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【読書のおと vol.18】

かぞくの南京錠  竹内清人  幻冬社  2021年

 

 この本もなぜ借りたのか思い出せない。タイトルか装丁のイラストか。何か惹きつけられるものがあったのだろう。

 本を開いた瞬間、2段書きになっていて、これはちょっと長いぞ、と読み始める前にひるんでしまった。

 戦中から平成まで、親子三代の金物屋さんの話。知った地名が出てくるのと、しかもそれが身近なところだから、興味を持って読み始めた。文章の多さは、内容の楽しさで感じなくなった。読み進めながら、これはフィクションか、ノンフィクションかと疑問がわいたが、そんなことは置いておいてひとまず小説として楽しもうと思った。

 商売のことについてはこれはビジネス書かと思うほど詳細に書かれている。また、それぞれの時代背景も歴史小説かと思うほど詳しい。たまにファンタジックなシーンも出てくる。それぞれの関係性も、読み進めるとわかってきて、だんだんと楽しくなってきた。
 タイトルの「南京錠」も意味を持っていて、その謎もだんだんわかってくる。読了感は爽やかだ。

 あとがきを読んで、これが社史であることがわかった。なかなか面白い企画ではないか。物語はフィクションであるが、こういう時代を100年間も生き抜いてきた会社であることは、社外の私にも伝わってくるし、その会社にも商品にも興味がわく。目的はそうではないにしても好感度がアップするのは間違いない。ここに出てくる初代の思いは商売をしていない私にさえも心に響いた。人生訓のような物語だと思う。

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