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せっかくの旅を、のこそう

旅日記をつけている。

いちばん最初につけたのは、10年前のオーストラリア旅行。せっかくの海外だし、とミーハーな気持ちで書いた。白い手帳に、さささとペンを走らせたイラストと文字。

それからというもの、国内旅行や日本に一時帰国するたびに、旅日記をつけている。といっても、回数は多くない。いま数えなおしたら、記録した旅は7つだった。おまけに、最後まで書かずに終わっている旅もある。

記録としては不完全なのだけど、読み返すと「ああ、こんな所にもいったな」と記憶がよみがえってきて面白い。

写真も旅を「残す」ツールだけど、旅日記はちょっと違う。私だけかもしれないけど、旅日記なら書いた分まるごと旅を保存できる。出発→電車に乗る→A地点でランチ……と旅程がそのまま記録されているので、記憶のなかで旅をなぞるのにちょうどいい。

もちろん、途中で終わっている旅日記は、それ以上は進めないのだけれど。

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はじめての旅日記は、英語で書いた。なぜかというと、てんでダメな語学力を少しでもマシにしようと思ったから。こうして見返すと、本当に英語力が地を這っていたことがわかる。

字の汚さはさておき、書かれている「Bankrupt」という単語。「破産」という意味だ。きっと、お目当てのレストランが閉まっていて、ほかの場所で食べたと書きたかったのだろうけど、わざわざ難しい単語を辞書で調べて使うあたり、英語がダメです.感が漂っている。

お次は、2012年に日本へ一時帰国したもの。2年半ぶりの日本、まだ娘もいなかった頃。身軽な二人だったので、会いたい人に会おうと予定を詰めこんだ。

出発当日の朝まで、スケジュール調整や下調べに費やしていたのは、いまではよい思い出(いまは、ぜったいできない。子連れ旅に向けて体力温存しなきゃ)。あちこち歩き回っているあたり、子連れ旅行ではできない気軽さを味合わせてくれる(いいなあ)。

こちらは、8か月の娘を連れて帰国した際のもの。

近場のイオンの授乳室が綺麗でおどろいたと書いてある。あと、体重計があったのが衝撃だった。娘は6.4キロだったのか……娘は平均よりも小さいのだけれど、いまより10キロも少なかったなんて驚きだ。

あと、めちゃくちゃパンを食べている。8か月の幼児を連れての外食は、ハードルが高い。手軽に買えるおいしいパンは、0歳児親の娯楽だった。

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最近の旅日記には、最後に旅行での反省点(ここに行くのが楽しかった、次回はこれを持っていこう)を書き、次の旅に託す。しかし、子どもが大きくなるにつれ、旅のスタイルも変化するので、残念ながら反省点が生かされることは、あまりない。

何回か旅日記をつけて学んだのは、「その日のうちに書ききる」ことが一番大切だということ。なぜなら、翌日はまた新しい旅の予定が待っている。過ぎ去った旅の思い出は、新たな旅に押し出され、もう二度と戻ってこない(つまり、忘れる)。

移動中とか、寝る前とか、ささっと筆を走らせる。その日あったことを思い返しながら。

誰のためでもない日記だけど、読み返すとやっぱり楽しい。「あ、10年前にオーストラリアで勝ったココアは4ドルだったのかあ」とか。時がたてばたつほど、日記に味わいが出る。

今年は、秋に2週間半ほど日本に帰る予定だ。大金をはたいてチケットも買った。せっかくなので、可愛いノートを買って、娘に「旅日記を一緒につけよう」と誘ってみるつもり。

娘は、英語の文章をだいぶ書けるようになった。英語で日記を毎日書けば、それだけで帰国したあと、学校に提出する「宿題」(自主的なものです)が完成する。なかなか細部まで凝った絵も描いてくれるし、きっと大作になるだろう。

一言でも、二言でもいい。6歳になった娘の瞳にうつる日本の姿を、絵や言葉でみてみたい。残しておけば、年老いて一人読み返すときの宝物になるんだから。




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