
店に到着した11時から午後3時までの4時間に渡り、熱心に語りかけてくるコラードさんの言葉に耳を傾け、メモと写真をとりながら試食会は進行していきました。
まず出されたのは、ノートの一番の名物「アーモンドの実」を使ったデザートでした。それが「Crema di mandorleクレマ・ディ・マンドルレ」。ママレードやジャムと同じ瓶に、すりつぶされたアーモンドの実のペーストがたっぷり詰め込まれています。
シチリアのアーモンド?
「Mandorleマンドルレ」は、イタリア語で「アーモンド」。他の商品同様,味付けは砂糖のみで「添加物」をまったく加えていません。コラードさんがスプーンですくっておもむろにグラスに入れ、水を加えてかき回し始めるとアラ不思議!香ばしい「アーモンド・ミルク」がカンタンに出来上がってしまいました。
とっても美味しい!!こいつを「ジェラート」にしたら美味しいだろうな・・・。
「このアーモンド・ミルクを固めたものがベースになってるんだ。」出されたデザートは白い「ババロア」のようなもの。周囲を緑色したピスタチオ・クリームで固め、トッピングとして「オレンジスライス」や「オレンジのはちみつ」を使っています。これが郷土料理でもある「カッサータ」。
アーモンドに、ピスタチオ、オレンジ。この地を代表するものだけで作られた極上のデザートは甘さもほどよく、なによりも「ナッツ」「果物」の自然の美味しさが良い。「これがクラシックスタイルのデザートなんだ」とコラードさん。
欠かせない「ピスタチオ」!
次に出されたのは、スポンジを使った今風の小さなケーキ。「こっちは現代版だよ」言葉どおり「デパ地下」のケーキ屋さんで見かけるフレンチスタイルのケーキたちです。
グリーン色がかったスポンジには「ピスタチオ」を混ぜてあるそう。これを、ザバイヨーネなどと組み合わせて何層かに積み上げ、ときどき「ミエラーロ」を使って甘さのアクセントを加え、トッピングに「厳選されたチョコ」を削ったものが飾られます。
「そうか。。。ミエラーロはこんな使い方をするんだ!」感心しながら、うっとりする上品な甘さのケーキに舌鼓。うん!最高だ。
リキュールとミエラーロ(特殊製法のはちみつ)
今度は趣きを変えて「ジン」「ラム」「カンパリ」が出てきます。不思議に思ってみていると、コラードさんがおもむろに小さなグラスを3つ用意している。
それぞれ強いお酒で、ワタシもよくオレンジジュースで割って晩酌代わりに飲んだりします。そこに彼は「ミエラーロ」をスプーン一杯分ほど投入し、かき混ぜます。
「ちょっと飲んでみて!」と勧められて口にしてみると!!
これまたオイシイ!「オレンジピール」を漬け込んだ「ミエラーロ」が、まさかこんな風にして、カクテルベースになってしまうとは!
普通、カクテルベースにはグレナディンシロップとか使いますよね。「ミエラーロ」はとても溶けやすく、オレンジ特有の「甘さ」が加わります。カクテルベースとしてもいいけど、そのままグイッと飲むのもイケる!
チョコレートのジェラート
もともと「カフェ・シチリア」は、19世紀末に創業した大衆向けの「カフェ」。顧客の住民貴族たちに人気なのは「ジェラート」。今でも店の入り口脇にはエスプレッソマシンの横、カウンターのド真ん中に10種類以上のジェラートが、美味しそうに並びます。
コラードさんが推奨してくれたイタリア製チョコレートは、3種類。
「DOMORI(ドモーリ)」「MAJANI(マイアーニ)」「AMEDEI(アメデイ)」。これらのメーカーの持つカカオ豆の品質は、他のメーカーに比べて「段違いに優秀」だと言います。
イタリア・ミラノに在住の日本人Ayako嬢からいただいた情報によれば、ミデパート「リナシェンテ」地下のバールで、ジェノヴァの「DOMORI」チョコレートが販売されているという。
また、現在モデナに留学中でジュエリー関係のお仕事をされているTF様からお寄せいただいたメールによれば、「MAJANI」お膝元であるボローニャやモデナのバールでは、やはり「MAJANI」のボリューム感のあるチョコが人気とか。
この冬、百貨店のバレンタインフェアで提供する「MAJANI」のチョコレートは、ここ「カフェ・シチリア」の店頭でも同じ様に販売されていました。「趣味趣向」が似ているというのでしょうか「類は友を呼ぶ」。奇遇ですね(^^)!
地下の手作り工房を見学!
地下の「工房」を見学させてもらいます。傾斜している土地なので、通常の1階のような場所。連続した小部屋では手作りでケーキがどんどん量産されています。美男子の助手君と、コラードさんを記念撮影!
「ミエラーロ」や「オレンジマーマレード」の製造方法は、とてもシンプルで明快。ポイントは旬の「新鮮な」素材をぜいたくに使うことと、砂糖だけを使ってコラードさんの「さじ加減」で「丁寧に」作り上げることにつきます。
一瞬で瓶詰めにすると、あんなにも鮮度のよいマーマレードや贅沢な香りの「ミエラーロ」が出来上がるというわけ。スゴイことですね!オレンジやレモンに飽き足らず、新作の「ミエラーロ」も見せてもらいました。これは「企業秘密」なので明かすことはできませんが。。。
兄・カルロさんは言います。
「全部俺たちの手作業だから、たくさん注文が来ると大変なんだ。夜中の12時まで、ラベルを貼ってたこともあるよ!」と。たまに「ミエラーロ」のラベルが「斜め」に貼られていたりするのは、そのへろへろ状態のときの作品だったのか。しょうがないなぁ(苦笑)。
小さな工房ゆえ無理なことは言いません。それもまた「味わい」じゃないですか!
注)2002年当時、写真の店頭販売ミエラーロ100cc瓶各種を、それぞれ税抜き1200円でネット販売していました。現在は業務用のみとなっています。
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