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【競馬】ディープインパクトの最高傑作すら牝馬の壁に阻まれた事実は重い/大阪杯振り返り

19年有馬記念、リスグラシュー5馬身。
20年宝塚記念、クロノジェネシス6馬身。

直線でみるみるうちに後続を引き離していく、あっけにとられるほどの強さ。近年の日本競馬を象徴するように、牡馬相手のG1で牝馬が圧巻の強さを見せつけるシーンをここ数年で何度も見てきた。

そして今年も。

古馬中長距離路線の開幕戦ともいうべきG1大阪杯で、レイパパレが4馬身もの差をつける圧勝を飾った。これまで5戦5勝とはいえ、G1は初出走。一線級との力関係は未知数だった。ましてや相手は三冠馬コントレイル。そう簡単に通用するようなシチュエーションではなかったはずだ。

にもかかわらず。

前半1000m59.8秒は馬場を考えるとなかなかタフなペース。決して展開利に乗じた逃げ粘りではない。後続の脚を削りながら、自らは二の足を使って突き離すという文句のつけようがない勝利。わずか422kgの小柄な牝馬が、強雨に濡れた阪神競馬場の重馬場というタフなコンディションでこれほどまでのパフォーマンスを発揮するとは。

手綱を取った川田将雅ですら「本当にすごいことをした」と舌を巻くほどだから、我々もただその衝撃に打ちのめされるばかりである。

そして、コントレイルが完膚なきまでに叩きのめされてしまったという事実は重い。展開や位置取りの言い訳すら許されない、紛れもなき完敗だった。確かに馬場に苦しめられた部分はあっただろうが、その程度の条件を敗因にしてもらっては困る。この馬に求められるのは「ディープインパクトの後継者」レベルだったはずだ。

プラス16キロの馬体重は心身の充実ぶりを示す数字に映ったし、実際パドックでの様子を見ても太め感も気負いもなし。成長したコントレイルの姿がそこにはあったように見えた。
ゲートで少しガタガタする素振りは見せたもののスタートは五分に。出たなりのポジショニングで中団やや後方に構え、3角手前からグランアレグリアを標的にジワリと進出を開始。併せ馬状態で直線に向かってくるシーンは迫力十分だったが..
そこからの脚色に余裕がなく、レイパパレに迫るどころか後ろから脚を伸ばしてきたモズベッロにまで先着を許すショッキングな結果になってしまった。

良馬場ならこんなことにはならなかっただろうし、平均ペースで末脚を削られてしまったのも敗因の一つとしては考えられるだろう。しかしこの一戦でわかったのは、あらゆる条件を問わず高いパフォーマンスを発揮してきた父ディープインパクトと双璧を成すレベルの馬ではないということ。そもそも「3000mは向かない」と天皇賞回避を決めた時点で、それはわかっていたのかもしれないが..
もちろんコントレイルがこの敗戦を糧に、次以降また勝利を重ねる可能性は十分にあるだろう。ただ、この敗戦で「こういう条件には弱い」という注文がついてしまったのもまた事実。引退まで威光を保ち続けるという使命は、どうやら果たせずに終わってしまいそうだ。



グランアレグリアの挑戦は4着に終わった。だが何ら恥じることはない。コントレイルをばっきばきに意識したレース運びにはマイル女王としてのプライドを感じたし、この馬こそ馬場次第では勝機も十分にあっただろう。改めて陣営の英断には敬意を評したいし、ぜひとも秋の天皇賞に再チャレンジしてもらいたい。むしろその方がチャンスは大きいのでは。

サリオスは積極策に出て力は出し切れたように思うが、完敗の5着。直線で外に持ち出すタイミングがなく、馬場の悪いラチ沿いを一頭で走る形になると闘志にも火が灯らなかったことだろう。こちらも良馬場で見直したい。

そしてさすがは雨のモズベッロである。昨年の宝塚記念に続く、道悪での激走で波乱を演出。名前を挙げるだけなら簡単だが、このメンバーでいざ実際に馬券を買うには勇気がいる。そんな伏兵。



コントレイルが馬場どうこうで負けてしまうレベルだったのは正直まあまあショック。そしてレイパパレは間違いなく一発屋ではない「本物」の勝ち方だけに、今後どこまで連勝を伸ばしていくのか楽しみでしかない。

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